ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/08/08 「北京五輪開会式」伝統とモダンの融合

2008-08-08 23:59:15 | テレビ

中国でおめでたい数字とされる8が並ぶ日時2008年8月8日の午後8時8分、「北京五輪」が開幕!最近スポーツ観戦への興味が失せてしまっているが、開会式のショーはいつも楽しみにしているのでTVにしっかりスイッチオン!

最後に中国に行ったのは2001年6月。仕事で上海→杭州に出張したのだが、丁度その滞在時に北京でのオリンピック開催が決まった。その時の雰囲気がわかる上海の街路の写真があるはずと、ポケットアルバムを何冊か漁ったら出てきた。その写真を携帯で接写してアップ。

アジアで3度目の夏季五輪ということで、1964年の東京→88年のソウル→2008年の北京とほぼ20年間隔だ。北京の大気汚染問題とか食品の安全性問題とか出場する選手たちの健康によくないという悪い評判がしきりと取り沙汰されていた。確かにそういう国ではある。
1983年に私が新婚旅行で行った時、車窓からいろいろ見えた政治スローガンのデッカイ看板。その中に食品衛生法をつくろうという内容の標語とイラストが描かれていたものだ。その頃の印象は1960年代の日本のイメージ。そこからあれよあれよと発展してきた。上海は3回行ったが、その度に大きく変容して驚かされた。

社会主義の計画経済から資本主義の手法を一気に取り入れて、経済も目をみはる発展を遂げた。しかしアンバランスも激しい。環境破壊も貧富の格差拡大もあまりにも著しい。きめの細かい政策をとるのはなかなか難しそうだ。国民性ということもある。お上に従順に従う日本人とは全く違い、家族や同族の結束で全て乗り切っていく。悪く言えば公共意識が弱い。そういう国民性は歴史の中でそのようにならざるを得なかったのだろうと理解している。日本人の国民性も歴史の中でつくられたのと同じだ。

選手の皆さんにはあまりいい環境での競技参加とはならないと思われるが、なるべく自衛しながらベストを尽くして欲しい。

さて、開会式のエンターテインメントには度肝を抜かれた。1000人もの男性が整然と古代の打楽器「缶」を打ち鳴らして孔子の言葉を唱和。総監督は映画監督のチャン・イーモアとのこと。大きな画面で紙漉きや筆づくりの様子を見せ、中国での紙の発明を表す。その前に使われていた竹簡を持ち、3000人いたという孔子の弟子のイメージの扮装で竹簡を楽器のようにも打ち鳴らす。

大きな巻紙が会場に広げられるとその真ん中の大きな白紙に何人もの男女が踊りながら身体につけた筆で水墨画を描き出す。その上から天女が舞い降りる。幕が大勢に持ち上げられて動くその上で女性が優美に踊る。シルクロードで世界に広がった中国の絹布の衣裳が美しい。女性の美しい衣裳や髪型は壁画に描かれた古代の美女たちのもの。映画でも一緒に組んだデザイナーの石岡暎子も参加しているそうだ。

その幕が吊り上げられると明の時代に発明された活版印刷の活版の文字を模したものが上下し、波のようにうねったり大きな文字を作り出す。いろいろな字体で浮き上がる文字は「和」。平和の和だ。コンピュータか何かで動かしているのかいや人か?最後には被っていた直方体を持ち上げて男性が姿を現わす。

大きなオールを持った男性がそれを立てて並べるとそれには船団の絵になる。海のシルクロードだ。その時代の海の英雄の鄭和のイメージの男性も登場。西洋の国々よりも先に大航海時代を迎えていたが、それを支えたのは羅針盤の発明。
京劇を彷彿する場面は清代のイメージか。

この間観た芝居でも活用されていた電光掲示板に使われるLEDを身につけた1000人が何重もの円をつくって四角い幕を囲む。円は天、角は地を表すのだそうだ。天地は一体のもの。
その電気の光が変化すると鳥の姿が現れる。メーンスタジアムは「鳥の巣」という愛称がつけられているが、そこに舞い降りたのは平和の象徴の鳩。ここでも平和のイメージが!オリンピックは平和の祭典だものねぇ。(日本では古来、鳩は戦の神の八幡さまのお使いだったが、戦後は平和の象徴になった?!)

