九州大学山岳部 ブログ 「QUAC blog」

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2022年度 春合宿(北岳)

2023年03月30日 | 春合宿

こんにちは、3年の竹田です。

3月下旬に南アルプスの北岳に行ってきましたので、今回はその様子を紹介したいと思います。諸事情あって、といっても何か厄介ごとが起こったということではなく、期間は3月22日から24日の3日間。ブログを書く身としては楽ですが、かなり短い合宿になりました。参加者は、青木、竹田、アキノです。

 

【1日目】

夜叉神ゲート

 深夜4時、タクシーで甲府から夜叉神峠に行きました。所要時間は約1時間。まだ夜も明けいないからか、夜叉神峠は(この時はまだ)寒く、しかし雪はまったくありませんでした。装備の準備を終え、ゲートを通ろうとしましたが、時間が早いこともあってゲートはまだ閉じていて、一応歩行者用の通路が用意してありましたが、我々のような人一人分あるようなザックを背負っているような者が通れるようには設計していないらしく、狭くて通れませんでした。やむを得ず、ゲートの上からザックを越したり、ザックを引きずったりしながら通過しました。

夜叉神ゲートでの様子

ザックを引きずっている様子

 コンクリでしっかり舗装された林道を歩き、夜叉神トンネルに着きました。入口はシャッターで閉ざされていましたが、右手の扉から中には入れるようで問題ありません。夜叉神トンネルは1,148mもあり、道はまっすぐなのにも関わらず出口が見えませんでした。内部は所々に橙路の照明があるもののヘッドライトなしでは歩けないほどに暗く、加えて湧水が水たまりを作っているところもあったため、とても歩きやすいとは言えませんでした。しかし、その雰囲気は、なんだか洞窟探検をしているみたいで、とてもワクワクさせられました。トンネルを出ると、正面に雪化粧した間ノ岳が現れ、景色を楽しむとともに雪があるということに一安心しました。2つ目の長いトンネル、観音経トンネルも通過しようとしましたが、出口には青い何かが道を塞いでいる。どうやらブルーシートのようで、初っ端から通行止めかとヒヤッとしましたが大きな扉になっているようで普通に通れました。その後は特に面白いこともなく、延々と続く林道を歩き詰め、鷲ノ住山登山口に着きました。

夜叉神トンネルの中

 

観音経トンネルの出口

 鷲ノ住山は林道から突然北の方向に不自然につながっているような山でした。登っていると、身長の高さほどの岩場があり、重い荷物のため難儀しました。他にもロープや梯子を使って登るところがありました。頂上付近は、標識はありませんでしたが、赤色に錆びて倒れた鉄塔がありました。下りは長い急斜面で踏み跡と赤テープがあり道に迷うことはありませんでした。しかし道はぬかるんでいて、さらに落ち葉もまだたくさんあり歩きにくい印象です。終盤になるほどそれは顕著になり、結構滑りました。

 下までたどり着くと吊橋がありました。対岸に渡るためこれを使うのですが、川が透き通った碧色をしていて、加えて吊橋らしく揺れていて、夜叉神トンネルと同じくらい楽しかったです。鷲ノ住山の長い下りの慰めを終え、気分よく行動を再開しようとした矢先、道に迷いました。ルートでは吊橋のある所から少し登って県道に合流するため、しばらく登っていました。道はかなり悪く違和感を感じていましたが、自分自身登ればいつか県道に合流するだろと考えてもいたため、登り続けました。しかし状況はそう予想通りに行くもんでもなく、我々はそのまま県道があるトンネルの真上を通っていました。途中で引き返して、道が険しかったためザイルも使って、下まで降りてきました。その途中、道を示すロープが見えたため何とかルートに復帰しました。(と、ラフに記述しましたが道迷いは明らかに失態なので内心では反省しています。)県道に復帰するためにはもう一つ、といっても本来これだけだったのですが、難所があり、5mくらいの岩場を斜め上方向に登らねばなりません。先に言いましたが、その時は40kg近くある重い荷物を担いでいるので難儀しました。足が滑ったら一発だな、と思いました。幸い手元に握りやすい岩の出っ張りが続いたので、そちらに体重をかけて慎重に登りました。

野呂川吊橋

 

