いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

詩 風景

2019-09-02 22:46:31 | 


風景

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしゃべり
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな







詩 無口な船長

2019-08-22 22:07:05 | 


無口な船長

またひとまわり、
南十字の向こうの方をやって来るよ。

それはね、
風という奴は吹くとなればぼんぼん吹くさ。

こわくはないよ、
怖いほどあのまあるい世界は人情ぽくないよ。

だからいい、
人間がなんじゃろとわめく魚がいるしな

そんな馬鹿があるか、
不思議の神秘という膳立てはまだ食わん。

ありのまんま、
そいつが押してくるんだ。又押してゆくんだ。

オレの顔か、
寂しくて楽しくてそのまた上に又なにかあるか。

冬だな、
海岸通りの屋根から煙が出て人がちらちらして山がまっしろで。

うむ又会おう、
おいおい、このタバコを持ってゆけよ。

……

今日、友人が栄転することをきいた。
すばらしい。
すばらしい。
祝福する。

ただ、
ちょっと、
ちょっとだけ、
思った。

「かわいそうに」
そう、
ほんのちょっとだけ。

You deserve it.















女医になった少女

2019-08-21 23:27:10 | 


女医になった少女

おそろしい世情のロ9年を乗り切って
少女は今年医者になった
まだあどけない女医の雛は背広を着て
とおく岩手の山を訪ねてきた
私の贈ったキュリイ夫人に読みふけって
知性の夢を青々と方眼紙に組み立てた
けなげな少女は昔のままの顔をして
やぱり小さなシンデレラの靴をはいて
山口山のいろりに来て笑った
私は人生の奥にいる
いつのまにか女医になった少女の目が
煙るようなその奥を老いたる人を検診する
少女は言う
街の医者もいいけれど人の世の不思議な理法がなお知りたい
人の世の体温呼吸になお触れたいと
狂乱怒涛の世情の中で
いまい美しい女医になった少女を見て
私が触れたのはその真珠色の体温呼吸だ











あなたはだんだんきれいになる

2019-08-20 21:23:19 | 


あなたはだんだんきれいになる

おんなが付属品をだんだん捨てると
どうしてこんなにきれいになるのか
年であらわれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ店の金属。
見えも外聞もてんで歯の立たない
中身ばかりの清冽な生きものが
生きて動いてさつさつと意欲する。
おんながおんなを取り戻すのは
こうした世紀の修行によるのか。
あなたが黙って立っていると
まことに神のつくりしものだ。
時々内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。






詩 こんなボク

2019-08-20 18:22:58 | 


こんなボク

こんな未来を ボクは望んだだろうか
こんな未来を ボクは想像もできなかった

こんなボクの どこを愛せるの?
なぜ そんなにやさしい目で見れるの?
「だいじょうぶ まだやり直せるよ」って言えるの?
こんなボクなのに……
こんなボクなのに ありがとう かあさん









おかあさん?

2019-08-19 21:35:58 | 


おかあさん?

あ だれかくる
おんなのひとだ!
だれかの おかあさんかな?
もしかして……ぼくのおかあさん?

きれいなひとだなあ
ぼくのおかあさんも きれいかな
しごとは なにをしているのかな
やさしくて ふわふわなのかな

どんなこえかな
ぼくに にてるのかな

でも……

どんなかおしてても
ふとってても
いじわるでも
はたらいてなくても
ゴツゴツしていても
おとこみたいなこえでも
おかあさんは おかあさん

いちどでいいから
かおをみせてよ おかあさん
だきしめてよ おかあさん
いちどでいいから
ぼくのなまえをよんでよ おかあさん

そしたら
ぼくから つたえたいことがあるんだ
「うんでくれてありがとう」







犯罪者が幸せになってはいけないのだろうか~生きること~少年刑務所の囚人の詩

2019-08-18 22:11:18 | 


生きること
……

生まれるためには

生まれるためには
自分の両親
それまでの先祖
色々な人たちの命
無ければ自分という人間は いなかった
感謝して 一生懸命生きなければいけない
そして……
幸せになりたい
 ……

