ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

11/09/29 鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」で得た確信

2011-12-04 23:59:57 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリー映画3部作のうち「ミツバチの羽音と地球の回転」を、9/29の浦和での上映会でついに観ることができた。これも書きたい書きたいと思いつつ、取りまぎれていたが、肥田舜太郎さんの記事に続いて書いておこう。
冒頭の写真は、上映会チケットをプログラムの上に置いて撮影したもの。
映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の公式サイトはこちら
goo映画の「ミツバチの羽音と地球の回転」から以下、作品の解説を引用。
日本のエネルギーの最前線、上関原発計画に向き合う祝島の島民と、スウェーデンで持続可能な社会を構築する取り組みを行う人々の両面から現代のエネルギー問題を描き出すドキュメンタリー。監督は「六ヶ所村ラプソディー」の鎌仲ひとみ。瀬戸内海に浮かぶ祝島の真正面に、原発建設計画が持ち上がってから28年。島民は一貫して建設に反対してきた。島では海藻や鯛をとり、無農薬のびわを栽培して千年も前から生活が続けられている。最も若い働き手、山戸孝さんは妻子を抱えて自立を模索しているが、その行方を阻むように着々と進められる原発計画。島民は一体となって阻止行動に出る。孝さんの眼差しの先にはスウェーデンの取り組みがある。足元にある資源で地域自立型のエネルギーを作り出すスウェーデンの人々が目指すのは、持続可能な社会。それを支えるのは電力の自由市場だ。原発重視かつ電力独占体制の日本のエネルギー政策を変えるためにはどうしたらいいのか。そして、祝島の未来はどうなるのか……。

「9.19さようなら原発大集会」に参加してきた時、上関原発反対の幟を持った人たちが私たち母娘の前にいた。その方たちが取り組んできた反対運動をあまりよく知らなかったので、この映画でよくわかったのも嬉しかった。
wikipediaの「上関原子力発電所」の項はこちら
「上関原発情報 まとめサイト」はこちら
山口県熊毛郡上関町の田ノ浦に中国電力の原子力発電所建設が予定され、その対岸にある離島=祝島で半農半漁で暮らしをたてている人々が反対運動を長年続けている。その反対運動は私のイメージとは全く違っていた。「三里塚闘争」などでは反権力闘争を貫く運動家が外から支援ということで大勢加わって地元の人とともに反対運動をしているイメージだ。しかしながら、こちらの原発反対運動は過疎で高齢化した半農半漁の爺ちゃん婆ちゃんが従来の暮らしを続けていけるように、それを邪魔する原発建設を承知しないという意思表示の行動とそれを支持するナチュラリストたちの取り組みだった。

それにこの映画で初めて実感したことは、原発は通常運転でも大量の冷却水=かなりの高い温度だからお湯になったものを出し続けるということ。許容量ということで出される放射性物質の問題だけでなく、排出された先の水温を上げてしまい、生態系を壊してしまうのだということを思い知らされた。愛媛県の伊方原発では高温になった湾の中はヘドロに満ちてしまったのだという。祝島では魚だけでなく岩場で天然のひじきをとったりもしているので、ひとたまりもあるまい。

地球の温暖化をストップするために原子力発電を推進するというが、温暖化の要因は石油系燃料由来の二酸化炭素ばかりではなく、原発の冷却水による海水の温度上昇も大きな要因になっているという話は聞いたことがあったが、湾がヘドロで満ちるという話は実にインパクトがあった。このような自然破壊を受忍するかどうかは、漁業補償ですむ問題ではないはずだ。

海の埋め立てをさせないための監視行動に漁船で繰り出した島民に、中国電力の職員の乗った船からハンドマイクで「一次産業だけでは未来がないでしょう。原発を作ったら雇用の場ができてお子さんたちが戻ってこれるようになります」などと語りかけている。それに対して「いま一次産業で食っている自分たちを馬鹿にするのか?」という反論は実に的を得ている。一次産業で暮らしがたちゆくように努力している人たちにとって大きなお世話様である。大体、原発の職場で働くことの危険性もあるわけで、そんな仕事に子どもをつかせたいと思う人ばかりではないだろう。ナチュラリストたちもシーカヤック隊をつくって監視行動に参加し、島民と連携していた。
中電の作業をさせないための取り組みは一進一退になり、とうとう中電側に作業協定違反の日の出前に埋め立ての目印設置作業を強行されてしまったところも映し出される。

