ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

桜川磯部神社

2006-04-04 14:16:29 | 雑談
昨日、茨城県の桜川磯部稲村神社へ参拝し、お祓いを受けてきました。
この神社は言うまでもなく能『桜川』の舞台となった場所で、ぬえはちょっとこの神社に縁があるので花の季節に参拝を思い立ちました。

昨年の町村合併で新市になった、その名も「桜川市」。土浦から筑波山をぐるっと反対側にまで回りこんで、車でざっと一時間。東京よりも花見の時期は少し遅れて、まだソメイヨシノも三分咲きで、山桜はつぼみ状態でしたが、糸桜(しだれ桜)が満開で、境内には立派な糸桜の大木が。

東京では公園などに人工的に植えられた桜が多くて、ほとんどがソメイヨシノなので、桜は一斉に咲いてぱっと散る、という印象が強いですが、本来桜はいろいろな品種が次々に咲いていくもので、たとえば糸桜の見頃には山桜は見ることができないのです。じゃ、いろいろな品種が植えられている地域ではいつまでもお花見が楽しめるか、というとそうでもなくて、宮司さんに聞いたところでは、それでもすべての花が見られるのはせいぜい十日間なのだそうです。

さて神社に話を戻して、能『桜川』では子方が修行しているのは「磯部寺」。神社ではありません。ところが神社の境内には寺の跡地は残っていて、かつて神仏混淆の時代には神社と寺が共存していたのです。明治の廃仏毀釈の中で、すでに衰退していたらしい寺の方は取り壊され、神社だけが残って今日に至るのだそうです。ちなみに神社のすぐそばを桜川(本当に小さな小川です)が流れていますが、こちらにも現在は川沿いに桜並木はなく、代わりに神社に隣接して、種々の桜が植えられた広大な「桜川公園」があります。

またこの神社は鹿島神宮と縁が深く、境内には小さな要石があります。鹿島神宮にも要石があって、それは関東の地震の震源となる「大ナマズ」の頭を押さえていると言われているのですが、磯部神社の宮司さんに聞いたところでは、言い伝えではこの神社の要石はその「大ナマズ」の尻尾を押さえているんだとか。ぬえは2年前にこの神社でお祓いを受けている最中に新潟地震を体験して、それはそれは驚きましたが、ははあ、要石でも押さえられなかった「大ナマズ」の大暴れで、ぬえは尻尾の真上にいたんか。。

鹿島神宮との縁、について、能『桜川』の子方がどうしてここに来たのか、というお話を宮司さんはしてくださいました。能ではワキ僧は子方について「いずくとも知らず愚僧を頼む由仰せ候ほどに。師弟の契約をなし申して候」とあっさりと説明していますが、実際には『隅田川』のように人商人に誘拐されたのだろう、との事。そういう人商人は奥州に帰る途中に鹿島神宮に参拝するのだそうです。やはり悪事を重ねているから神仏の罰を恐れるのでしょう。そこで運良く鹿島の神職などに助けられた子どもが、縁のある摂社などに預けられて神職や僧侶として育てられる事もあったのだろう、とのお説でした。

宮司さんは ぬえのために念入りにお祓いをしてくださり、お札やお守り、能『桜川』の舞台が描かれた絵馬、それに神酒まで頂戴してしまって。。ありがたい限りです。この神社には、やはり全国から謡曲の愛好家が参拝されたり、奉納の謡会なども催されるそうで、さすがにこの花の時期には今年も多くの奉納の催しがあるのだそうです。能は能楽堂で能楽師によって演じられるものばかりでなく、こういった愛好家の方々がとっても積極的に活動してくださっているから支えられているんですよね。

参拝を終えた帰途、近くの雨引観音に行き(浮気になっちゃうから参拝はせずに拝見だけ。。(^^;) 境内にクジャクがいました!)、それから筑波山神社にも寄って(こちらは磯部神社とご祭神が同じなので参拝しました)、さらにケーブルカーで山頂まで上って、雄大な景観を楽しんで帰りました。やー、なんだかんだ言ってもやっぱり日本って広いなあ。

本日のお題はこちら↓
 磯部神社拝殿。社殿は小さいけれど趣あり(ただし社域は広大)。本殿は大正頃
 のものかな。精緻な細工が施されていて見応えがあります。このほかの画像は
 次からの記事にも順次掲載しますのでお楽しみにーm(__)m

桜川磯部稲村神社のHPはこちら→ 桜川磯部稲村神社
 『桜川』グッズの絵馬も掲載されています。いや、さすがにネット通販などはあり
 ませんが。。近隣で見られる桜の一覧のページもあります。
 優しくて親切な宮司さんなので、一度ご参拝されてみてはいかがでしょうか。


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