犯罪者なのに「幸せになりたい」とはなんだ!
と思われる方もいるでしょう。
幸せになりたい、と控えめな小さな文字で書かれていたこの詩。
ほんとうは誰もが幸せになるために生まれてきたはずです。
自分の命の大切さに気づいてこそ、人の命を大切にできるのです。












少年の詩 奈良少年刑務所での作品 「期待」

2019-08-15 23:32:57 | 


期待

ぼくは小さな頃から 母に
食事の仕方
テレビの見方
寝る時間
朝起きる時間
勉強の仕方など
すべてにわたって
いろいろ厳しくしつけられてきました

いま思えば ぼくの未来を思ってしてくれたことですが
その頃は「ぼくのことキライなんやなあ」と思いました。
「亡くなってしまった兄ちゃん姉ちゃんの分
あんたにしっかりしてもらいたくて
厳しくしたんやで」と 母はいいます

母の期待を裏切らないようにしないと駄目だ
と思いながら必死で生きています
母のような気持ちが持てる親になりたいと
心の底から強く思いました












昨日はどこにもありません

2019-08-15 21:20:13 | 


昨日はどこにもありません

昨日はどこにもありません
あちらの箪笥の引き出しにも
こちらの机の引き出しにも
昨日はどこにもありません

それは昨日の写真でせうか
そこにあなたの立っている
そこにあなたの笑っている
それは昨日の写真でしょうか

いいえ昨日はありません
今日を打つのは今日の時計
昨日の時計はありません
今日を打つのは今日の時計

昨日はどこにもありません
昨日の部屋はありません
それは今日の窓掛けです
それは今日のスリッパです

今日悲しいのは今日のこと
昨日のことではありません
昨日はどこにもありません
今日悲しいのは今日のこと

いいえ悲しくありません
なんで悲しいものでしょう
昨日はどこにもありません
何が悲しいものですか

昨日はどこにもありません
そこにあなたの立っていた
そこにあなたの笑っていた
昨日はどこにもありません







受刑者が紡いだ詩の向こう側⑥

2019-06-08 21:17:41 | 


そんなことが、次から次に起こる授業だった。
この驚きをみんなに知ってもらいたいと
2冊の詩集「空が青いから白を選んだのです 奈良少年刑務所詩集」(新潮文庫)
「世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集」(ロクリン社)を出版した。

しかし、詩は苦手、という人も多い。
もっと読みやすい本を、という声に応えて、
「あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室」
を書いた。

足掛け10年で出会ったさまざまな少年のこと、教室で起こった奇跡のような出来事、わたしたち自身が癒され成長してきた奇跡。
そしてわたしが体験した驚きを、この本の中で、あなたもぜひ体験してほしいと思う。

以上、りょう・みちこさんによる
















受刑者が紡いだ詩の向こう側③

2019-06-08 20:26:46 | 


そんなわけで、奈良少年刑務所が国の文化財に指定され廃庁となるまでの
丸9年と少し、二人で刑務所の講師をしてきた。

受刑者との授業

驚くべきことに、授業は最初からいきなり効果を上げた。
1時間目の教材は『おおかみのこがはしってきて』(ロクリン社)だ。
登場人物であるアイヌの父親と子ども役になってもらい、
みんなの前で朗読してもらう。

ひらがなばかりのやさしい本だが、彼らは緊張しきって必死で読む。
終わると受講生から盛大な拍手が湧く。

すると、その瞬間に変わるのだ。
うろたえながらも照れくさそうに笑い、能面のような顔にふっと表情が生まれる。
それまで交流不能としか思えなかった少年たちの間に、いきいきとした感情が流れ出す。
人から拍手などもらったことのない人生だったのだろうか。
おまえはダメだと否定され続けてきたのかもしれない。
その瞬間きっと小さな自己肯定感が芽生えたのだ。

(続く)