母 「仕事の面で、最先端に向かっているという一本道以外に、
もっと全体的な見方でそれを捉えるって、
たとえば、どんなことが挙げられるの?」
息子 「ぼくは、将来、仕事と遊びを分けて考えたくないというか、
遊びというより、生きている感じといった方が正確かな……
どんな短い一時間でも、仕事をしている間、生きている実感を全く感じないで
働くなんて嫌だと思っているよ。
ぼくたちの世代は、ゆとりゆとりって、ずいぶんひどい言われようだけどさ、
確かに他の世代の人たちとは価値観がずいぶん異なるかもしれないけど、
必ずしも悪い面ばかりじゃないと思っているんだ。
クオリティ・オブ・ライフって言葉をキーワードに
人生の内容や質を模索していくことがマンガ世界で描かれていて、
同年代の間で共感を呼んでるよ。
確かに裏を返せば、世間知らず、何もできないくせに大きな夢ばかり見ているって
ことになるんだろうけど、
自己実現の欲求の全てを、最初からどの段階もだいたい充足された状態だからって理由で、
本当の意味でのクトリティ・オブ・ライフを自分の人生で実現したい、
命の質について真剣に考えながら生きていきたいと思っている仲間は多いよ」
母 「そう、☆(娘)や★(息子)や事務Kちゃんや●ちゃんたち
(以前の勉強を見ていた女の子たち)としゃべっていると、
真剣に生きることについて考えるもんね。お母さんの若い頃なんて、
新人類、新人類ってバカにされているわりに、どこでも若いってだけで
引っぱりだこでちやほやされていたから、そりゃ気楽に人生を捉えていたものよ。
今の時代も、フワフワと暮らしている子もたくさんいるんでしょうけど、
一生懸命、考えている子たちもけっこういるよね」
息子 「話が変わるけど、ぼくは受験勉強始めるまで、ずっと、どうして古文なんて勉強するんだろうって
思っていたんだけど、ほんと無駄だって考えてたわけだけどさ……
受験で仕方なく勉強していると、昔の日本人が大事にしていた『趣』ってのを
面白いなって感じるようになって、
現代の人々の心が何を失っているのか知る意味で、古文なんて古臭い文章を勉強する
価値があるんだな~なんて考えたんだ」
母 「趣?」
息子 「そう。そう思うとさ、今のぼくらの世代は頼りないとか、がんばりが足りないとか、
女々しい性質のように思われているけど、
ある面、古典の時代にあった日本人の心のようなものを取り戻しつつあるとも
いえる気がしてさ。
欲望のままにお金を求めて猛進するように生きていた時代から、
もっと情緒的なものを求めて、古文にある趣のようなものを漂わせて
暮らしはじめているというかさ」