毎年、京都で開催している工作のワークショップの話題です。(過去記事です)
子どもたちと他の子の作品を見てまわる時間のこと。
それぞれの作品の前で、
「この作品のすばらしいところはどこだと思う?」「面白いところ、工夫しているのは、どこだと思う?」と
たずねました。、子どもたちから、「ここでしょ!」「あそこ!」「こういうところがすごい」「こんなところを工夫している」
と次々声があがりました。
未完成に見える作品も、目立たない地味な作品も、見たところ他の子の模倣にしか映らない作品も、
そこにある長所を探す目で眺めたとたん、
たちまち、その作品にしかない独創的な魅力が輝きを放ち出すから不思議です。
個々の作品の『動き』や『形』に潜んでいる科学的なものや数学的なものが、
「次はそのアイデアをどう発展させようか」という
ワクワクの火を子どもたちの心に灯していくのがわかります。
上の写真の作品のすばらしい点と問うと、
子どもたちは、ビー玉の滑って行くスロープのひとつひとつが
つるっとした素材、ざらざらした素材、パリパリした素材、ガタガタガタした素材、さらっとした素材などに
見た目も美しく貼り分けられている点に気づきました。
見ると、ビー玉スロープを受ける部分も、異なる素材で異なる形に作られています。
たいてい、違いを生み出す時には
色分けして視覚的な違いを出す場合がほとんどです。
でも、ざらざらガタガタといった触った感じからくる違いを意識して作品を作ると、
ビー玉の滑り方、滑る速度、滑って行く時に出る音などに
違いを出すことができるのです。
触感の違う素材は、「探すこと」と「作ること」の
ふたつの方法で集められています。
ガタガタした触感を作るには、「紙を階段状に折ればいい」といった
あたり前のような発見は、
探すことに行き詰った時、「作る」に転換することができる知恵につながります。
今回、ビー玉迷路を作る方法をお手本で示したのですが、この作品では、
「ビー玉の通って行くコースはひとつだけ」という先入観を打ち破る
面白いアイデアが使われています。「ふたのある箱」という形もうまく活用されています。
子どもたちが、そうした基本の応用させる
コツをこうした目に見える作品から学べるように
言葉を添えています。
写真の作品の良いところをたずねると、
子どもたちは、引き出し式の箱で作ったビー玉用エレベーターや
箱を切って作ったビー玉を飛ばしたり移動させたりする道具を指さしました。
どちらも今回、作り方を説明したものではあるのですが、
実際、自分で作るとなると難しい個所がたくさんあったでしょうに、上手に作っています。
わたしは子どもたちを土台に使われている紙に注目させました。
薄手の画用紙を土台としているので、最初から形が整っている箱のふたや段ボールを
使うよりも見栄えが悪いのです。
でも、「紙の端を折って立体にする」というアイデアは、紙さえ継ぎ足せば、どんなに大きなサイズでも
作れるという利点や簡単に壁面の高さを変えられるという利点、
材料が足りなくても自由自在に自分のアイデアを
実現できるという利点があってすばらしいのです。
また、このように紙を折って立体を作る作業は、
算数の世界の気づきにもつながります。
そうした発見を面白いな、と味わうことができる間を大事にしています。
この作品は小2の子が全て自分で作ったものです。そのように子どもが自分で
作った作品は、ビー玉を転がした時の面白さがしっかり追求されているところが
すばらしいです。
遊ぶと面白いこと。それはとっても大切です。
『ようちえん』という作品。
箱やストローやペーパータオルの芯などを
ダイナミックに貼り合わせて作った作品です。
作る作業を心から楽しんでいたことがわかる出来栄えでした。
子どもたちに「この作品のどこがすばらしいと思うかたずねると、
下の写真のように牛乳パックの先を切り抜いて色付けしている部分と
幼稚園の建物中貼りめぐらされているストローを指しました。
写真ではわかりにくいのですが、
牛乳パックの口の部分は三角形の山折り谷折り線が入っているので、
科学館のプラネタリウムの天井部分やミラーボールのように
近未来的な建物を思わせる美しさが感じられるのです。
「三角と三角でできている建物の屋根はかっこいいね。
これは何でできていると思う?
何を使うと作ることができるでしょう?」とたずねると、
みんな目を丸くして考え込んでいました。
正解した子と作品を作った男の子はとてもうれしそうでした。
牛乳パックの口の付近にどうして三角形の折目が入っているのか、
実際に空の牛乳パックを切って考えてみると、子どもの探究心を刺激してくれます。折り方によって
ひっこんだり、飛び出したり、開いたり閉ったりするのですから。
この後、子どもたちが自分の作品の一部を指して、「これは何で作ったでしょう?」という
クイズを出して楽しむ姿がありました。
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これも小2の子が自分ひとりで作った作品です。ストローで作った迷路は
まばらで、スロープはストーローだけでできていますから、ちょっと手を抜いて作ったようにも
見えます。でも、実際にビー玉を動かす過程を実演してもらうと、
「こういう風にしたい」という目的のもと、
何度も試行錯誤を重ねてできた作品であることがうかがえました。
作品見物に集まった子どもたちに、
「この作品のどこがすばらしいと思う?」とたずねると、
いっせいに乳酸菌飲料の容器に銀色の紙を貼ったものを指さしました。
どうしてそれが子どもたちにすばらしいものに見えたのかというと、この容器には
ひもがついていて、それをひっぱると容器が段差で傾いてビー玉が飛び出すのです。
おそらく容器にひもをつけただけだと段差で傾けることができなかったのでしょう。
ひもは土台に貼ったストローを通してから引っぱる仕掛けになっていました。
ひもをつけて引くだけでは思うような動きにならなかったので、
工夫を凝らしたようです。
ストローだけのスロープは、ビー玉のサイズより幅を狭くするとちゃんと機能します。
新しいとてもいいアイデアですね。
ティッシュの空き箱のベッドに寝かされた5人の赤ちゃん。
トイレットペーパーの芯に目と口が描かれているだけなのに、
何ともいえない可愛らしさ。
「あっかわい~」という声が漏れていました。