県道への復帰の様子

 県道に復帰後はしばらく道に沿って歩きました。トンネルもいくつか通過するのですが、あるトンネル内で後ろから侵入してきた車両とすれ違いました。トンネルは相変わらず暗かったので轢かれまいかと冷や冷やしました。まあそんなことはなく引き続き県道を歩き、歩き沢橋に着きました。この間、天気は晴れて気温も穏やか、どころではなく非常に暑く、冬用のインナーを脱いでも涼しくならないほどでした。雪山に登りに来たという我々にとって、こんな暑さは想定しておりませんでした。そのためその日泊る所に雪はあるのかという懸念が浮上し(というのも雪がないと飲み水を確保できないため)、やむを得ず沢の水を汲んで行くことにしました。うだるような暑さ、水の不安、これから登る落差800mの急登、増える荷物、そして第一に今後一週間天気が悪い、ということでこの時のパーティのモチベーションは今までに類を見ないほどに低くなりました。それでも、明日の午前中までは天気は崩れないかもしれないという望みもあり、明日を北岳アタックに見据えて行動を再開しました。

県道の様子

 池山吊尾根は北岳に続く尾根の1つで、東に向かって伸びています。その稜線に合流するため、あるき沢橋の登山口から800mほど標高を上げる義盛新道と呼ばれる道を登ります。道と行っても急な上り坂で、そこで私は早速バテました。荷物が重かったから、暑かったから、とあれこれ言い訳できますが、そのせいでパーティのペースが上がりませんでした。その時私は先頭を歩いていましたが、途中でアキノと場所を交換し、その後は何とかペースを戻すことができました。義盛新道は、最初は道は落ち葉で覆われ周りは木々に囲まれた道が続きましたが、中腹あたりで積雪がみられるようになり道にも氷が張りだすようになりました。氷が少ないうちは登山靴で何とか登れましたが、次第にその影響を無視することができなくなり、途中でアイゼンを履きました。稜線に乗り出してからは登山道も雪に覆われるようになりました。斜度は次第に緩やかになり、やがて平坦な道を歩き詰めると池山小屋に着きました。この日の行動はこれで終了です。池山小屋は開放してあり、さらに中も広くきれいだったので、テントは張らずに小屋で泊ることになりました。

池山小屋周辺の様子

【2日目】

 この日は先日に決めた通り北岳アタックを行いました。予め申し上げておきますと、このアタックは失敗に終わり、その原因の半分は天気ですがあと半分は私の体力不足です。自虐的な内容になりかねないので今回のブログではそれを無視することにします。ご了承ください。

 この日は深夜1時に起床し、2時に出発しました。理由は夜が明けるまでは危険個所がないこととできるだけ早めに撤退できるようにするためです。北岳までの道のりは、前半が樹林帯で後半は樹林限界を超えて吹きさらしの稜線が続きます。その樹林帯を夜が明け始める前に登り切って、稜線上では天候が少しでも怪しくなったら撤退しようという決まり事を作りました。

 樹林帯の中で、途中に剣峰、森林限界付近に砂払という地名があります。剣峰までは最初は緩やかでしたが途中に急に勾配が大きくなるところがありました。昨日に引き続き登山道は雪で覆われており、登りが急なところでは登ろうとしても雪が崩れ、加えて雪が柔らかいのか積雪量が多いのか足が膝のところまで埋まり思うように前に進みませんでした。幸い赤テープや踏み跡は残っていたので道に迷うことはありませんでした。道が平坦になるとしばらくして剣峰に着きました。道迷いしなかったといいましたが、ここで方向がわからなくなりほんの少しだけ停滞しました。暗くて踏み跡が目視できなかったためです。

 砂払までは真っ直ぐで長い急登です。すでに池山吊尾根の稜線上であったため樹林に囲まれているとはいえ風が吹き込んできました。途中で、ペースを上げるために竹田の荷物をアキノと青木に分配し、さらに先頭もアキノと交代しました。2時間弱ぐらいすると一気に木がなくなり、真っ白な稜線が広がっていました。

砂払での様子

 北岳に行くためには、ボーコン沢ノ頭まで登り八本歯ノ頭まで稜線上を歩き、八本歯ノコルまで降下して北岳本峰を登る必要があります。ボーコン沢ノ頭までのは、樹林帯の登りに比べれば短かったけれども、雪が閉まっておらず終始足場が底抜ける状態で、感じでは段差の高い階段を登っているようでした。ボーコン沢ノ頭に差し掛かると空も白み始め、気温も上昇するのでその弊害は次第に大きくなりました。ボーコン沢ノ頭を越えると、若干の上り下りはあるものの、しばらくはたおやかな稜線歩きが続きました。これまで結構ギリギリであった自分でしたが、この時ばかりはあたりの景色を楽しむ余裕ができました。ふと後ろを振り返ってみると、黒い雲が一直線に東の空を覆い隠していました。前日に天気図で前線が張り出すことは予想できていたので、前線を視覚で確認できたことに感嘆を覚えたとともに、天気の悪化が目の前に迫っていることの表れでもあったので焦りも生じました。

