ぽれぽれ百綴り

犬好きおばさんのんびり雑記。

おうちへGO!その2

2011-06-12 00:40:20 | Singapore/外出&食い意地
今日のお話は昨日の続きです。
最初からご覧になる方はこちらからをどうぞ。
 
貫禄ある眼光鋭いインド系、三國氏に話しかけられ、どきどきしながら私は答えました。
「駅までです」
鼻をくんくんさせましたが、ドリアンパフは臭いってほどにはにおってないような。
でも私はドリアン好きだから、においにも寛容なのかもしれません。
 
三國氏、「駅ってどこの?」
心なしか表情がゆがんでいるようです。
私、「スイマセン。におうんでしょうか?どこの駅でもいいので、着いたらすぐ降りますから」
三國氏、「どこの駅でもいいってことはないだろう。どこまで行くんだね?」
怒っているのでしょうか。
大きな声にすくみあがります。
こんな炎天下の知らない土地で、すぐ降りろ、とかなったらどうしましょう。
それだけはやめて。
非はドリアン臭を漂わせている私にあるので、できる限り下手に答えることを心がけます。
ですが、緊張感にびびりんぼうがプラスされて、アワワワ英語にむなしく拍車がかかっただけでした。
私、「い、家の最寄はチャ、チャイニーズガーデンという駅ですが、と、と、と、とりあえず、ど、どこでもいいので駅に着けば、あとは電車で移動しますから」

老人気質のせっかちさか、私の話の後半を聞かずして、三國氏が声を大にして言いました。
 「アンタ、チャイニーズガーデンなんて、そんな駅に行かないよ、このバスは!」 

ええ、それは、わかっています。
わかっていますとも。
だから怒鳴らないで。
私の最寄駅はどちらかというとシンガポールの西の郊外で、ここらは東の郊外。
どちらも郊外だから、ふたつの駅を結ぶバスが都合よくあるわけがない。
でもとにかく、どこでもいいから駅に着けばいいの。
暑くて待ってられなかったの。
ある意味、端と端だから、間を西に走るバスは必ず家に近づくわけで。
ええい、冷静になれ、私。
さらさら英語が出てこないのがはがゆい。
まさか、こんなところで、降ろされるのか、私?
少ないとはいえ車内の乗客みんなの視線を集め、一層、緊張感が増します。
 
窮地に立たされた私が、どう言えばわかるのか、と頭を抱えている間に、三國氏が騒ぎ始めました。
この方、いちいち声が大きいと思ったら、補聴器をつけていらっしゃいました。
 
「だれか~、チャイニーズガーデンのほうに行くひとはいないか~!?」
 
え?
ここで降ろされるなら、行き先の同じ人を募ったりしないはず。
なんだか予想しない展開に。
そして、さらに注目を集める私たち。
そうすると、ご高齢の小林稔侍といった感じの中国系のご老人が答えました。
「そこまで行かないけれど、(手前の)ジュロンに行くよ」
小林氏は座席を移動して三國氏の通路を挟んで向かいに座りました。
「チャイニーズガーデンがどうしたって?」
三國氏と小林氏の会話に耳をすませます。
 
え?
ちょっと待って。
hard to go by herself
、とかそんなフレーズが聞こえたような。
問題は私も持っているドリアンパフじゃないの?
私自身なの?
 
