虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

モンテッソーリ、ニキーチン、フレネ、シュタイナー、フレーベル と 「工作」 4

2011-06-05 13:50:18 | 幼児教育の基本
おススメのシュタイナー教育の本

『赤ちゃんからのシュタイナー教育』 ラマヒ・ボールドウィン  学陽書房

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シュタイナー教育は哲学者であり神秘思想家であるシュタイナーの
宗教観というか神秘的な思想がベースにあるため、「どうも宗教ぽくて苦手」と感じる方があるかもしれません。

私自身も、シュタイナーの幼児教育に共感するものの
シュタイナーの人智学をそのまま信じているのかというと、そうではありません。




シュタイナーもモンテッソーリも
子どもの発達について深い理解に達していました。
このふたりのメソッドはとても似ているともいえるし、正反対ともいえます。

私は幼児には、シュタイナーとモンテッソーリのアプローチのどちらも非常に大切だと考えていて、
シュタイナー教育の世界観を幼児の暮らしのベースにして、モンテッソーリの考え方をところどころに
取り入れるのが、ベストかな~?と考えています。

ただ、シュタイナーの小学校に通うべきかどうかは、
良いのか悪いのか私には判断できません。
小学生向けのシュタイナーの教育法は、もう少し現代の社会の動きを取り入れた方が
いいようにも思っています。



シュタイナーもモンテッソーリも、
どちらも子どもが感覚器官を通して、環境から直接学び、
さまざまなことを 模倣を通して身につけると考えていました。


けれども、子どもとおもちゃ(物、教具)との関わり方については
正反対ともいえる主張をしています。

モンテッソーリは、幼い子は、一度にひとつのことを教えて、
次の段階に移るまでにそれが完全にできるようにすれば
学びやすいことに気づきました。
それで、モンテッソーリの教具には、それぞれひとつの正しい扱い方があります。

一方、シュタイナーは、ひとつの素朴なおもちゃから
子どもが自分の想像力を使って何通りにも遊びを広げていくことを
大切しました。

どちらの教育法も、楽しい活動の中で、集中力が養われます。
「どっちがお得?」「どっちが能力が身につく?」という比べ方をすると、
たくさん作業をこなし、巧緻性や認知の力がアップしていくのが目で見て確かめられる
モンテッソーリの教育法の方が、断然、良いものに映るかもしれません。

でも、幼児というのが、
゛できる前にする゛
゛知ることなく知る゛という傾向を持っていて、
<充たされざる意味>と言うべき早熟な知覚が認識発達をリードしているとすると
モンテッソーリの教育法だけでは足りない、シュタイナーの考え方も取り入れる必要がある
と私は考えています。

それらがきちんと機能するような配慮が必要ですから。

もちろん、モンテッソーリのメソッドもそうした意味で重要なのですが、
それとは別に、子どもは世界や社会とつながっていて、
それを取り入れて創造的に消化して、
自由にアウトプットする空間や時間がたっぷり必要だと思っていて、
それを最適な状態で可能にするのが、シュタイナー教育だからです。


子どもの心にやすらぎをもたらし、
まるで子どもを誘うような親しみを感じさせる遊び空間というのが
どういうものなのか、
シュタイナーはとてもよく知っていました。

曲線がたくさんあって、隠れ家があり、遊ぶところがあって、自然で素朴な質感があり、
守られ抱きしめられているように感じる空間を
子どもに用意しました。

そうした子どもが安心して子どもでいられる場では、
子どもは想像力を使って、とても創造的な遊び方をします。

感覚を通して世界をとりこんで、それを遊びや制作活動でアウトプットできるように
していると、
子どもの内部のプログラムは、発達不全を起こしたり、ゆがみを生じたりすることなく
きちんと実行されていきます。


次にできそうなことを、まだできる前に始め、
まだ知らないことまるで知っているように学び始めます。

幼児は世界をそのまま経験する幼児流の方法を持って生まれてくるのですから、
大人が世界から切り離して加工して、
意味を伴わない知的な課題に変えて与えるのは、
(モンテッソーリの教具はそれとは別です。子どもにとって、とても意味があります)
そうした特別な時期が終わる頃、つまり就学する時期まで控えた方がいいのかもしれません。

『赤ちゃんからのシュタイナー教育』から参考になりそうな箇所をいくつか引用します。

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■ 8歳までの子どもには、子どもを怒ったり説得しようとしないで、模倣の原則が大切であることを
心にとめてください。子どもにある行動を教えたいときには、
子どもの前で、あるいは子どもといっしょに、それをする、というのが一番いい方法です。

