mitumine 夢幻庵日記

夢うつつで過ごしている日々、趣味の絵・旅行・写真・ハイキング・読書などを写真を交えて気ままに記しています。

9月に読んだ本 文藝春秋社版現代日本文学館 16から 2編 1 谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」 2「痴人の愛」ほか1冊 「戦争というもの」半藤一利 PHP研究所

2021-09-24 04:11:08 | 
 谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」
 マゾヒストで既に喜寿をも過ぎた老人が、同居の小悪魔的な長男の嫁颯子(元ダンサーで小一の子どもがいる)との間での密かな楽しみの物語。
 家族には吝嗇だが、ヒルマン(乗用車)、ねだられて300万円の猫目石や庭にプールなどをつくってやっている。

 京都へ、看護婦付きで颯子と3人で自分たち(奥さん-婆さんと呼んでいる)の墓探しに行き、法然院が気に入って決める。

 その後、ホテルでの楽しみは、終日颯ちゃんの足形の拓本取り。
 「ソンナモノガ何ニナルノ」
 「ソノ拓本ニモトヅイテ、颯チャンノ足ノ佛足石ヲ作ル。僕ガ死ンダラ骨ヲソノ石ノ下ニ埋メテ貰ウ、コレガホントノ大往生ダ」(114頁)

 因みに「瘋癲」とは、と思い辞書(新明解国語辞典-三省堂)で調べると、(一)錯乱や感情の激発などのはなはだしい精神病(の人)。 とあった


↑ 朝井閑右衛門 挿画
 アーント口ヲ開ケサセテ、余ノ口ノ中ヘ唾液ヲ一滴ポタリト垂ラシコンデクレタヾヶ。

 谷崎潤一郎「痴人の愛」
  時代は1920年代(大正時代)、サラリーマン(電気技師)河合譲治は28歳のとき、浅草のカフェで15歳のナオミを見初めて親の了解のもと引き取り、大森の貸家(洋館)で暮らす。学問をさせ礼儀作法を身につけた暁には妻にという遠大な計画。

 英会話とピアノの練習に行かせるが挫折。その後、籍を入れたものの男達との遊蕩三昧のことを知人から知らされ家を追い出すも、ナオミのことを忘れかね探し出してよりを戻すが、その頃から彼女の奴隷状態に陥り、無理難題も唯々諾々と従うようになってしまう。

 女の身体に溺れた不甲斐ない男の物語で、読後感は悪い。もっと云えば、彼の生き方はばかばかしくもある。

← 田中 良 挿画  



 半藤一利「戦争というもの」


 東京新聞8月31日夕刊(上記右 同新聞から転載)の記事に惹かれ読んだもの。

 氏は今年1月に亡くなられた。本書は編集者でもあるお孫さんに入院中に企画書(写真左下枠内)を渡し発刊(2021年5月25日第一刷)に至ったもの。巻末の「解説」はエッセイストでもある奥様の半藤未利子氏が、氏の人柄や戦争体験について語っている。

 「編集後記」北村敦子氏によると、祖父が最後に私に手渡してくれた平和への願いそのものでした、とある。
企画書にある30項目のうち14項目が本書に掲載されている。後の項目は退院後にと思われていたのかも知れない。それを思うととても残念。

 「一に平和を守らんがためである(山本五十六)」から中程には「ほしがりません勝つまでは(国民学校5年生の女子)」最後の項目は「予の判断は外れたり(河辺虎四郎)」として、関係者の言葉が見出しに使われて、戦争の不合理、残虐・悲惨さに、平和の尊さを説いている。
 是非、多くの人に読んで貰いたいと思う。




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