ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/09/12 歌舞伎座夜の部③「松竹梅湯島掛額」は「鈴ヶ森」につながる!

2009-10-06 23:06:38 | 観劇

吉右衛門、今月二つめの長兵衛は幡随院長兵衛と正反対の三枚目の役どころ紅屋長兵衛、ベンチョーさんだ。
吉右衛門紅長は2006年演舞場での五月大歌舞伎での舞台を観ている。歌舞伎座では初めてだというが、どうだろうか。
【松竹梅湯島掛額】吉祥院お土砂、櫓のお七
今回の主な配役は以下の通り。
紅屋長兵衛=吉右衛門 八百屋お七=福助
母おたけ=東蔵 下女お杉=歌江
月和上人=由次郎 丁稚長太=玉太郎
小姓吉三郎=錦之助 若党十内=歌昇
釜屋武兵衛=歌六 長沼六郎=桂三
<吉祥院お土砂の場>
鶴屋南北のライバルだった狂言作家・福森久助による作品で、彼は書替え狂言が得意だったらしい。この作品も八百屋お七ものの書替え狂言で喜劇仕立てにしたもののようだ。
Wikipediaの「八百屋お七」の項はこちら
木曽から源範頼が攻めてくるというので、吉祥院に大勢が避難してくるという設定がまずおかしい。その範頼に美女で名高いは八百屋久兵衛の娘お七を妾に差し出そうと釜屋武兵衛と長沼六郎もやってくる。その八百屋に出入りをしていた紅屋のベンチョーさんが知恵を絞り、お七を欄間の天女に紛らわせるなど、寺の月和上人をはじめとした皆の協力でお七を匿い、さらに棺桶に入れて逃がそうという騒動をドタバタ喜劇風に見せる。

お七は今でいうところの“天然”な気質の美少女。皆のアイドル的存在でそのファンの筆頭がベンチョーさんという感じか。吉祥院の小姓吉三郎はお家再興の使命のためにお七とは添い遂げられるはずもないのに、お七のペースに巻き込まれるとついついそちらに流されて・・・・・・。その若様に釘を刺す若党十内の言葉に落ち込んだお七もベンチョーさんが「あれは嘘」とまるめこめば嬉しげにしっかり騙されるという“天然”モードの持続。福助のお七は真面目にやっているのが実に天然キャラに見えていい。

吉右衛門ベンチョーは当世のお笑いを前回とは変えてまたいろいろと工夫している。「ポニョ、ポニョ、ポニョ・・・・・・」はちょっとそこに入れるのは無理があるでしょうという感じだったが、絶妙な間合いの「マジすか!」には笑えた。真面目なのか気難しいんじゃないのか・・・・・・と思える吉右衛門の人柄からすると三枚目を頑張ってやってくれているんだと思う。ニンではないと思うがこういうチャレンジもいいんじゃないかなぁ(笑)

歌舞伎座で喜劇というと菊五郎劇団とか、勘三郎の座組とかで、吉右衛門の座組ではちょっとなかなか・・・・・・という固定イメージがある。2006年にもそういう感じだったが、今回は吉右衛門以外も同じ台詞を鸚鵡で渡していくおふざけの場面などにも慣れてきているのかなぁと思えた今回の〝お土砂〟だった。
亡者の白い装束を着て、真言密教の加持祈祷の力のこもるお土砂で登場人物みなをぐにゃぐにゃにするベンチョーさん。花道からサインを求めるお客さん役、それを止める劇場スタッフ役も含めてぐにゃぐにゃにして、自ら愛嬌たっぷりに定式幕を引いていく吉右衛門の笑顔。さきほど幡随院長兵衛や勧進帳の富樫で唸らせた時とのギャップの大きさに喜んでしまう。やっぱり吉右衛門贔屓のせいだろうか(^^ゞ

<四ツ木戸火の見櫓の場(櫓のお七)>
喜劇ムードから一転。愛する吉三郎の切腹の危機に、お七が下女お杉の最大限の協力で釜屋武兵衛から宝刀「天国」を取り戻し、夜になって閉まってしまった辻々の木戸を開けさせて届けようとして死罪も覚悟の上で火の見櫓に駆け上り、合図の太鼓を叩くまでを途中から人形ぶりで見せ、迫力の幕切れ。この場を加えたのは河竹黙阿弥とのこと。先人の作品にどんどん手を加えていくのが歌舞伎というものらしい。

「吉祥院お土砂の場」で錦之助の小姓吉三郎の二枚目ぶりが際立っていたので、お七が思いつめることにも説得力あり。歌江の下女お杉も小さい時からお嬢様育成のために身をつくしてきたという情があふれている。福助のお七も熱演。

史実のお七は吉三郎に会いたい一心で放火をしてしまって火あぶりで刑死するのだが、その刑場は鈴が森。夜の部の「浮世柄比翼稲妻」の「鈴ヶ森」につながる。今回ももけっこう凝っての演目選びだったのかもしれない。
(さらに追記)よく考えると長兵衛という名前でも「鈴ヶ森」につながる!恐るべしなのかも!!

ようやく九月歌舞伎を完結して安堵。
写真は「歌舞伎稲荷」の幟を塀の外から携帯で撮影したもの。
9/23昼の部①「竜馬がゆく-最後の一日-」
9/23昼の部②「名残惜木挽の賑 お祭り」
9/23昼の部③「時今也桔梗旗揚」は南北劇だと実感!
9/23昼の部④幸四郎の「河内山」
9/13夜の部①「浮世柄比翼稲妻」
9/13夜の部②高麗屋×播磨屋の「勧進帳」


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4 コメント

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紅長さん、みたかったですねー(^^) (かつらぎ)
2009-10-07 10:14:16
随分吉右衛門さん、はじけていたんですね(^^)正直「彼に、『お土砂』は無理なんじゃないかな?とおもっていたので、ぴかちゅうさんのブログで、そのコミカルぶりがわかって安心しました。劇場の客席から上がってくるお客さん役では、なんといっても團蔵さんがおかしかったですね。一瞬本当のお客さんだとおもって、ビックリするほど「素」の團蔵さんでした。
とても縁起のいい演目なので、秀山祭をしめくくるのに
とてもよかったのではないでしょうか(^^)
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★かつらぎ様 (ぴかちゅう)
2009-10-07 23:43:18
>劇場の客席から上がってくるお客さん役では、なんといっても團蔵さんがおかしかった......2003年11月歌舞伎座の菊五郎ベンチョーの公演の時ですね!今回は劇場スタッフ役の女優さんともども新派の俳優さんなんじゃないかと推測していました。團蔵さんだったら豪華キャストだと感心。菊五郎劇団の喜劇だったらまたスピード感もすごかったんじゃないかと推測いたします。
吉右衛門ベンチョーさんも頑張ってくれていて、十分及第点を差し上げたいと思ってます。
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團蔵さん(^^) (かつらぎ)
2009-10-08 10:56:45
コメントありがとうございます。團蔵さんを拝見したのは、いつだったかの南座です。当然紅長さんは菊五郎さんでした(^^)こちらも抱腹絶倒の楽しさでしたね。

きょうは台風なので、お帰り気をつけて!
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★かつらぎ様 (ぴかちゅう)
2009-10-09 01:02:32
台風で体調がくずれたのもあって出勤せずにとにかく休んでいました(^^ゞ
南座での公演は、きっと歌舞伎座での公演と同じ年の3月ですね。こういう時に歌舞伎座の筋書の上演記録のページが役にたちます。配役一覧を見てその時の舞台を思い出したり未見の舞台は想像したりできるのも楽しいです。
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