日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

残業問題を想う

2017年01月07日 11時02分37秒 | 日々雑感
 厚生労働省は昨年12月26日、違法な長時間労働を社員にさせていた企業の社名を公表する対象を広げる緊急対策をまとめた。また、28日には電通の石井社長が労働法違反の疑いで東京地検に書類送検され、辞任に追い込まれた。 

 このような動きは、昨年10月、 電通社員だった高橋まつりさんがが過労自殺した事件が大きな契機であろう。過労自殺は珍しいことではないが、安倍政権が ”一億総活躍社会” を目玉に掲げていることから、政権からの圧力があった結果と思われるが、電通が日本有数の広告企業であり、高橋まつりさんが東大出の美人女性であったことが、世間の目を引き話題となったことも大きな要因であろう。

 厚労省の発表によると、2015年度に月80時間以上の残業をして過労死・過労自殺と認定された人は151人。月100時間超えの違法な長時間労働による是正勧告は約500件であったそうだ。この統計の対象となった企業の規模は不明であるが、全企業からすれば氷山の一角のような気がする。

 厚労省は、2015年5月以降、大企業を対象に月100時間超えの違法残業が1年間に3事業所で見つかった場合に公表するとしたが、実績は一件のみであり、効果があったとは到底言えない。今回は、月80時間を超える違法な時間外労働によって、社員が過労死や過労自殺した大企業について、公表できるように基準を見直すこととしたそうだが、焼け石に水とはこのことだろう。

 違法残業を100時間から80時間に厳格化したところでどれくらいの効果が期待できるであろうか。昨年1月には靴の販売店 ”ABCマート”が、10月には ”ドンキホーテ”が、長時間労働に関する罪で略式起訴されたが、いづれも罰金50万円が課されたのみで、役員は不起訴となったそうだ。これらの企業にとって50万円程度は、誰かの長時間労働ですぐに取り戻せる。

 違法残業とは、一つは賃金が支払われないサービス残業のことであろう。それにしても日本人は労働時間がかくも多いのであろうか。日本の労働生産性の低さに原因を求める声がある。労働生産性は国民1人当たりの国内総生産(GDP)、すなわちGDP/人口によって算出されるが、これによれば2015年は35カ国中18位だったことを根拠にしている。一位のルクセンブルグは金融主体の国であり、そもそもこのような国と比較すること自体に違和感を感ずる。また、GDPも国の公共投資等を含めることからも、このような比較に意味があるかの疑問を生じさせる。

 米国は5位であったが、米国をはじめとする主要国との生産性格差を縮めるには、業務の効率化は問題なく必要であろう。この点未だパソコンを使いこなせない人間が多いからだと指摘する声もあるが、最近の若者のデジタル機器の扱いは見事であり、時間が解決するだろう。

 この他、新しいサービスや製品を生み出して付加価値を獲得することが生産性を高めるという指摘もあるが、日本には農耕民族の習性が残り、それが欠点として現れる。すなわち、農耕民族は皆が一致協力する必要があるり、”和をもって貴しとなす”は、日本人の根本思想だ。ここにおいては、他人と違ったことをするのはタブーであり、残業にしても誰か一人残業をしておれば、必要もないのに残業する傾向があるのだ。また、”おもてなし”は、お客さんに対する心使いであり、ある意味時間の浪費であるが、残して欲しい日本人の特性である。

 最近、日本は人手不足と騒がれている。人手不足であればよりよい労働環境を求めて転職すればよいと考えるが、人手不足なため個人にしわ寄せが行き長時間労働になるのだそうだ。少なくとも残業分にはそれに見合った賃金を支払わなくてはならないとの対策が必要だ。管理者は、残業させても経費が発生しないことに胡坐をかいているのだ。残業にも必ず経費が発生するとなれば、管理者は自ずから残業の削減を考える筈だ。

 ところで、条件が揃えば残業代を払わなくてもよいとの法律が成立している筈だ。2015年1月、年収1075万円以上で高い職業能力を持つ人を対象に、労働時間と賃金を切り離し、「残業代ゼロ」とする新しい制度を盛り込んだ報告書の骨子案を厚労省はまとめた。この制度は、経営者側には経費削減となるため大歓迎であろう。一方労働者側にも手当てがなくなれば、時間外労働を少なくしようと効率よく仕事をするようになる利点があるとの説明であったが、この説明は日本人には適用できそうにない。2017.01.07(犬賀 大好-301)

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