役者は揃った。舞台は整った。
ほっこりプロレス主催の
シングルマッチトーナメント戦
ほこワングランプリ2014も
いよいよ決勝戦を残すのみとなった。
決勝戦の対戦カードは
ダレル・ラルストン vs マーブル。
そこにほっこりプロレスの
所属選手や常連選手は1人もいない。
この顔合わせを誰が予想できただろうか?
弟と妹のプロモーションが目的と語り
自身のことについてなど
まったく考えていなかったダレル。
そんなダレルが決勝戦まで進出できたのは
この大会で出会った男たちの
おかげなのかもしれない。
1回戦の対戦相手、進藤 歩は
レフェリーがダウンしている間に
卑劣な手段を取ることもできただろう。
しかし、彼はそれをよしとしなかった。
「アイツにはこの大会で
勝ちたい理由があったはずだ。
それなのにアイツは非情になりきれなかった。
『なんて甘い奴だ』と思ったよ。
だが、今のオレなら・・・」
2回戦の対戦相手、ヤスオは
歴戦の代償として首に爆弾を抱えていた。
それでも勝利という栄光の為
捨て身の覚悟で特攻した。
「勝つ為の方法なんていくらでもある。
あれがベストな方法だとは思えなかったし
そこまでして何を手にしたいのか
あのときはまるで理解できなかった。
だが、今は・・・」
準決勝の対戦相手、ザ・ミックは
自分の想像を遥かに超えた強者だった。
何をやってもまったく歯が立たない。
かつてないほどの絶望感を味わうと同時に
ダレルは自分の心の中に
熱い何かが生まれてくるのを感じていた。
「いい歳したオッサンが言うことじゃないが
これが『滾る』という感情なんだろう。
それはオレが久しく忘れていた感覚だった。
今のオレは・・・オレ自身、嫌いじゃない」
「弟の姿が見えたとき?
『邪魔するんじゃねえ』って思ったね。
弟のPRに来たはずのこのオレがだぜ?
笑えるだろう?」
ダレルはそう言うと、少し笑った。
「準決勝は・・・内容では完敗だったな。
少しだけ、オレに運があったってだけの話。
決勝では、完璧に勝ちたいね。
弟たちには悪いんだが
今回は自分の為に戦わせてもらう」
ダレル・ラルストンは今、滾っている。
その信念に、揺らぎはない。
醜悪な容姿。
それが彼が心を閉ざす元凶だった。
ファイティング・ペインター、マーブルは
自分の心にもペイントを施し
自らを偽り続けてきた。
206cm、210kgの恵まれた体格。
それは天性のものだ。
望めば手に入るものではない。
プロレスラーとして戦い続ける上でも
それは大きなアドバンテージとなり得る。
彼はすべてを持っていた。
いや、足りないものがあるとするならば
それはおそらく・・・。
彼は踊る。
満面の笑みで踊るその姿に
観客は安らぎを得て、笑顔になる。
彼はようやく自分のあり方を見つけた。
醜いと忌み嫌われたその姿で
人々を幸福へと導くことができる。
そして彼は、勝つことをやめた。
戦うことを放棄した。
美しいものが憎いわけではなかった。
花は好きだし、星を見ることもある。
だが、彼が唯一持たざるものを持っている。
ただそれだけで、すべての観衆が
彼女を応援しているかのように思えた。
彼女の攻撃が彼の顔を直撃したとき
彼は自分を抑えきれなくなっていた。
悪意かどうかはわからない。
それもまた、別の「信念」の
結果に過ぎないのかもしれない。
しかし、彼はその素顔を
満員の観客が見守る前で晒すことになる。
彼は、これまで積み上げてきたものが
音を立てて崩れていくのを聞いた。
次の瞬間、彼は・・・。
マーブルは今、迷いの中にある。
その信念は、ほんの些細なことで
きっとどちら側にも傾くだろう。
救いの光は・・・今はまだ見えない。
光を見つけた男と、光を失った男。
勝敗の行方は、はたして・・・。
to be continued...
★Mr.しもの中の人の裏話★
なんだかとんでもなく
大袈裟な書き方になってしまいましたが
これくらいしないと
正直、インパクトも弱いと思いますので
全力で煽ってみました。
そんなわけで、記事も裏話も長くなりますが
どうかお付き合いください。
今回、ほこワンをやるにあたって
私が一番挑戦してみたかったことが
トーナメントを通して
2人のヒーローを作り上げることでした。
これについては、以前も少し書きましたね。
プロレスに冷めていたダレル。
そもそも、進藤に対する
「なぜ反則をしないんだ」という気持ちと
ヤスオに対する
「なぜそこまでするんだ」という気持ちは
正反対のものなわけで。
こういう感情が同時に成り立つのって
つまりはプロレスそのものに対して
「どうしてそこまで熱くなれるんだ?」と
思っているからなんですよね。
2人のファイトを見て生まれた疑問と
ミックとの戦いを通じて芽生える熱い気持ち。
またもや矛盾に直面するわけですが
人間ってそんなにわかりやすく
白黒はっきりさせられるわけじゃない。
いいと思うんですよね、グレーで。
それぞれの信念を目の当たりにして
ダレルも少しずつ変化していきます。
正攻法ではミックに勝てなかったダレルですが
精神面はかなり充実しているはずですので
決勝戦では更にキャラ崩壊するくらい
暴れていただきましょう!
ちなみに
「兄弟の為じゃなく、自分の為に戦う」
というセリフ、書いてて恥ずかしくなりますが
こういう王道展開って
やっぱりテンションが上がります。
一方のマーブル。
とても悲しい物語を背負っていますが
きっと誰よりも優しい奴なんだと思います。
1回戦では、ビジュアルを気にする
シャレ・トン・シャア、
2回戦では、紅一点の美女、麗華と
対戦相手そのものも伏線となっていました。
複雑で大変な過程を経て
晴れてラスボス化してくれたわけですが
準決勝での無双描写に力を入れすぎて
どうやったらダレルが互角にやり合えるのか
まったく考えが及びませんでした。
ダレルに「真っ向勝負で勝つ」と
発言させてしまいましたし
うーん、どうしたものか・・・(笑)
これまたちなみに・・・ですが
ラスボスをイケメンにするという発想は
私の中ではまったくありませんでした。
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ご協力よろしくお願いします。
一試合目から全ての試合において
かなり綿密な計算をして作ってた事を
伺わせる記事で、読んでいて面白かったです
これはかなりの苦労があったことでしょう!
楽しみにしてます
それにしても、実際のプロレスでも
盛り上げるためにはやはりこういう
綿密なストーリー作りは重要でしょうから
作る立場の人の苦労は相当な・・・・
・・・おっと!!ゲホゲホ(笑)
仕掛け人としては
最後の大仕事という気持ちで
気合を入れて煽りました。
オリジナルストーリー展開は
やっていて面白い反面
毎日それなりの話題を提供するというのは
なかなか難しかったですね。
募集レスラーが出揃う前から
相当、ネタを考えておいたのですが
さすがにもうネタ切れです(笑)
あと1試合、どうぞお楽しみに!