(略)
ちょっと空想とユーモアがあれば、子どもにさせたいことをさせるのにずいぶん役立ちます。
たとえば、片づけのときに、トラックの運転手に車庫まで運転してくれと頼むことができますし、
カーボーイに馬小屋まで乗って行ってくれと頼むこともできます。
子どもの空想を中断させるのではなく、それに参加することです。
(略)
子どもが行動が伴わず言葉によってのみ示されるような「権威」に対して
一貫して反応できるようになるのは、小学生時代になってからです。
未就園児の場合、何度も何度も行動をただし、
正しい行動をしてみせなければなりません。
かれらの記憶力は成熟していないのです。
時間がたつにつれてゆっくりとした改善は見られますが゛……。

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■ 子ども時代は成長が行われ、からだのリズムの変化が激しい時ですが、
リズムのある生活は、そういう
子ども時代に対して、ちょうど子宮のような、安定した環境を与えてくれます。
そういう生活を送ることができる子どもは、
自分の世界に自信を持てます。
いつ次のことがおこるのかわからない、という不確かさを心配しないですむのです。
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■ 教師はすべてに気がつき、完全に今の瞬間に存在し、ほかのことについては考えないのです。
ただそこに子どもたちと共に居るのです。
幼い子どもと共に居るということは、しばしば「すること」というより
「在ること」の方に近いことなのです。

すべてを単純にすることは難しいことです。私たちは子どもに刺激をあたえ、
いろいろなものを用意しなければ、
と思いがちですが、
もっと難しい仕事は、
子どもが自分で居ることができて、大人の導きと保護のもとで世界を経験し、
成長し、試せるような空間を与えるということです。

「子どもの周りには、幸せな表情、幸せな在り方をした人が居ることが必要です。
そして何よりも、本当の無条件の愛が子どもには必要なのです」

        (『赤ちゃんからのシュタイナー教育』 ラマヒ・ボールドウィン  学陽書房より)


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8 コメント

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Unknown (ikko)
2011-06-05 21:08:53
シュタイナー教育については、名前しか知らなかったので、もう少し詳しく学びたくなりました。
モンテッソーリについても何冊か本を読んだだけなので、浅くしか理解していないのですが、理論は非常に幼児を理解する上で参考になりました。しかし、教具的な物は実際に手にとっていないので、憶測的ではありますが、直感型の子どもにとっては合わないように感じました。
教具の正しい扱い方をしない、最後までやり終えない様子が目に浮かぶようです。
その辺りは、やはりシュタイナーの考えの方が、自由度があっていいように感じました。
シュタイナー教育の本で読みやすい、理解しやすい本があれば紹介してください。
すごいです! (ぱぐぱぐ)
2011-06-05 23:42:54
私も密かにこのシリーズの続きを楽しみにしていました!

モンテッソーリ教育についてはちょっと一生懸命勉強して自分なりに分かっている部分が多くなってきたところです。素晴らしい教育だと思いながらもほんの少しだけ心の中に不協和音があるような感じがずっとあってモヤモヤしていたのですが、その答えがここにありました☆ありがとうございます。

シュタイナー教育はなかなか理解するのが難しいのですが、私の中では子ども達は善に囲まれた理想のおとぎ話の中を生きているようなイメージがあります。現実を生きるモンテッソーリ教育と融合させるのは難しいのでは…思っていたのですが奈緒美先生には理想の形がはっきりと見えていらっしゃるんでしょうね。

モンテッソーリ、シュタイナーに限らず多くの教育法を読んでいらっしゃるのにそれに振り回されることなく、ご自分の中に良い形で落とし込んで、それを分かりやすい文章にまでしてしまう奈緒美先生はやっぱりすごいです!
わかりやすいです (あさひ)
2011-06-06 12:21:47
奈緒美先生の ブログの記事は私の日々のモヤモヤっとしたこと、子育て感を整理する手助けになっています。

モンテに関しては、まだまだ勉強不足だとは思いますがそれなりに学びました。けれども、自分の子が直感型だったということから徐々に モンテの考えだけでは子育ては・・と思うようになりました。
モンテを学んだ人はシャタイナーを真逆だと捕らえる方が多いです。しかし、最終的に目指す子供の心の育ちには 似た者があるのだと漠然と思っていました。

