ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/08/22 花形歌舞伎(4)海老蔵の訪欧凱旋公演「義経千本桜」

2010-08-31 23:59:39 | 観劇

海老蔵の「義経千本桜」の狐忠信の半通し上演は2008年7月に歌舞伎座で観ていて、春猿・玉三郎の静御前とのコンビを堪能した。今回は6月のロンドン・ローマ公演の凱旋公演ということで、鳥居前から川連法眼館の場を一回の幕間で見せる特別編集バージョン。
【訪欧凱旋公演 義経千本桜】
市川海老蔵宙乗り狐六法相勤め申し候
鳥居前~道行初音旅~川連法眼館
今回の配役は以下の通り。
佐藤忠信実は源九郎狐=海老蔵
静御前=七之助 源義経=勘太郎
川連法眼=家橘 飛鳥=右之助
駿河次郎=市蔵 亀井六郎=亀蔵
早見藤太=猿弥

夏風邪のために出足が鈍くなり、「鳥居前」は終盤、猿弥の早見藤太が海老蔵の隈取をした忠信に踏み殺されるあたりで着席。目ん玉が飛び出る仕掛けをつけたところからなので元の顔は拝めず(^^ゞ勘太郎の義経が立派。法皇から賜ったが自らは打てない初音の鼓を静に預け、忠信に着せ長と源九郎義経と名を与え(この意味を考えてしまったが影武者として名乗って死んでもいいという許しを得る=名誉なことと推測!)、静を京まで送っていくようにと申し付けて絵面に極まって幕。その後、忠信の狐六法の引込み。狐手にしたり人間に戻ったりしながら二人の花四天とのからみで荒事味たっぷり。やっぱり海老蔵は荒事が魅力だ。

「鳥居前」から静と忠信の二人連れが行く道を風景を入れ換えながら見せていき、桜が咲く山中になり、満開の桜の枝の吊り物も降りてきて「道行初音旅」の場面へ。この場面転換はなかなか面白かった。
幕間を入れないで忠信が隈取の荒事の拵えから白塗りの拵えに早替りをしている間、七之助の静が一人で舞う。「♪中村屋~♪」という歌詞も入った特別な新しい振り付けなのだろう。
スッポンから海老蔵の忠信が登場し、二人の連れ舞い。途中で七之助の金銀の扇子についた赤い房が片方取れてしまった。踊りながらうまく扇子に乗せて拾い、後見のところに下がったところで渡し、次に使うところで代わりの扇子が渡されてという珍しい場面もあった。後見さん、ナイスである!

詞章は通常バージョンとずいぶんと違うらしいが、私にはその違いもよくわからないのだが、立ち雛の男雛女雛のポーズを極める名場面はあり。すぐに戦物語になって海老蔵の気迫十分、七之助の静もきりりとして美しい。
「鳥居前」で早見藤太が踏み殺される演出をすると、静御前を追いかけてくるのは別の人物名にしてという立ち回りが入るのが歌舞伎では常であるが、その部分を大胆にカットして絵面に極まっての幕切れとなる。舞踊を観るのが得意でない私にはとてもラクなバージョンだった。海外公演では三場面で全部に立ち回りを入れると尚更飽きられるだろうし、夏の三部構成の短い半通しにはうまいアレンジだと感心。

さて、いわゆる「四の切」、川連法眼の館。
家橘の川連法眼と右之助の妻飛鳥と役者が揃っているが、二人のやりとりは最低限にはしょったバージョンですぐに忠信来訪が告げられて二人が退場。勿体ないが、時間短縮上演の際には仕方がない。
本物の佐藤忠信が義経のもとへ参上。海老蔵の生締めの裃姿が押し出しもよくて立派。勘太郎の義経が貴公子然としてよい。七之助の静御前と3人のやりとりは台詞も通ってよくわかるし、いかにも花形が揃った感があって好ましい。忠信詮議で呼び出される駿河・亀井で市蔵・亀蔵兄弟が揃うのもいい。
静が同道してきた忠信の詮議のため、初音の鼓を打つと階から姿をあらわす狐忠信。美しいのだが、狐言葉を話し出すと客席から笑いが起こる。前回の時よりも格段によくなっていると私は思ったのだが、客席のこの反応はナンだろう?とまた考える。

ひらめいた!海老蔵という役者に持たれているイメージとのギャップが大きすぎるのだ。また、観客層が歌舞伎のコアな贔屓層ばかりでないこともあるだろう。そういう観客がメディアなどで接して抱いている海老蔵へのイメージとのギャップで笑ってしまっているのではないかと推測。
立派な身体を動かして狐の動きをつくっているが、やはり身体が立派過ぎて大狐に見えてしまう。
まぁ、親への情愛が溢れている気持ちは海老蔵というキャラとも重なってなかなか微笑ましいものがある。
その情愛に心を打たれて初音の鼓を与える義経が身の対照を嘆く勘太郎の芝居もよくて、実にドラマとして盛り上がる。

ばかされの荒法師たちとの立ち回りも面白く、いよいよ宙乗り。吊られているのに鼓を得た喜びを爆発させて顔をくしゃくしゃにして過激に動きながら、3階の鳥屋へ桜吹雪の中を消えていった。
やっぱり海老蔵は荒削りなのだが、「花形」の頂点に立つような花があるなぁと感心。

鳥屋から通路を通って上手の関係者扉へ抜けていくのだが、その間はスタッフが客席の扉を開けてくれない。3階の最も上手側の席で見て、扉が開くと同時に出て行くと、通路には海老蔵の狐の衣裳についていたピンクの花びらがたくさん廊下に落ちている。10枚くらい拾ってチケットと一緒に持ち帰る。見ているとスタッフさんが床掃除のコロコロの道具を使っているのを発見。こうしてとるのね(笑)
写真は、今回の公演の「義経千本桜」の海老蔵の特別ポスターを携帯で撮影したもの。
8/11花形歌舞伎(1)「東海道四谷怪談」で勘太郎のお岩に感心至極
8/22花形歌舞伎(2)東西の成駒屋の共演で「暗闇の丑松」
8/22花形歌舞伎(3)福助×海老蔵の「京鹿子娘道成寺」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