お盆も特に休みのない職場で、けっこう気合を入れた資料作りをしていたら本格的な眼精疲労となり、目が辛くてブログアップがなかなかできず(T-T)少しずつ書いていこうと思う。
まずは、八月花形歌舞伎第二部のG2作・演出の新作歌舞伎から。橋之助とG2がタッグを組んでの新橋演舞場芝居は、2006年の「魔界転生」と、2007年の「憑神(つきがみ)」を観ている。
さて、初の歌舞伎作品はどんなものか?
【新作歌舞伎 東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)】
あらすじと主な配役は公式サイトより引用、加筆。
御家人、藤川新左衛門(橋之助)は、堅物で廓に足を踏み入れたこともなかったが、初対面の花魁小夜(福助)に心奪われ、ひょんなことから身請けすることになる。小夜には、新左衛門の親友で、関口多膳(扇雀)という間夫がいたが、新左衛門に惹かれた小夜は、多膳に愛想尽かしをする。多膳は、吉原の大火事から逃げてきた小夜を、怒りにまかせて殺し、川に沈めてしまうが、新左衛門は小夜が死んだことを信じようとしない。そんな新左衛門のもとに、人形師左宝月(獅童)が作った小夜そっくりの人形が届き、新左衛門と小夜の人形との奇妙な生活が始まり...。
他の主な配役は以下の通り。
新左衛門母・お弓=萬次郎
弟・秋之丞(高橋家に養子)=勘太郎
伊勢屋徳兵衛=亀蔵 お若=七之助
潮田軍蔵=彌十郎 人形師弟子・宇内=巳之助
日光東照宮の眠り猫でお馴染みの名工・左甚五郎の作った人形が生きているように動き出すという話は、歌舞伎の「京人形」や落語などでも下敷きにされている。それをさらに踏まえたのが今回の物語。
左甚五郎の子孫である宝月に潮田軍蔵が惚れ込んだ花魁小夜の人形製作を依頼したことから話が始まる。獅童の総髪の人形師左宝月が実に胡散臭そうでよい。その宝月の作品の等身大の人形ということで、お馴染みの女形のお役の扮装でお弟子さんたちが二段になってせり上がってくる舞台装置は見応えあり。舞台装置に凝って、回り舞台でスピーディな場面転換を図るところはG2新左衛門は小夜らしいと合点がいった。多くの脇役さんたちにも見せ場をつくるところも今風の新作歌舞伎らしい。
扇雀の多膳は、昔から馴染みの小夜の間夫であることに胡坐をかき、妻子があるのに小夜に執着を持ち続ける嫌らしさが面白い。素朴で誠実そうな新左衛門に小夜が心を移すのも無理はないが、そのことで小夜は殺されるはめになる。
吉原が火事と聞き、新左衛門は小夜を助けようと探しにいくが見つからない。そして思いつめて狂気に陥る。宝月が作った小夜の人形を小夜と思い込んで一緒に暮らし始める。
母・お弓は息子の狂気に家族や家来がつきあうことで、出仕してくれるようになったため、お家のためにみなで人形を嫁として扱う暮らしを強いる。
小夜人形は、ホリ・ヒロシの人形と思われるもので、橋之助の新左衛門と添い寝をする場面などはけっこうホラー喜劇っぽい。
新左衛門に想いを寄せる伊勢屋の娘お若は、父のゆるしも得て藤川家に住み込みで奉公を始めるが、新左衛門は一向に正気にならない。その姿が健気で観ているうちになんとか幸せになって欲しいという思い入れが湧いてくる。
小夜人形は不気味な動きをするようにもなり、途中で福助が人形っぽく入れ替わったりしてホラー喜劇っぽさを増幅させる。
多膳はお役で江戸を離れていたが、戻ってきて自分が殺したはずの小夜と新左衛門が睦まじく暮らしていると聞き、真相を突き止めにやってくる。二人のやりとりの中で多膳は小夜殺しを自白し、目の前にいるのは人形だと指摘されて激怒した新左衛門に多膳は殺される。
ホラー的悲喜劇は終わり、正気になった新左衛門とお若が結ばれると思いきや、新左衛門は家督を放り出して出家するという。
その旅立ちを花道スッポンで待っているのは・・・・・・福助の小夜!!なんと、やっぱり小夜人形に憑りついていたのは小夜の亡霊で多膳に復讐し、惚れた新左衛門と添い遂げる一念を貫いたのだった。
己が技量をふるった人形に魂が憑りついたことを誇るように、獅童の左宝月が舞台中央で二人の道行を満足そうに見送る幕切れ!
これって、結局B級ホラーになっちゃったんじゃん!!やっぱり夏芝居は怪談話が相場なのかと思いつつ、あまりの見応えのなさに少々がっかりさせられた。
実は「魔界転生」も「憑神」も3階B席で一回観れば十分という感じだったが、今回は休日でチケット確保が難しく3階A席で鑑賞。正面1列目だったので、お弟子さんたちの人形姿は堪能した。まぁ、新作歌舞伎応援で奮発したと思えばちょうどよさそう。
現代作家による新作歌舞伎ということでは、野田秀樹がやはり抜きん出ていることを今回も痛感させられた。
【夏 魂まつり(なつ たままつり)】
以下、公式サイトより引用、加筆。
京の加茂川べり。如意ヶ嶽の山腹で焚かれる大文字の送り火を見るために、若旦那が芸者たちを連れ立ってやってきます。まるで幻のように夜空を焦がす炎を眺めながら、故人の精霊たちを思い、過ぎゆく夏を惜しむのでした。
明治、大正時代に活躍した歌人九條武子の遺作で、今回上演されるのは、舞踊詩『四季』の「夏」の部分。京都の晩夏を彩る大文字の送り火を描いた季節感溢れる舞踊を、芝翫が子息や孫とともに情緒豊かに舞います。
若旦那栄太郎=芝翫
芸者お梅=福助 芸者お駒=橋之助
太鼓持国吉=国生 舞妓よし鶴=宜生
やはり日本俳優協会会長として東日本大震災後初めての旧盆ということで、亡くなった方の鎮魂の演目をきちんと入れて、ご自身も舞台をつとめられたのだろう。実際の「五山の送り火」は被災地の伐採木材の使用が放射能汚染で見送られる騒動があったが、舞台の上では次々に「大」「妙法」「舟形」と赤く文字が浮き上がった。
たった12分の舞踊だったが、橋之助の芸者姿を楽しめる(これで2回目)。末の息子の宜生くんの舞妓姿も可愛らしく、B級ホラーの口直しもできてよかった(笑)
冒頭の写真は、公式サイトより今公演のチラシ画像。
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