私もシュタイナーをもう少し読んでみようと思います。
合わせて木村 順さんの本も今読んでいるところです。
Unknown (nona)
2011-06-06 15:27:38
お忙しい中、こんなに早くリクエストに応じていただいて、本当にありがとうございました。
私が娘の学校にシュタイナーを選んだのはまさに、その空間作りのすばらしさからでした。教室にはいっただけで、温かみが感じられ、とてもすばらしいものでした。
シュタイナーの人智学などは実はまったく勉強してないので、わからないのですが、このような環境や先生の中で、自然の中で幼児期をすごせるのはやはりすばらしいことだとおもっています。 ただそれが小学校教育になると、、私も少し時代遅れというか、現代的な要素が少なく、”シュタイナー式”に固執してるような気もしないでもないのです。人智学まででてくると少し宗教的でこわい気もしますし。。
私の場合モンテとシュタイナーを比べているわけではありません。(モンテはすばらしいとおもっていますし、勉強して家庭でとりいれようと試みてもいます。)先生がおっしゃるように、シュタイナー的環境づくりの中で、モンテの思考をとりいれるのが一番すばらしいような気もします。
ただ、7歳から12歳という年代でまったく時間的余裕がなくなるであろう、公立校+日本語補習校というコンビネーションをとってしまうことで、自由に学べる、自分で発見する可能性をうばってしまわないか、が心配で仕方がないのです。幼児には自分で自由に使える時間が重要だとおもいますが、小学校にはいってもやはりこういう想像することのできる時間というのは、幼児期と同じくらい大切なのでしょうか?
7歳から12歳の小学生時代に大切なこと、大切な学び方というのはどういうものなのか、また教えていただけるとうれしいです。もちろん一概にいえるようなことではないのはわかっていますが。

シュタイナーの幼児教育に関する本はたくさんありますが、第二の時代というか、小学生時代に関する本などはありますか? もしご存知であれば教えていただけるととてもうれしいです。
お忙しい中、本当にどうもありがとうございました。
Unknown ()
2011-06-06 21:42:21
こんにちは!とても共感する内容の記事でした。

私は今、自分で教室を始めようと準備をしています。理想は虹色教室なので、奈緒美先生に弟子入りしたいくらいですが、弟子はとっていないでしょうから、工作イベントなどで勉強させてもらっています。

モンテッソーリは通信教育で学びました。シュタイナーは独学というか読書&セミナー(?)にて研究しました。どちらも子ども目線の素晴らしい教育者ですが、それを実践する人が無批判に盲目的に取り入れることには違和感を覚えていました。現代の子どもたちの現状と照らし合わせて疑問を投げかけても、シュタイナーが、モンテッソーリが、そうい言っているのだからそうなのだ、という返答をされる方もいらしゃいます。私は奈緒美先生がおっしゃるように、どちらにも良い点があり、両方のいいところを取り入れるのは可能だ、というか、いい点を踏まえて、各自が試行錯誤することが大切だと思うのですが、たいがい否定されました。両方のいいとこどりみたいな考えはよくない、どちらかに決めてそれを信じろ、というのです。

子どもに生きる力、考える力をつける教育を目指す大人が、そういう態度でいいのか?との疑問9割。でも残りの1割くらいは、自分が間違っているのか?かえって子どもたちに良くないのか?と悩みの種でもありました。今日の記事を読んで、尊敬する奈緒美先生が同じようなことを感じられているのを知り、とても気持ちが楽になりました。ありがとうございました。
Unknown (かろーら)
2012-10-16 09:30:39
教育学者さんの本で、シュタイナー教育はオカルト宗教という記述があったのですが、本当でしょうか?
かろーら様 (奈緒美)
2012-10-16 09:37:48
シュタイナーの考えを現在にそのまま持ってくるとそう言えるかもしれないし、
当時のシュタイナーの言葉を盲信し、ゆがんだ理解をすればオカルトチックと言えるかもしれません。
今、シュタイナー教育を取り入れるとしたら、現代わかっている知識を使って、
何を取り入れ、どのように解釈するのかが、とても大事だと思います。
Unknown (かろーら)
2012-10-16 09:56:19
解答ありがとうございました。
先生のブログでもご紹介されていたと思うのですが、
中山 治先生の本です。

「基本世の中、不条理なことばかり(実存主義?全く知識がありませんが。)、中庸、バランスを取り、個を見つめて、適切な取捨選択をする。」

というような要旨なんですが、奈緒美先生と共通するなあと勝手に思っていますが、素人が実践するのは容易ではありません。

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