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私の『レミゼ』歴は、初演の大阪公演の時からだからまるまる17年だ。初めて観た時、全編歌うミュージカルということにショックを受けた。それまでは芝居の合間に歌うブロードウエイミュージカルしか観たことがなかったのだった。だから演じる人達も難しかったと思う。再演のたびにレベルが上がっていった。それをおっかけて再演のたびにいろいろなキャストで観ていたら観劇回数が50回近くなってしまった。
初演はバルジャンとジャベールを鹿賀さんと滝田さんとで交替でつとめるダブルキャストだった。初演のチラシで滝田さんのジャベールの方が恐そうに写っていたので滝田ジャベールで観てしまった。その頃は子どもも小さくて何回も観る余裕がなかったので次に反対で観ればいいやと思ったのだが、次からはそういうキャスティングはされなくなってしまった。幻の鹿賀ジャベールを観ることができなかったことをずっと後悔していた。
鹿賀さんはバルジャンよりもジャベールを演じる方が向いていると思っているというような発言が散見されていたが、2000年のカウントダウン公演で、公演終了後の特別企画で鹿賀さんは「スターズ」を歌い、その思いの強さを痛感した。昨年、久々にコンサートバージョンでジャベを演じた時にもう嬉しくて仕方がない満面の笑みをカーテンコールで見せてくれていた。今井さんは鹿賀さんのバルジャンの時に自分がジャベールを演じた関係なので、鹿賀さんに敬意を払っているのがよくわかった。バランスもよくいいコンビだったので、是非本公演でも観たいと思っていた。そうしたら今回の実現だ。ああ、念願の鹿賀ジャベールを観ることができたのだ。なんという幸せ!!!
東宝さん、DVDつくってほしいけど、百歩譲ってCDでもいいからこの特別キャスト版を販売してください~。
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以下、キャスト評中心に書くが、今日はジャベールとバルジャンまで。
ジャペール=鹿賀丈史
第一声は力が入りすぎていてアレっと思ったが、鹿賀さんほどの人でも気負うことがあるんだなと、逆にこの公演の特別な感じにゾクゾクした。徐々にスムーズになっていき、表情も動きも千変万化し、鹿賀丈史のジャベール像を描ききった感じ。コンサートバージョンでは表情も動きも必要最低限に抑えられていたのとかなり対照的に感じた。
鹿賀ジャベールは、終始威圧的で自分の信念に過剰なまでの自信に満ちたアクの強い感じが漂う。バルジャンの時は「独白」や「対決」など数曲以外は落ち着いた慈愛に満ちた歌が多く、抑制のきいた歌い方がよかったのだが、ジャベールは、威圧的に思い切りタメをきかせた歌い方がはまっていた。「スターズ」での場の支配力は圧倒的だった。また、砦にスパイとして潜入する時は警部=管理職だったのだから、現在の年齢で演じるからこその貫禄もあった(貫禄といえば村井ジャベが懐かしい)。
最初の攻撃後に解放される場面でバルジャンの言葉が理解できずに立ち去っていく演技も考えさせられた。私はそこで彼のアイデンティティが崩れた瞬間だとこれまでは解釈していたのだが、これまでの自分の価値観では理解できないという不安感が強く漂っていたように感じた。陥落した砦でバルジャンを探し、下水道まで追いつめたのにバルジャンに譲歩してしまったことで最終的にアイデンティティが崩れ、不安感でたまらなくなってセーヌ河へ「自殺」というように見えた。とても自然な感情の流れができていて、すっと受けとめることができた。やはり若手とは違う、大人の演技だなあと堪能してしまった。
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ジャン・バルジャン=今井清隆