目前に控える北岳

 

後ろから迫る雲

 

右手に見える間ノ岳

 八本歯ノ頭からコルまでの下降は本合宿の最大の難所です。落差40mほどですが稜線の左右が切り立っており、滑落の危険もありました。当初は懸垂下降をする予定でしたが、自力でクライムダウンできそうだったのでそのまま降りました。緊張しましたが皆無事降り終えました。そこから北岳山頂までずっと登りでしたが、ここで後ろに控える黒い雲がだんだんこちらに近づいていたので、そこから40分経てば撤退しようということになりました。相変わらず足は沈み続け、さらにずっと急登だったので、とても登りづらかったです。主稜線に合流したところで約束の40分が経っていましたが、北岳がもうすぐということもあってそのまま登り続けました。私は以前の夏に別のルートで北岳に登ったことがあり、その標識も見覚えがあって、夏道の登山道を思い描きながらもう少しで着けると予感していました。が、その登山道は雪で覆われていて柵を少しのぞかせるのみで、加えて踏み跡もない状態でした。東の方向に稜線が見えたのでそこまで登ってみました。稜線に乗り北の方を見ると山頂らしき黒い岩塔が見えました。が、そこまで行くのには2,30分はかかりそうで、さらに空はすでに雲が覆いだし天気がすぐ崩れることは間違いなさそうだったので断腸の思いで撤退しました。

八本歯ノコルへの降下

 

写真上方真ん中に北岳山頂が見える

 帰りはどうやら雲の中を歩いているらしく空も真っ白で、山の天気は急変するとはよく聞きますが、直でそれを味わうのは初めてかもしれないと思いました。相変わらず、というより行きの時より増して雪に足が沈むようになり、疲労も相まって頻繁にこけました。風は依然として強く、さらに途中から雨も降り出しましたが、3月であるためか不思議と寒いとは感じませんでした。鬱々とした足取りでしたが、無事樹林帯までたどり着き、そのまま小屋へ帰ることができました。

 時間、体力的に池山小屋から北岳に行くことは困難だとわかり、砂払までキャンプを上げることも考えましたが、今後天候は不安定な状態にあることはわかりきっていたので翌日下山を決めました。

【3日目】

 5時に起床し6時に出発しました。天気図によると、昨晩から未明にかけて寒冷前線が通過するらしく、その日の天気が不安視されていましたが晴れのち曇りといった感じでなかなか恵まれました。歩き沢まで下るだけということもあってペースの遅れなどはありませんでした。個人的には氷の上はアイゼンの爪も刺さらず、滑り落ちるのではないかという恐怖がありました。この下りは特に難なく突破することができました。歩き沢から県道を歩いて、初日に県道に合流するために登った岩壁を今度は下る格好になるのですが、やはり足場が見えづらい分下りのほうが怖かったです。吊橋を渡り、今度は鷲ノ住山を、登ります。下山なのに山を登らなくてはいけないというのは南アルプスのアクセスの悪さを象徴しているように思えます。しかも400mも登りました。ここは、というかここも息を切らしなら歯を食いしばって登りました。この登り中、南の方角にある山の斜面で雪崩が2回くらい起きました。規模も小さく場所も遠かったのですが、ゴーン、ガーンと胸を揺さぶるような轟音が聞こえて、そこで雪崩の恐ろしさを体験しました。頂上に着いたら反対側にすぐ降りて林道に着きました。そこから夜叉神ゲートへは1時間30分ほどかかりました。途中、観音経トンネルのあたりで工事車両を複数確認しました。どうやら上水道の工事をしているらしく、初日に観音経トンネルの出口を塞いでいたブルーシートはトンネル内分の凍結を防ぐためのものだったそう。車両が通るためか、夜叉神トンネルのシャッターや夜叉神ゲートが今回は開いていました。ゲートまでたどり着き無事行動を終了しましたが。

 短い合宿でしたが、個人的には体力不足・技術不足が露見した、苦い思い出の詰まった合宿となりました。3年なので山岳部の活動はひとまずこれで終わりで、この反省の活かし場所に困るところですがひとまず心のうちに止めておくことにしました。後日談、といっても下山直後のことですが、夜叉神ゲートに着いた後、その場にいた高価そうなカメラを持った男性の方と登山道の様子などについて話をしました。その後、その方のご厚意で車で近くのバス停まで送っていただきました。ありがとうございました。その方は山岳救助関係のこともされているらしく、山登りをそのまま仕事に活かしている人の話はなかなか貴重なものでした。

 以上になります、ありがとうございました。

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