脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

 『庭にお願い』 (倉地久美夫) を聴く。

2014年10月19日 00時29分20秒 | 読書・鑑賞雑感
「菊地成孔や岸野雄一、石橋英子らが絶賛する福岡発の異能シンガー・
ソングライター」こと、倉地久美夫のことが前から気になっていた。
図書館で『庭にお願い』という、彼のライヴ音源を収録したCDを借り、
倉地の世界に初めて触れてみた。

どこかの淋しい吹きっ晒しの、野原だかでギターが琵琶のように鳴り響
いているような音楽だった。ギター弾き語りというスタイルのせいか、
何処か60年代っぽい匂いもするが、彼のギター・フレーズは素晴らしい。
ギターを弾くというより、独自の音響を醸し出す道具かのようだ。

『庭にお願い』のCDジャケットに拠れば、倉地久美夫は、1964年
の福岡生まれ。「83年に上京し、混声合唱団や身体パフォーマンスのイ
ベント、映像・ダンスとのセッションなどに参加」「2002年に第2
回「詩のボクシング」全国大会で優勝。2011年、冨永昌敬監督によ
るドキュメンタリー映画『庭にお願い』が公開される」とある。

倉地久美夫の風貌は、頭の禿げ上がった50歳の中年である。この外見
と先入感から、元・アングラ劇団だかの役者さんが、多芸でギターを弾
くのかとか思ってたが、ちょっと当たっていた。

「詩のボクシング」で優勝経験があるなら、言葉は巧みで即興が上手い
のだろうが、彼の歌う詩はシュール過ぎて意味不明というか、どう掴ん
だら良いのか分からない。かつての文芸運動だったシュールレアリスム
の詩に作りが似てもいるが、モチーフや感性・時代背景等、全然異なる。


「あなたの風がいつも
 悪文から熱帯夜
 突然からいつも
 君と僕の熱帯夜
 悪文ならいつも
 真っ先に真っ削除
  すきっ腹で朗報朗報今待ってるよ

 (中略)

 あなたの風がいつも
 悪文からワンメーターだし
 あなたの風に吹かれ
 君も僕も熱帯夜
  すきっ腹で朗報朗報今待ってるよ
  すきっ腹で朗報朗報今待ってるよ」

 (倉地久美夫「あなたの風」『庭にお願い』所収)

「あなたの風がいつも 悪文からワンメーターだし」と、やや駄洒落た
言葉遊びを飄々とする先、表現は何を目指し、何処に行き着くのか? 
私は勿論あなたも知らない。これは、行き先の無い歌なのだ。だからと
言って絶望もなく、ただ風の間に間に、存在だけが発現される、そんな
位相のアートのような気がする。

では最後に私も、初乗り運賃も払わずに、倉地のCDをタダで聴かせて
くれたこの度の公立図書館に、心からのシャイを表する次第である。

(事務連絡:倉地氏の新作CD『いいえ、とんでもございません』が今年
      出ている。興味ある方は、悪文からワンメーターで、買って
      あげよう! 私はフリーライダーだから図書館で借りるけど‥。 




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