ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/02/23 国立劇場文楽第二部②「壺坂観音霊験記」

2008-02-29 20:56:37 | 観劇

「壺坂観音霊験記」は、一昨年の正月にNHKの「新春桧舞台」で住大夫の素浄瑠璃を聞いて、これは是非にも文楽デビューしなくてはと決意させてくれた記念すべき演目だ。いよいよ文楽の舞台で初見となった!
壷坂寺のサイトにある「壺坂観音霊験記」の記事をご紹介
ふと気がつくと第二部は「二人禿」が昭和の初演、「鶊山姫捨松」が江戸期の初演、「壺坂観音霊験記」が明治期の初演と並んでいるのも面白い。

【壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)】
土佐町松原の段~沢市内の段~山の段
人形役割と浄瑠璃とあらすじは以下の通り。
お里=吉田簑助 沢市=桐竹勘十郎
茶店の嬶=桐竹紋吉 観世音=吉田玉若
<土佐町松原の段>豊竹睦大夫 鶴澤清馗
壺坂寺の縁日で大勢の参詣人が茶店で休んでいる。人々は通りかかったお里を器量よしだ、目の見えない夫の沢市によくつくしていると褒めそやす。お里は沢市の傍にいられるだけで嬉しく、なんとか目を開けてあげたいと言うので、人々は眼病にご利益のある壺坂の観音様への参詣をすすめる。お里は賃仕事に忙しいので春になったら行くと言って去っていく。
<沢市内の段>竹本住大夫 野澤錦糸
お里が針仕事にいそしんでいると、隣の部屋から沢市が地唄を唄い出す。機嫌がいいねと話しかけると気が塞いでいると答える沢市。ついに沢市は気になっていたことを問い詰める。夫婦になって3年間、毎日明け方に家を抜け出すお里に他の男ができたのだろうと疑っていたのだ。
幼くして両親を亡くし、伯父が親代わりに育ててくれ、3つ年上の従兄妹の沢市と夫婦になっていたお里。疑われていたことが悔しいと本当のことを打ち明ける。沢市の目が見えるようにと毎日そっと壺坂の観音様へお参りに行っていたという。お里の思いを知った沢市は己の情けなさを詫びるが、一方でそれほど信心しても目が治らぬことに悲観にくれる。ついにお里は沢市をともなって観音様にお参りに向かう。
<山の段>竹本千歳大夫 鶴澤清介 ツレ 鶴澤清丈
お里に引かれた沢市は御詠歌を歌いながら壺坂寺までの山道を登ってくる。本堂にたどりついても目は開かないと沢市は一層気落ちする。短気を戒め励ますお里に三日間の参籠の決意を話した沢市はお里を家に帰す。
沢市はここで本音を吐露。お里の気持ちは嬉しいが、目の見えない自分が死んだ方がお里は幸せになれるはずと「南無阿弥陀仏」を唱えて谷間に身を投げてしまう。胸騒ぎがしたお里が戻ると夫はいない。残された杖のある所から谷底をのぞくと月明かりに夫の亡骸が見えた。お里はここへ連れてきたことを悔やみ、沢市の元へ行こうと自分もまた身を投げる。
夜明けの陽光のさす中に観世音が姿を現し、お里の信心にこたえて寿命を延ばしてやろうと言葉をかける。二人は目を覚まし、さらに沢市の目が開いているで観音様のご利益に気づく。感謝の気持ちで二人が「万歳」を謡い踊る中で幕。

TVで観た時は通しではなかったので、今回でしっかりとお話を把握。浄瑠璃と蓑助・勘十郎コンビの情愛あふれる様子があいまって胸を打たれる。これは人気狂言になるのも無理がない。

<沢市内の段>は、夫婦の心がすれ違っているのが悲しく、「3つ違いの兄さんと~」お里のクドキに持っていかれる。前の段で美人なのにどうしてあんな男の妻になっているのだろうという人々の疑問、そして沢市本人のコンプレックスが解消される。お里は兄妹のように育った沢市の優しい人柄を本当に愛しているのだなぁとしみじみする。蓑助のお里の針仕事の様子やクドキに入ってからの身のこなしなど、見どころいっぱい。住大夫の浄瑠璃の聞きどころもいっぱい。

<山の段>は伊達大夫の休演で「中将姫雪責」の前を語っていた千歳大夫が代わりにつとめていたが、元気一杯、迫力いっぱいの語り。「沢いっつぁ~ん、沢いっつぁ~ん、沢いっつぁ~んいのう」と呼ぶ声の哀切さ。崖っぷちまで登って人形が本当に身投げをする迫力の場面が2回。下で介錯が受け止め、上では人形遣いが姿を消す。これも面白い!
この段は変化が大きいので、千歳大夫のように大きな声量の汗だくの語りがピタっとハマるような気がする。そして、第三部の狐忠信を続けて遣う勘十郎。こんなに雰囲気が違う役も続けて観ることができるので、嬉しい限りだ。

写真は筋書の表紙の「壺坂観音霊験記」のお里を携帯で撮影。
2/11第一部「冥途の飛脚」はこちら
2/23第二部①「二人禿」「中将姫雪責」はこちら
2/23第三部「義経千本桜」はこちら
「壺坂観音霊験記」の床本のサイトもご紹介


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
三つちがいの兄さんと (かしまし娘)
2008-03-03 16:00:24
ぴかちゅう様、まいど!
最初は「またこの話か~」って引き気味だったけど、
終わってみたら、嗚呼、ほっこり。
…それ、去年の正月公演で観た時も言うてたで。
いつまでも成長しないヤツ、私。
いや待て、姫はあの後どうなったんだ!っていう第2部でした(笑)

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★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2008-03-05 00:11:47
「壺坂観音霊験記」
蓑助×勘十郎の師弟コンビ、しっとりと夫婦の情愛たっぷりでした。それにしても第三部の狐忠信もこの沢市も、多彩なお役の遣いっぷりに勘十郎のご贔屓度アップ!芸術選奨文部科学大臣賞を受賞されたようですが、納得の活躍ぶりですね。
「中将姫雪責」
ひばり山に逃れた後、父の元に戻り、その後出家して当麻寺で蓮の糸で曼荼羅を織り上げたというような伝説のようです。
嶋大夫、年齢的に今回が最後かもということが何かのインタビューであったのを観た後に読みました。文雀さんの姫と組むコンビ、もっとしっかり聞けばよかったと後の祭り。でも印象は深く残ってます。
29日の夜のTVオンエアも観たし、文楽にどっぷりハマった2月となりました。
(注)かしまし娘さんの記事は名前をクリックすると読んでいただけますのでご紹介(^O^)/
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