このひと、ひとりで行くのが難しいみたいなんだ。連れてやってくれないか
  
どうもそんなふうに、三國氏が小林氏に依頼している模様。
ちょ、ちょっと、なんで勝手にそんな話に。
私、英語は弱いし、バス路線図にも弱いけれど、
ひとりで帰れないほどアレが弱いわけではないのですが?
私があたふたしながらもなすすべがないままでいると、老人ふたりの会話はどんどん進んでいきます。
「ああ、なら○○で降りるから、そこから手前の駅まで一緒に電車に乗って、次に降りるように教えてあげよう」と。
ええ~?
駅にさえ着けば、それがどこの駅でも路線図を持っているから、ひとりで大丈夫なんですけど。
注目を集めていた私たちに車内の緊張感は高まっていましたが、
小林さんが私を引き受ける展開になりそうだとわかったのか、一挙に安堵感が漂います。
車内にはもとののどかさが戻ってきました。
まわりの注目から開放されたのはうれしいけれど、保護者つきの移動ははっきり言ってありがた迷惑。
どうしよう、と困り顔の私を見て、後ろの方に座っていた大学生風の若いお嬢さんが、クスクス笑っています。
私と目が合うと、「大変ね」と言った風にニヤリと笑いました。
彼女には、私が言葉は不自由でもアレはそれほど不自由ではないとわかるみたいで、
私の意図することもわかっているみたいなんですが、
親切すぎる老人たちは、私のことを盲目的にアレが不自由な可哀想なひとと決めてかかってるみたいで。
彼らの正義感に燃えるマナコには、もう可哀想な私しかうつっていないのです。
も~、笑ってないで説明し~て~く~れ~。
 
「あの、駅に着いたら、路線図、持っているし、家はチャイニーズガーデン駅のすぐ近くなので大丈夫です」
と、私が精一杯冷静になって、一所懸命説明するも、
「うんうん。駅の名前はわかっているんだね。それはよいことだ」と、ふたりの老人は取り合ってくれず。
保護者不要をあんまり強く主張して、意気投合した彼らの親切をむげにするのも心苦しい。
結局、彼らの采配に任せて、無駄な抵抗はやめることにしました。
なんでこうなっちゃったのかな。
落ち込む私をよそに、三國氏&小林氏は、
「いいことをしたよね!」という英雄のような誇らしげな表情で、
私の話題で盛り上がり、その後は世間話に花を咲かせているようでした。
乗ることほぼ半時間、車窓には知っている風景。
いくつもの知っている駅を通り過ぎます。
それをむなしく眺める私。
小脇には私に無実の罪を着せられかけたドリアンパフ。
ああ、降りたい。
後方に座っていたお嬢さんは私の表情が見える前方に席を移動して、
おかしくてたまらないといった様子でまだ笑っています。
ち~く~しょ~。
 
ということで、私はバスを降りるまで三國氏の保護下におかれ、
小林氏が降りるというバス停にさしかかる前に「よろしく頼むぞ」というような言葉とともに、彼に引き渡されました。
私が小林氏についてバスを後にする際には、
主婦らしき方とおばあさんのあたたかくも間延びした拍手まで
や~め~て~。
降りたところは都心の知っている風景だったし、駅の案内板があったので、後はホントにひとりで行けるんだけどなあ。
とりあえず、親切心あふれる三國氏にお別れとお礼の会釈くらいはしておこう、とバスの窓を見上げると、
くだんのお嬢さんがまたニヤリ。
き~っ。
最後まで面白がりやがって!   
 
小林氏に引き渡されたアレが不自由な可哀想な私の旅は、もう少し続くのでした。
 
  【激ウマラクサのお店が入っていたフードコート】


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2 コメント

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申し訳ないのですが… (エリツィン)
2011-06-12 01:26:54
まさかの展開、超~面白かったです!
早く続きが読みたい~U+2661
…と、バスのお姉さんのようにmomoさんの窮地を
楽しんでしまってゴメンなさい(^_^;)
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エリツィンさんったら (momo@ぽれもも)
2011-06-12 01:51:55
夜更かし禁止ですよ!
美人は夜、作られるそうですよ。
関係ない私はへっちゃられすが、
エリツィンさんはきちんと守らないと。

日本でも電車内で落ち着きなくきゃっきゃと騒ぐアレな方を見かけては
勝手に気の毒に思ったことがあるのですが、
まさか自分がそう思われる日が来ようとは。
しかも異国で。
挙動不審と不自由な英語が原因だったのでしょう。
情けなや。
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