濃さ日記

娘もすなる日記(ブログ)といふものを父もしてみんとて・・・

わが闘病1

2006-11-06 21:11:50 | Weblog
 このたび、小生は急性の心筋梗塞のため倒れたものの、多くの未知の人々の支援と強運に恵まれ、九死に一生を得ることになった。詳しい事情は次の通りである。

 9月26日、神田神保町付近を教え子と歩いている間に、心筋梗塞でも最も危険とされる「心室細動」という現象が、何の前ぶれもなく、わが心臓内で突然起こり、意識不明のまま路上に倒れることになった。「心室細動」は、2002年に高円宮親王の急逝で一般にも知られるようになった不整脈の一種で、小柳 仁「心臓にいい話」(新潮新書)によれば、「心臓病の発作では、救命率の高いゴールデンタイムは15分と言われているが、心室細動の場合はさらに短くて、最初の10分間に電気ショックをかけてやらないと、蘇生の可能性は低い。しかし、倒れた人を発見して、119番に電話して、救急車が来て、病院に運んで、医師が駆けつけるまで、それぞれの段階で数分などはあっという間に過ぎてしまう。そのため、病院以前、すなわちプレホスピタルの部分がたいへん重要で、この段階で勝負が決まるといっても過言ではない。心室細動で心肺停止状態に陥ったにもかかわらず、救急隊が到着するまで、その場にいた人が心臓マッサージをしてくれたおかげで、なんの障害も残らず社会復帰する人もいる。その一方で、洗面所で急性心筋梗塞の発作を起こし、たまたま人がいなくて発見が遅れたために助からない人もいる」という。

 私の場合、教え子の伝えるところによると「工事現場に近かったこと、ヘルパーさんが通りかかったこと、救急車が来るまでに、出来る限りの最善の方法がとれたこと、たまたま、浅草の救命隊が近くにいたこと、病院が近くだったこと」など、「大きな不幸の上に、小さな幸運がてんこ盛りだった」ため、奇跡的に助かることになったのである。もちろん、教え子の、周囲に協力を訴える女性特有の演出効果もあったと想像され、この段階で、「不肖の教え子」は「命の恩人」という名誉ある地位を獲得したのである。

 その後、N大病院の救急医療センターに運ばれ、「脳低体温療法」という、最新の救命措置を受けることになった。脳低体温療法とは、身体を水冷マットで覆うと、冷水がプラスチックのマットの中を循環し、体温を34度前後まで下げる。すると脳の酸素消費量が減り、炎症を起こす体内物質も減るなどして、脳の神経細胞のダメージは抑えられる。こうした上で、カテーテル療法により、心臓の冠動脈の治療が行われたのである。この間、意識が戻るまで3日間、生死の境をさまよったのである。気の早い親戚の中には、葬式の手はずなどを考えた者もいたらしいが、脳の機能の損傷もほとんどなく、再びこの世に戻ってきたのである。

 ここで思い出されてくるのは「白雪姫」「眠りの森の美女」など、眠り続けていたヒロインが呪いから覚め、蘇生するという類の童話である。美女に限らず、人間をまるごと、ある一定の条件で冷凍保存して眠らせておけば、生命の維持、記憶の確保、あるいはアンチエイジング対策としても有効だということになるのかもしれない。現に、見舞客のとあるご婦人など、小生の顔の色つやがずいぶん良くなっているのを目ざとく見つけ、「私もちょっと試して・・・」など、ついつい、あらぬことを口走っていらっしゃったほどだ。

 その後、病状が一段落した後には、いろいろな人から「きれいなお花畑が見えましたか?」など、「臨死体験」の様子を冗談半分で尋ねられたりもしたが、そういう体験は、私の場合、冷凍保存だったせいか、皆無だった。何とも無味乾燥で愛想がないようにも思われるので、公式発表としては「気がつけば、美しくやさしい看護士やあたたかく励ます見舞客たちに囲まれ、まるでこの世の天国のようだった」と答えることにしようと思っている次第である。

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1 コメント

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Unknown (カタオカ)
2007-03-29 13:56:05
こんにちは,
今,私はテレビ制作の仕事をしていて,動脈硬化,心筋梗塞調べているんですが,病気の症状,前兆,体験談などをアンケートでお伺いできませんでしょうか。
(ブログで心筋梗塞を体験されたとあったのでコメントしました)
もし良ければ,gqxwy821@yahoo.co.jpまでメールいただけませんか?
突然のコメント,失礼いたしました。

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