ま葛(くず)延(は)ふ 夏野の繁く かく恋ひば
まこと我が命 常ならめやも
=巻10-1985 作者未詳=
夏の野に葛(くず)が這い繁っているように、こんなにも恋していたら、本当に私の命は長くはないことでしょう。という意味。
葛が這い繁るという長くつらい片思いの歌だろうか。。古代人の恋への激しさと耐え忍ぶ強さは現代にはないものを感じる。
クズは、マメ科クズ属。山野のいたるところに見られる大形のつる状草本で、茎の基部は木質となる。
秋の七草の一つとされているが、夏は数十メートルにも蔓が延びて生茂るものもあるほど、生命力が強いもの。
根は太く大きく、多量のでんぷんを含んでおり、葛粉が取れる。花は紅紫色で、花期は7~9月。和名は大和の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。
根が食用(葛切り)や薬用(葛根湯(カッコントウ)や葛湯)になる。古代でも、『延喜式』には、都へ貢進するべき品物として葛根・葛花があげられている。
『万葉集』に詠まれた「くず」は十八首もある。