長い反対運動のリーダーは山戸くんのお父さんで、息子に参加を強制したわけではない。外で働いていたが、結婚して子どもを育てる場所としてふるさとを選んでUターンしてきたのだ。島の祭りの支え手にもなっている姿は、暮らしというものは食べていく、子どもを育てるだけでなく、土地に伝わる文化を仲間とともに担うことまで幅広いものだということを痛感させられる。その場所を守りたいという思いがエネルギーになっているのだ。

やはりUターンしてきて反対運動に参加した方のお父さんは原発推進派だったという。推進の理由は推進派の町長の友達だったからで、原発を受け入れることで町の発展を描いたのだろうとのこと。方向性は違ってもふるさとで生きることへの思いは同じというようなことを語っていたのが印象的。
原発反対の人々は集まって食べて飲んでという場も大事にしていた。そこで婆ちゃんたちが「原発の話がきて賛成派と反対派の2つに分かれてしまったのが嫌だ」と対立を持ち込んだことでも原発を許せないというのがとても胸に響いた。町を二分するような対立が長年続くということはつらいことだろうなぁと思いを馳せる。

鎌仲監督は自然エネルギー先進国も取材する。スウェーデンでは電気をどの電力会社から買うか選べるようになっている。北欧エコマーク認証協会のスタッフの発言が衝撃的だった。以前、シェル石油に勤めていた時に、油田開発にからんで競争相手の石油メジャーと自社の間の獲得争いが現地の人々の代理戦争を引き起こした。自社の油田獲得のために血が流されるのをみて、嫌気がさしてやめたのだという。今ではもちろん自然エネルギーによる電気を買っている。
中東や発展途上国での戦争や内戦も実は石油の争奪のための代理戦争だという話はよく聞くが、それを体験した人の話を聞くのは初めてだった。

自然エネルギーによる発電も大規模なものではなく、地域の条件を生かして小規模な施設をネットワークすればよいというイメージももつことができた。

最近の選挙でもまた推進派が勝ち、反対運動の道は平坦ではない。しかしながら、反対運動の会長=山戸くんのお父さんの言葉に力を得られた。「反対運動ですぐに結果が出なくてもいい。長く続けているうちに、状況の方が変わるかもしれないから」というような趣旨だった。なるほど、そういう思いをしっかり持っているからへこたれずに長く運動を続けてこられたのだなぁと納得。
この考え方、私もいただきだ。世の中をいい方に変えていきたいと思っても、まっすぐにはいかない。このくらいの気持ちで、あきらめないで、続けることが大事なのだと確信をもった。


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6 コメント

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反対派 (paru)
2011-12-05 08:10:30
反対派のデモなども、ドサクサに紛れて別のことを訴えていたりおかしなものもありますしね。
地元の普通の人のは本音で支持できます。
祝島の話はYouTubeで見ました。
おばあちゃんの動画はご覧になったでしょうか?

石油が枯渇するというのも嘘らしいですから情報操作なんだろうと思っています。
太陽光や風力も利権や健康被害ありますし、日本は水力か地熱がいいかな~。
電気のためにあれこれ設備を作りすぎるのもエコではないですから、たまに足りなくて停電してもいいんじゃないでしょうか。
そのくらいの意識で一人一人が生活を変えることが大事なんじゃないかと思います。
戦前までは究極のエコシステムの国だったわけですから、節約の伝統がある国民でしょうから~。
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映画情報参考になります (茲愉有人)
2011-12-05 22:25:05
その映画のことは知りませんでした。
いい情報です。
さて、

小出裕章著『原発のウソ』には、こんな一節があります。
「地球を温め続ける原発」(p118-121)です。

要点は、
 標準的な原子炉の中は全部で300万kWの熱を生む
 電気になるのは1/3 100万kW
 残り2/3、200万kWの熱は海に捨てている。
 1秒間に70トンの海水を引き込み、その温度を7℃上げ、海に放流
 7℃も高い水が放流されると、いままでの環境に生きていた生物は生きていけなくなる。