初期の頃のジャベールを観ているが、とにかく歌が素晴らしかった。特に「スターズ」の朗々とした歌声の記憶が強く残る。アンサンブルからの抜擢だったが『レミゼ』はスターを育てる作品だと実感したものだ。バルジャンは前回の公演からの配役。前回は2回観たが、1回目は信じられないほど編曲しまくりだった。考えすぎて悩んでしまったようだ。2回目は友人とともに観たのだが落ち着いてしっかりと演じてくれていて安心した。2000回記念公演で鹿賀さんのジャベで自分がバルジャンを演じるのをとても光栄に思っていると『月刊ミュージカル』のインタビューで語っていたので、とても楽しみだった。
前回は「独白」のところがやけに気負いすぎていたようだが、今回は抑えて歌いだしてだんだんと盛り上げていった。「生まれ変わるのが神の御心か」の小休止で司教からいただいた燭台にキスをする演技まで入れていて、ああバルジャン役をものにしたなと感心した。ここでもう涙が光っている。
ファンテーヌやコゼットに対しては思いっ切り優しいし、「考えろジャベール、俺の力を」と「対決」する場面での激変ぶりのメリハリも魅力的だ。胸板の厚さもいい。荷馬車からフォーシュルヴァンを助け出したり、椅子を叩き壊してジャベールをたたきのめすのに見ていて説得力がある。「対決」場面での二人のかけあいも声量たっぷりの低音が響き合って貫禄たっぷりの対決で見応えも聴き応えも十分すぎるほどだ。横綱級の立会いのよう。
反対に砦でジャベールを解放する時も思いっ切り優しいのだ。こんなに優しくされたことがないからジャベールは不安になっちゃったんじゃないの?って一瞬思えるほど、慈愛に満ちている今井バルジャン。砦でマリウスに歌いかける「彼を帰して」の慈愛。病院でマリウスに自分の過去を打ち明ける場面が03年の時間短縮でキーワードが省かれてしまい私は不満だったのだが、今井バルジャンは「息子よ」「お願いだ」とかアドリブを足してくれていたので嬉しかった。
最後のエピローグでコゼットを思いながら歌う中でまた涙。バルジャン・コゼット・マリウス全員が泣いているってここまで切ないラストシーンは初めてだった。今井ジャベ、『オペラ座の怪人』の時もロングランの中で歌も芝居もだんだんよくなっていって最後は合格点を出させていただいたが、バルジャンも同様。歌だけでなく、芝居も細かく自分のものにしきっているのがわかったので合格。長く続けてほしい。
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おまけ
銃で撃たれて意識のないマリウスを連れて下水道を行く場面、バルジャンによって運び方が違う。照明の下にくる度に運ぶ姿勢を変えている。別所哲也は最後に下ろす前は前抱きにしていて、自らの傷の痛みに耐えかねてそのまま下に下ろして自分は後ろ向きに倒れて意識を失う。これが自然で感心した。今井バルジャンは最後も担いでいてそれを下ろすから前向きに倒れるのだが、すごい勢いでバタッと倒れていた。気合が入っている。
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写真は東宝ウェブサイトより2000回記念カテコ画像。
初演はバルジャンとジャベールを鹿賀さんと滝田さんとで交替でつとめるダブルキャストだった。初演のチラシで滝田さんのジャベールの方が恐そうに写っていたので滝田ジャベールで観てしまった。その頃は子どもも小さくて何回も観る余裕がなかったので次に反対で観ればいいやと思ったのだが、次からはそういうキャスティングはされなくなってしまった。幻の鹿賀ジャベールを観ることができなかったことをずっと後悔していた。
鹿賀さんはバルジャンよりもジャベールを演じる方が向いていると思っているというような発言が散見されていたが、2000年のカウントダウン公演で、公演終了後の特別企画で鹿賀さんは「スターズ」を歌い、その思いの強さを痛感した。昨年、久々にコンサートバージョンでジャベを演じた時にもう嬉しくて仕方がない満面の笑みをカーテンコールで見せてくれていた。今井さんは鹿賀さんのバルジャンの時に自分がジャベールを演じた関係なので、鹿賀さんに敬意を払っているのがよくわかった。バランスもよくいいコンビだったので、是非本公演でも観たいと思っていた。そうしたら今回の実現だ。ああ、念願の鹿賀ジャベールを観ることができたのだ。なんという幸せ!!!
