虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

勉強のこと 教育のこと 親子の会話 1

2011-03-26 19:58:16 | 日々思うこと 雑感

「教室に子どもたちが触れて遊べるように
いろんな立体を置いておくといいよ。
三角錐とか正二十面体とか……。
図形問題を解いていると、子どもの頃に遊んでいたかどうかで
得意不得意がはっきり分かれるなって思うことがよくあるんだ。
ぼくは幼稚園くらいの頃、よく さいころ作りしていたじゃん。
だから立方体が出てくると難問の場合でも、自在にイメージできるから
すぐ解けるけど、
実物を見たことがないものだと、形はわかっていても
それを切断したり回転させたりして考える段になると
思うようにいかないときがあるよ」
息子からそんな話を聞いていたので……

今日のレッスンで4歳の★くんが、工作で列車を作っているとき
正面がカーブになっているのにこだわって改良している姿を見たとき
ちょっとうれしくなりました。
工作って図形や角度と触れる良いチャンスですね。




もうひとつうれしかったのは、
リニアモーターカーの模型を見てきたという★くんが、「リニアモーターカーの線路を作る!」と言いながら
裏にテープがついている磁石とクリップを並べていき、
最後に折り曲げて、(折り曲げるときは少し手伝いました)
「そんなアイデアがあったの?」とびっくりするような作品を作ったときです。
★くんが言うには、リニアモーターカーの線路はこんな風になっていたそう……。
★くんはこれまで何度か工作のワークショップに来てくれていたのですが、
(わざわざ東京から大阪まで)自分で作ろうとせずふざけてばかりだったので、
親御さんが「いつか ちゃんと作る日がくるのでしょうか?」心配していたのです。
それが、4歳を過ぎた頃から、
ワークショップで見たお兄ちゃんおねえちゃんの作品を思い出しては、どんどん作るようになったそうです。

「ずいぶん経っても覚えているものですね……」
と★くんのお母さんは驚いた様子で話しておられました。

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大学受験の勉強をしていると、高校受験までと一線を画する問題と出会うことが多いという息子。
そうした大学受験で初めて目にする問題を見るたび、
今の小中高で習う学習内容のバランスの悪さに気づいて、
母である私が、『適当』とも『いい加減』とも見える無計画な方法で、
子どもたちに教えたいと思っているものが何なのかわかる……
といったことを口にします。

レッスン後に、子どもたちが混ぜ合わせて実験した
かたくり粉やわらびもち粉や紅茶の茶葉などを片づけていると、
小腹がすいたんで一服しにきた……という息子が話しかけてきました。

息子  「今の時代、演繹的な方法だけに偏って教育しすぎ
なんじゃないかな?
まず公式や正しい方法を教えて、そうした普遍的な前提から、
それぞれ個々の結論にいたるって方向だけが
勉強だと子どもに信じさせている。
でも、日常のいろんな場面や実験してみた結果から、
帰納的な判断をするような学習が、
もっとあってもいいと思うんだよ」


私  「帰納的な判断をするような学習って、どんなもの?」


息子 「子どもっていろんなことを実験するのが好きじゃん。
実験室でするような実験じゃなくても、
物を投げてみたり、いろんなものを混ぜてみたり、引っ付けて見たりさ。
そうして、いろいろやっているうちに、
ボールが下に落ちるのは何でだろう?
こういう結果が得られるということは、
こういう法則やルールがあるんじゃないかな?って、
最初に公式や法則を生み出した人の思考を、
子どもが自分でたどってみるのも必要だと思うんだ。

もちろん間違いもあるだろうけど、
帰納的な方法で考えるって方向で考える経験していると、
演繹的に考えるときにも、
メタな視点からそれを眺めつつしっかり理解するってことが
できるようになるんじゃないかと思ってさ。

京大の過去問でも東大の過去問でも、
その問題の問うていることが、
シンプルな形にするとどのような種類のものなのか
察することができると、
とても簡単になることがよくあるんだ。
たとえば、京大の有機化学の問題でも、その背後に
『これは赤くて丸くて甘すっぱいものです。なんでしょう?(答えはりんご)』という幼児向けのひねりのないなぞなぞのような形が
透けて見える場合がよくあってね。
それさえ見抜けていれば、
後はひとつひとつ見落としなく確認していけば解けるんだよ。

今日、解いていた同志社の過去問にしても、
Cランクのn次方程式の問題だから、
問題の式そのものはすごく難しいものなんだけど、
大まかなグラフを描いて、
接線を引きつつ、どんなに式が複雑になっても
たったこれだけの線と、
その関係を表しているっていう
背後にあるシンプルな形がわかっていると、
こうすれば解けるって手順が見えてきたよ。

つまり何が言いたかったのかというと、
問題がどんなに難しくても、
『それって要するにどういうこと?』っていう幼児や小学生でも感覚的にわかってるものをつかんでいくことが大事だと思うんだ。

そのためには、子どものときから演繹的に考えるだけじゃなくて、
帰納的に考える体験もいるよ。」


私 「ああ、それは、私も教室で大切に思っていることよ。
この間も、子どもたちが、『先生、いろいろ混ぜて実験したいから、しょうゆとか酢とかブクブク泡が出てくる粉とか、片っ端から持ってきてよ』と言うから、危険な気体が出ないものと、
あまり食べ物を粗末にすることがないようにっていう最低限の気配りだけして、いろんな固体や液体を用意してあげたの。

そしたら、それは喜んで、ベタベタの何かわからないようなのをいっぱい作っていたわ。
こんなの理科の実験でも勉強でも何でもないっていえば、返す言葉もないけれどね。

そんな風に好き勝手に『あれも入れてみようよ』『それも混ぜちゃえ』って遊んだ子たちに、
日能研の中学受験用の問題集の
『水溶液とその性質』の範囲の問題を見せて、
『もっともっと粉ちょうだい!もっと溶かしたい!溶けなくなったからお湯ちょうだい!って大騒ぎして、いっぱいいっぱい粉放り込んでたのが、このグラフの縦軸のどんどん数字が大きくなってくところよ。

横軸は温度。温度が上ると、溶けるよね~なんて説明すると、
突然、意味のわからないグラフや言葉の羅列だった理科の入試問題が、
身近なわかるものになるのよ。

いろいろ溶かして遊んだ後で取り出すとき、
火にかけたらいいとか、コーヒーフィルターでこしたらいいとか、子どもたちに自由にアイデアを出させて、

いろいろ実験してみると、その実験が教科書とはかけ離れた無意味なものでも、
そこでも★(息子)が言う『それって要するにどういうこと?』を
複雑そうな問題から読み取ることができるようになるの。

でも、理科実験室で教科書の実験を先生の指示通りしてみたんじゃ、
『それって要するにどういうこと?』がわかるようになる子は少ない
はずよ。

実験でめちゃくちゃさせれば良いって言ってるわけじゃないの。
★(息子)が言ってたように、帰納的な方法で頭を使ってみる場が
そうした気づきにはいるんでしょうね」


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