上から今度は宇宙飛行士が舞い降りて巻紙の上には現在の中国の映像。中国を代表するピアニストと5歳の女の子がピアノの連弾。幕の上にも子どもたちが登場して水墨画に水色と緑色を塗る。破壊された環境を未来を担う子どもたちが回復させていく。ここに希望があるはずというメッセージか。

下から現れてきた大きな球体。ちょっといびつであったがそれは何人もの人が逆さに吊り下がって舞うためのレールが何段もとりつけられているためだ。その球体はこの地球だった。世界の子どもたちから寄せられた顔写真の大きなプリントを持った大勢の人。やはりこの子どもたちに託せる地球を守ることが大切なんだって!
中国の5000年の歴史を誇り、現代の世界の課題「平和」と「環境」を掲げ、そのための世界の融和の祭典の北京五輪の成功をというメッセージたっぷりのショーだった。
最後の北京五輪テーマ曲を歌った男女の歌手は中国のポップスの男性歌手と女性はサラ・ブライトマン。東洋と西洋の融和のイメージかな。

選手団の入場行進の順番もいつものアルファベット順でないのが新鮮。ただ中国文字で国名を表して画数が少ない順というのであれば、その字をもっとわかるように示して欲しかった。日本にない漢字もあるだろうからプラカードを大写しにするとかできなかったのだろうか。

思ったよりも見ごたえのあるエンターテインメントを観ることができた。同じアジア人として誇りのようなものまで感じてしまった。同じアジア人のはずだよなぁ。
途中で出てきた昆曲の場面では、玉三郎が昆劇を合同で上演して中国で途絶えた女形芸の復活に貢献していたなぁとかの思いもよぎる。
中国と日本との関係は不幸な時代の清算が不十分なせいで、いろいろと相互不信が根強いが、そこをなんとか乗り越えていい関係を築いていかないと、日本には明るい未来がないんじゃないか。
などなど、興奮して観ていたら、アレアレ教育TVでやっていた「わが魂は輝く水なり」を録画するのも忘れていた。今は途中から録画しながらBGMにしてこの記事を書いているのだが、なかなかいいもんである。


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3 コメント

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Unknown (hitomi)
2008-08-09 09:47:20
さすがお詳しい。このまま頂戴したいです。

この監督の「古井戸」「赤いコーリャン」「あの子を探して」が好きで最近はちょっと好みでなかったのですがこれは魅せましたね。

今朝の朝日に丸谷才一の「高野聖劇化の一考察」が載っています。私も最後の親仁のせりふは長すぎと思いました。

地上派教育テレビはなぜか前から写りが悪くて綺麗な菊ちゃんが…
写真 (hitomi)
2008-08-09 10:26:10
子供たちの写真は愛知万博でも採用された水谷さんの23ヵ国回って移したものがあるそうです。

昆劇、「牡丹亭」で玉三郎と同じ役をしたのは大学院生の素人、でもさすが選ばれただけあって繊細な美しさで目だっていました。七之助さんと似た雰囲気です。
★「猫と薔薇、演劇、旅ファン」のhitomiさま (ぴかちゅう)
2008-08-11 22:24:22
ご紹介有難うございますm(_ _)m
開会式でメインスタジアムに「和」の文字が何度も浮かび上がったオリンピックが始まってすぐにロシア・グルジア紛争勃発!
夢と現実の違いを叩きつけられます。そう願っただけでは平和は実現できないのですよね。地に足をつけた外交とそれを支えるしっかりした世界の人々の世論。それをつくるのはこんなエンターテインメントショーとは比べ物にならない困難な課題です。しかしまた、それを励ます役割もオリンピック開会式のショーに果たしてもらいたいと思うのも事実です。
それと「わが魂は輝く水なり」はまだ書くつもりでおりますよ!

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