東宝さん、DVDつくってほしいけど、百歩譲ってCDでもいいからこの特別キャスト版を販売してください~。
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以下、キャスト評中心に書くが、今日はジャベールとバルジャンまで。
ジャペール=鹿賀丈史
第一声は力が入りすぎていてアレっと思ったが、鹿賀さんほどの人でも気負うことがあるんだなと、逆にこの公演の特別な感じにゾクゾクした。徐々にスムーズになっていき、表情も動きも千変万化し、鹿賀丈史のジャベール像を描ききった感じ。コンサートバージョンでは表情も動きも必要最低限に抑えられていたのとかなり対照的に感じた。
鹿賀ジャベールは、終始威圧的で自分の信念に過剰なまでの自信に満ちたアクの強い感じが漂う。バルジャンの時は「独白」や「対決」など数曲以外は落ち着いた慈愛に満ちた歌が多く、抑制のきいた歌い方がよかったのだが、ジャベールは、威圧的に思い切りタメをきかせた歌い方がはまっていた。「スターズ」での場の支配力は圧倒的だった。また、砦にスパイとして潜入する時は警部=管理職だったのだから、現在の年齢で演じるからこその貫禄もあった(貫禄といえば村井ジャベが懐かしい)。
最初の攻撃後に解放される場面でバルジャンの言葉が理解できずに立ち去っていく演技も考えさせられた。私はそこで彼のアイデンティティが崩れた瞬間だとこれまでは解釈していたのだが、これまでの自分の価値観では理解できないという不安感が強く漂っていたように感じた。陥落した砦でバルジャンを探し、下水道まで追いつめたのにバルジャンに譲歩してしまったことで最終的にアイデンティティが崩れ、不安感でたまらなくなってセーヌ河へ「自殺」というように見えた。とても自然な感情の流れができていて、すっと受けとめることができた。やはり若手とは違う、大人の演技だなあと堪能してしまった。
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ジャン・バルジャン=今井清隆
初期の頃のジャベールを観ているが、とにかく歌が素晴らしかった。特に「スターズ」の朗々とした歌声の記憶が強く残る。アンサンブルからの抜擢だったが『レミゼ』はスターを育てる作品だと実感したものだ。バルジャンは前回の公演からの配役。前回は2回観たが、1回目は信じられないほど編曲しまくりだった。考えすぎて悩んでしまったようだ。2回目は友人とともに観たのだが落ち着いてしっかりと演じてくれていて安心した。2000回記念公演で鹿賀さんのジャベで自分がバルジャンを演じるのをとても光栄に思っていると『月刊ミュージカル』のインタビューで語っていたので、とても楽しみだった。
前回は「独白」のところがやけに気負いすぎていたようだが、今回は抑えて歌いだしてだんだんと盛り上げていった。「生まれ変わるのが神の御心か」の小休止で司教からいただいた燭台にキスをする演技まで入れていて、ああバルジャン役をものにしたなと感心した。ここでもう涙が光っている。
ファンテーヌやコゼットに対しては思いっ切り優しいし、「考えろジャベール、俺の力を」と「対決」する場面での激変ぶりのメリハリも魅力的だ。胸板の厚さもいい。荷馬車からフォーシュルヴァンを助け出したり、椅子を叩き壊してジャベールをたたきのめすのに見ていて説得力がある。「対決」場面での二人のかけあいも声量たっぷりの低音が響き合って貫禄たっぷりの対決で見応えも聴き応えも十分すぎるほどだ。横綱級の立会いのよう。
反対に砦でジャベールを解放する時も思いっ切り優しいのだ。こんなに優しくされたことがないからジャベールは不安になっちゃったんじゃないの?って一瞬思えるほど、慈愛に満ちている今井バルジャン。砦でマリウスに歌いかける「彼を帰して」の慈愛。病院でマリウスに自分の過去を打ち明ける場面が03年の時間短縮でキーワードが省かれてしまい私は不満だったのだが、今井バルジャンは「息子よ」「お願いだ」とかアドリブを足してくれていたので嬉しかった。
最後のエピローグでコゼットを思いながら歌う中でまた涙。バルジャン・コゼット・マリウス全員が泣いているってここまで切ないラストシーンは初めてだった。今井ジャベ、『オペラ座の怪人』の時もロングランの中で歌も芝居もだんだんよくなっていって最後は合格点を出させていただいたが、バルジャンも同様。歌だけでなく、芝居も細かく自分のものにしきっているのがわかったので合格。長く続けてほしい。
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おまけ
銃で撃たれて意識のないマリウスを連れて下水道を行く場面、バルジャンによって運び方が違う。照明の下にくる度に運ぶ姿勢を変えている。別所哲也は最後に下ろす前は前抱きにしていて、自らの傷の痛みに耐えかねてそのまま下に下ろして自分は後ろ向きに倒れて意識を失う。これが自然で感心した。今井バルジャンは最後も担いでいてそれを下ろすから前向きに倒れるのだが、すごい勢いでバタッと倒れていた。気合が入っている。
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写真は東宝ウェブサイトより2000回記念カテコ画像。
自宅より愛込めていた記事あるので、TBさせていただきますね
私は今公演がレ・ミゼ初体験なものですから
いろいろな方のブログを読んでは「ああ、そうなのかぁ~」と感心することしきり。
市村ファントムは観てるのに、その頃は東宝とは縁がなかったのかしら?
