ポチャン … 。小石の波紋に 蓮の花が笑う 鳥は枝で眠っている 魚は住まない 純粋な水の肉体と 遊水のロンド 注:ロンドとは、輪舞曲(Rondo)のこと。
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原始、それは純粋な有であった。
幼年の日々、太陽の色鉛筆は、
それの頬に朱色の署名をした。
私はかの星の養子となった。
私は灼けつく陽射しを心から愛した。
生後十年、大脳扁桃核に
未知のつむじ風が見舞った。
さらに心に除草剤が撒かれた。
震源地は親の血脈である
或いは、雨の降らない鉄砂の町である
鎖錠された心身、封印された声々、
騒景たる世界に拘禁され、
吹き晒された繊細さ…
背骨の折れ . . . 本文を読む
昔、「午前4時25,6分前」という、私の好きな曲があった。
Chicagoというブラス・ロックバンドのヒット曲の原題で、
邦題は「長い夜」だった。
今朝の目覚めが丁度そんな時刻だった。
昨晩寝たのが午前零時を廻っていたから、三時間半も寝ていない。
それなのに、すっきりと目が覚めてしまうのだから不思議だ。
外は真っ暗、曇り空に雨が残っている。
部屋では時計の秒針の音が耳に響く。
いっそのこと、早 . . . 本文を読む
統合失調症の患者は、しばしば「テレビが私を見ている」と、転倒した感覚を訴える。
私自身には、同じ感覚に陥った体験はないが、
私は、この感性は真実の一端を衝いていると思えるのである。
テレビとは、それを観ている側を領有しようと迫る装置である。
我々を、他有化してくる眼差しなのである。
人は、テレビとして切り取られ編集された、
映像情報に刺激や影響を受け、その世界に取り込まれる。
テレビはべき客体 . . . 本文を読む
梅雨空の雫に打たれて あぁ、旧い家が建っている 霧の中に腰を屈めながら 年寄りのように立っている それは、亡くなった祖父母も、父も母も、私もきょうだいたちも 共に暮らした古い家だ 雨音の中に佇む朽ちた家 畳は擦り切れ、雨漏りがしたっけ ネズミが出るので、ネコを飼っていた 柱時計のネジを手で巻いたっけ 六月の雨に浮かぶ … 遠い、遠い家
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夢の中で私は書道をしていた。
描きたい一文字が浮かばない。
考え込んでいたら、目が覚めた。
午前三時過ぎだった。
外は暗く、ひんやりしている。
風はない。
しばらくすると、雨が降り始めた。
まるで梅雨空が独り言を語るように、
雨音はしめやかだ。
六月という季節の雨らしい。
私は椅子に胡座をかいて座り、
欠伸をしながら机に向かっている。
デスクライトの白い光の下で、
紙切れに文字を紡いでいる。
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