夫は「ヒカリモノ」が好きな人でした。
「ヒカリモノ」って言っても、お魚じゃないわよ。
腕にキラキラとか首周りにキラキラとかね。
マナウスの家の荷物を片付けていたとき、夫の部屋の机の中から壊れた腕時計が出てきました。
どうやらバンドが切れてしまったみたい。
きっとマナウスでは直すところが見つからなかったのでしょう。
夫が気に入ってよく腕につけていた時計でした。
まだきれいなその時計。
日本だったら直すところもあるかなと思い、サンパウロへの引っ越し荷物に入れずに、日本に持ってきました。
夫が旅立ち、私も手術や入院とバタバタした日を過ごしていましたが、ようやく落ち着いてきた最近、実家に行ったときに荷物の中に壊れた時計を見つけました。
そうそう、そろそろこの腕時計を修理しようかな?
修理屋さんは一軒、夫の入院していた病院の近くにあるのよね。
そこに持って行こうかな?でも、ちょっと遠いのよね。
なんて思いながらネットで検索していると、その時計屋さんと同じ名前のお店がアパートの近くにあるのを見つけました。
歩いても5分ぐらいのところ。
夕方、買い物の前に寄ってみようと思い出かけました。
お店にはおじいさんと息子さんらしい方が座っていました。
腕時計を見せるとおじいさん
「ああ、これなら直るよ。動かないのは電池切れだよ。」とのこと。
修理に時間がかかるなら、後で取りに来ますと言うと、
「そんな必要ないよ。あっという間、あっという間。」
と、ちゃちゃっと時計の裏ブタを開き、電池を交換。
「バンドは奥さんに合わせるんだったら、切れたとっころを直す必要ないよ。 長さの調整で済むよ。」とのこと。
お店に行ってから30分ほどで修理が完了しました。
確かにね、手早かった。
修理代も安かった!
しかーし、おじいさん修理の間中、機関銃のようにおしゃべりし続け
夫の病院のそばにあった時計屋さんは、おじいさんの弟さんのお店だったそうで、その弟さんが体を壊されてお店はお休みにしたこと等々をずううーーーっと話っぱなし。
おじいさんに合わせて、調子よく相づちをうっていた私もいけないんだけどね。
途中から店で仕事をしていた息子、奥に引っ込んでしまったわ。
支払いの時におじいさん、
「まだ新しい時計みたいだね。中身もとてもきれいだよ。使ってあげたらご主人も時計もきっと喜ぶよ。」
アパートに戻って娘に修理した時計の写真を送ったら、どうやら17,8年前に旅行した時に買ったものみたい。
「ヒカリモノ」好きの夫、丁寧に使っていたのね。
出来上がった腕時計をつけてみると、腕時計をつけて元気に過ごしていた夫の姿が浮かんできました。