遅れても出会えてよかった舞台です。
私もDVD欲しいです!!!
>あいらぶけろちゃん様
こちらで失礼します。市村ファントムをご覧になられているんですか!てことは山口ラウルも?!またお話きかせてください!!私は友達にMD作ってもらって聞いたことはあるんですが・・・。
先日母が新聞で「モーツァルト!」の広告を見たと言うのでネットで調べてみました。市村さんも見てみたい役者さんだし、山口さんも出てるし、これも見てみたい!と思いました。あと「エリザベート」再演するんですね(キャストもまるで同じ!)。
正直に言うとミュージカルのリピーターの気持ちというのがいまいちわからなかったのですが、再演を知ったとき、ちょっと分かった気がしました(笑)だんだんはまってきているのでしょうか?
それから来年の宝塚のベルばらも見たいね~なんて母と話してます。いろいろと見てみたいお芝居・ミュージカルはあるのですが、学生の身分では時間もお金も無くなかなかかないません(T_T)
これからSPバージョン観劇されるのですね。その後の感想もぜひ、TBしてください。お待ちしています。
ばなな様、あいらぶけろちゃん様、
みゆみゆ様、flyingcat様
せめてSPバージョンのCDが発売されるよう、一緒に祈ってください。どこかで発売するという話をきいたような記憶があるのですが、情報源が思い出せない。娘はきっとあまりに熱望しているから夢で見たんじゃないって笑っています。そうかもしれないけど...。
キャスト評は今日はお休みさせていただきました。やはり年のせいか、疲れが長引くのですよ。しかし粘り強く書きますよ~。少々お待ちくださいね。
flyingcatさん、リピーターの気持ちをわかっていただいたようですね。嬉しいです。『モーツァルト!』は夏休みだから学生さんにはおすすめですよ。
私のレミゼ歴は2003年公演からなのですが、ぴかちゅうさんがご覧になった17年間の洞察力、とても興味深く読ませていただきました!鹿賀さんはCDでしか聴いたことがなく、しかもバルジャンとしてなので、ジャベールとして初めてお目にかかったのですが、今まで聴いた&観たどのジャベールとも違いました!聴きやすいとは言えないかも知れないけど、真のジャベール像はこうだったのではないか…とかなり衝撃的でした
50回とは凄いです!
日本版はブロードウェイ版に比べても、決して遜色はありません。特にライティングとセットは間口の広い日本の劇場(帝劇、梅芸など)に合わせてるのかもしれませんが、アメリカのほうが地味に感じるくらいです。
キャストも向うのジャン・バルジャンは、ズングリムックリさんが出てくることもありましたが、演技力と歌唱力は申し分ありませんでした。
つまり、オペラの感覚なのが、先ず見映え優先の日本と異なるところです。
いつも言われてることですが、欧米と興行システムが根底から異なる日本のスター・システムと、ロングラン・システムが克服されない限り、日本のミュージカルの向上は望めないと思います。
是非、これからも東宝以外にも色々な形態のミュージカルをご覧になって、ぴかちゅうさんのご意見をお聞かせ下さい。楽しみにしています。
とにかく今の東京の『レミゼ』人気や『エリザベート』人気は過熱状態です。私も5月日生劇場での『エリザ』での先行予約は玉砕しましたもの。
>無名のジャン・バルジャン役者が現われる日は来るでしょうか...
その日がきたとしても私は生きているかしらというくらい先の話でしょうね。『CATS』や『ライオン・キング』などと違って『レ・ミゼラブル』は作品を楽しもうと観にいく観客は日本ではまだまだ少ないと思います。ある程度いろいろな作品で実績を積んだ方がバルジャンをやらないと集客力が出てこないでしょう。
>帝劇に代わって日生での上演は、よりブロードウェイに近づいたようで良かったと思います。まず、劇場が小さくなったことで、舞台に集中出来て、より濃密な空間が出来る気がします...
今バルジャンをやられているミュージカルキングが出演されるとなると日生劇場ではチケット争奪戦が異常事態になっていますから、日生でロングランするようにするためにはまたまたキャスト一新で一気に地味にすればいいのかもしれません。
それにしてもちょっと難しい状態ですね、今は。
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m