 54基の原発が稼働していれば、7℃高い水の放流は約1000億トン。
 日本の国土全体で1年間の降雨量は約6500億トン
 川の1年間の流水量は約4000億トン   だとか。

 原発の稼働は、海の生態系を破壊しつづけているということですね。
 
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皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2011-12-07 00:27:16
★paruさま
>祝島のおばあちゃんたちの映像......探してみたいですが、なかなかPCで動画をチェックする余裕がないのです。
>節約の伝統......そこを戦後60数年で大きく変えて大量消費の国にする政策が今のところ成功してしまっているように思います。
自然エネルギーによる発電もすぐに引き合いに出されるような大規模施設ではなく、地域ごとの適正規模にする方がよいのです。送電時のロスも少なくてすみますしね。水の流れのあるところ至る所にあった水車小屋(=私の父親がそこで製材していました)をもう少し大きくしたような施設を集落ごとにつくるとか、いろいろ工夫できるようですよ。大体、ごみを燃やす焼却炉にも発電施設をセットにすればいいのにと思ってしまいます。自然エネルギー先進国にいろいろ学んで、それをさらに工夫するのは日本人は得意なはずですよね。
★茲愉有人さま
このドキュメンタリー映画情報がお役にたったようでよかったです。
>「地球を温め続ける原発」......原発推進派は地球温暖化防止に役立つというのを売りにしていますから、こういう都合の悪い情報は公けにしませんね。
生物多様性条約の締結国会議の議長国も日本だったのに生態系を破壊する原発のことは知らん顔するのだからあきれます。
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温暖化 (paru)
2011-12-07 16:28:51
祝島の動画はこれです。
http://www.youtube.com/watch?v=2qQu7E_bBFk

放射性廃棄物のトラック目撃も記事にしましたので、よかったら見てください。

CO2温暖化説は中部大学の武田教授などは嘘だとおっしゃっておられますが、その通りかもしれないなぁと思っています。
CO2が温暖化になるというのも1つの説にすぎないというニュースを読んだことがあります。
原発推進のためのトリックなのかも・・・

日本でも焼却炉の熱で温水プールを運営しているところもあります。
自然エネルギーでは灰まで資源にしていた国は日本だけ、鯨も欧米は油だけで捨てていましたけど、日本はひげまで文楽に使われてきたのですからリサイクルしなくても全て使う術をもってきたわけですよねぇ・・・
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祝島関連 (茲愉有人)
2011-12-08 08:00:33
paruさんが既に動画をあげておられますね。

こんなのもYouTubeにありますよ。
ちょっと検索してみました。ご参考まで。


「原発はいりません」 祝島の女性たちの28年間の想い
http://www.youtube.com/watch?v=55LJ1lWxC-Y

祝島「きれいな海を守ろう」上関原発反対デモ1100回 2011.6.20
http://www.youtube.com/watch?v=UkDnl3TY8RQ

上関原発予定地・祝島のおばちゃんたちの証言。- 2011.02.23
http://www.youtube.com/watch?v=Eubj34fi-Kg

7.31脱原発デモ『未来に輝け上関・祝島 原発なくても大丈夫!!パレード』
http://www.youtube.com/watch?v=5t8Q81brR8I

反原発!~ふるさと祝島~
http://www.youtube.com/watch?v=pxCnkfjre84
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続・皆様、コメント有難うm(_ _)m ( ぴかちゅう)
2011-12-11 01:29:23
★paruさま
祝島の動画情報を有難うございますm(_ _)m
>CO2が温暖化になる......要因の一つにすぎないと理解しています。地球温暖化を阻止しよう=原子力を活用しようキャンペーンの先頭に立ったアル・ゴアには、原子力メジャーが相当な献金をして活動を支えていたとのことです。2007年のノーベル平和賞が授賞されましたが、やっぱりノーベル賞も過大評価はすべきではないものだと痛感したものです。
★茲愉有人さま
たくさんの動画情報を有難うございましたm(_ _)m
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