ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/10/15 国立劇場「天保遊侠録」で自在な吉右衛門を堪能

2010-10-21 23:59:50 | 観劇

なぜか最近、真山青果の歌舞伎上演が続いており、今月の国立劇場公演も「天保遊俠録」と「将軍江戸を去る」の2本立て。新橋演舞場では「頼朝の死」もやっている。
さらに国立劇場のこの2本は、ちょうど大河ドラマで「龍馬伝」をやっている時で幕末もののドラマということでタイムリーな企画ではある。
「天保遊俠録」は2009年8月に橋之助の勝小吉で観ている。
【天保遊俠録(てんぽうゆうきょうろく)】一幕二場
作:真山青果 演出:真山美保、織田紘二
第一場 向島料理茶屋
第二場 同 囲い外
あらすじは前回の記事を参照。今回の配役は以下の通り。
勝小吉=吉右衛門 松坂庄之助=染五郎
勝麟太郎=梅丸 阿茶の局=東蔵
小吉の友人井上=錦吾、同飯田=高麗蔵
八重次=芝雀、大久保上野介=大谷桂三、ほか

この間、江戸社会の勉強ということで、玲小姐さんのおすすめ本2冊を読んでいる。
『江戸の役人事情-「よしの冊子」の世界』水谷三公著(ちくま新書)
『鬼平と出世 旗本たちの昇進競争』山本博文著(講談社現代新書)
そうなると、無役の御家人勝小吉がなんとかお役につこうと小普請組の組頭や同役になる人たちを饗応して賄賂を贈るというエピソードが実にリアルなものだったことがわかる。

若い頃から放蕩三昧だった小吉が卑屈に振る舞うことに我慢に我慢を重ねていく無理が爆発するのも無理はない。養子に入った勝家への義理を果たすためもあるが、愛する息子の麟太郎のために頑張っているのに、甥の庄之助が悪口雑言に怒って暴れ出したことでタガがはずれてしまうのだ。
前回は橋之助と勘太郎、今回も吉右衛門と染五郎という叔父甥のコンビ。染五郎は漫画のように弓なりの太眉毛をつけて三枚目に徹しているその覚悟がいい。しかしながら、こんな男で花魁を身請けしようというまで通いつめることができるのだろうかという突っ込みを入れたくなった(笑)

芝雀の八重次はこういうお役が初めてということだが、駆け落ち相手だった小吉に捨てられて芸者にまで身を落とした女の恨みを拗ねてぶつけるところもいじらしい。小吉から、捨てたのではなく座敷牢に入れられてしまっていたのだと説明され、今回の饗応への協力を拝み倒されて、しぶしぶ受け入れてしまうところに、小吉への愛情が深いところに息づいているという女の可愛らしさが滲み出る。吉右衛門とのコンビの芝居は相性も実にいいと思う。

小吉は住んでいるところからか、「入江町」とか呼ばれているが、それからして「入江町の鐡」こと鬼平を連想し、吉右衛門につながってしまう。若い頃の放蕩三昧というのがぴったり重なってしまうのも、観ていて心地いい。やっぱり若い頃から女にもてていただろうなぁ、座敷牢で女房を引っ張り込んで子どもをつくったのは俺くらいとかいう台詞もちっともおかしく感じさせない色気があるのが小気味いい。

梅玉の部屋子の梅丸の麟太郎が実に理知的で品がよく、将軍後継者の若君に気に入られて召し出されるのも無理がないと思える。鳶が鷹を産んだような息子ぶりが適役。東蔵の阿茶の局が貫録たっぷりで、生家の跡取りとしての養育を小吉に任せられないとたしなめるやりとりも見応え十分。小吉が抵抗しても本人が納得して城中に上がるということでの親子の別れとなる。

吉右衛門の小吉のくだけた遊俠人ぶり、それが我慢して卑屈な振る舞ってみせた上でべらんめえ口調で啖呵をきり、胸をすく思いをさせてくれたかと思うと、子を取り上げられて身をよじって切ながる、その芝居の自在さに酔わせてもらった。
そのせつない小吉の吉右衛門に寄り添う八重次の芝雀というのが、また美味しい幕切れだった。

冒頭の写真は、公式サイトより今回公演のチラシ画像から吉右衛門の小吉を携帯でアップで撮影したもの。いい男ぶりだなぁ。
明日から、名古屋御園座顔見世興行への遠征を兼ねて三泊四日、妹1の家に遊びにいってきます。「将軍江戸を去る」までアップするつもりだったが時間切れ。また頑張ります(^_^)/


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