鶏が鳴く 東の国に 高山は さはにあれども
二神の 貴き山の 並み立ちの 見が欲しき山と
神代より 人の言ひ継ぎ 国見する 筑波の山を
冬ごもり 時じき時と 見ずて行かば まして恋しみ
雪消する 山道すらを なづみぞ我が来る
=巻03-0382 丹比真人国人=
鶏が鳴く東の国に高い山はたくさんあるが、二神の貴い山の並び立っている姿を、いつも見ていたい山と、神代の昔から人が言い伝えて、国見をする筑波の山を、冬ごもりで今登るべきでない時といって登らず見ないで行けば、益々恋しく思うだろう。雪どけする山道さえ苦労して、私はこうして登って来た。
この歌は、”筑波の岳に登りて”の長歌で、対する反歌は、
筑波嶺(つくばね)を 外のみ見つつ ありかねて
雪消(ゆきげ)の道を なづみ来(け)るかも
=巻03-0383 丹比真人国人=
である。→万葉アルバム
筑波山神社は筑波山を神体山と仰ぎ、西峰に筑波山大神(イザナギノミコト)を、東峰に筑波山女大神(イザナミノミコト)を祀る。神武天皇元年には、両山頂にご本殿が建立されたといわれる古代山岳信仰の形を今にとどめる関東屈指の名社。
この歌碑は筑波山神社の境内に並ぶ万葉歌碑4基のうちのひとつである。