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デフレの脱出策と日銀の説明責任

2010-10-05 | 日記
田中秀臣 『デフレ不況』 ( p.72 )

 一九九〇年代の日本においては、不況脱出のために大規模な財政出動が数度にわたって試みられました。しかしそれらの財政政策の効果は限定的なものに終わりました。
 その理由をバーナンキは「リカードの等価命題」によって説明しています。
 政府が赤字国債発行による財政政策を行うと、財政赤字を懸念する国民は、現在の支出増によって将来の増税を避けられないものと考える。そうなると、たとえ減税や補助金などによって名目所得が一時的に増えても、それを将来の増税に備えて貯蓄してしまい、現時点の消費に回さなくなる。
 これが「リカードの等価命題」です。
 いくら財政支出を増やしても、国民が財政への不安から貯蓄性向を高めてしまえば、乗数 (波及) 効果による総需要の底上げは限定されてしまい、経済全体としてはかえって消費が減って、総需要が落ちてしまう恐れさえあるのです。
 日本の場合、これまでの自民党政権も、現在の民主党政権も、支持率低下を恐れて増税を行わないまま、多額の財政支出を積み上げており、マスメディアによっても深刻な財政の危機が毎日のように伝えられています。
 そのような報道に日常的に接していれば、国民の多くが「将来の増税は避けられない」と考えるのが普通でしょう。仮に増税しなければ財源不足の深刻化とともに年金や医療の水準を現在より大きく切り下げざるを得ないでしょうし、それもしなければ財政が破綻してしまい、年金制度や医療制度は大混乱して、「頼れるのは自分の貯金だけ」という状況に国民が不安を抱いているのでしょう。
 バーナンキは、現在の日本はこうした状態に該当しており、日本国民の多くが財政の持続性を懸念し、将来への不安から貯蓄性向を高めているのではないか、と推察しているのです。
 そこで彼が考える解決策が、「将来の税負担と現在の財政拡大のつながりを絶つこと」です。これは別な表現を使えば、財政政策と金融政策の協調 (合わせ技) です。
 バーナンキはインフレ目標を設定されながら、政策金利操作など通常の、つまり伝統的方法でそれを達成できなかった場合に、「政府との協定を伴う中央銀行による長期国債の買い切り」という方法を推奨しています。
「日本銀行は政府が新規に発行する長期国債の買い入れ額を増やし、政府はそれによって得た貨幣発行益を財政支出と減税に充当すればいい」と言うのです。
 その前提として「日本銀行は『保有する長期国債の総額を日銀券の流通残高以下に抑える』という現行の自主ルールを放棄すべきである」と説きます。
 バーナンキは日本銀行による国債買い入れの際、インフレによるバランスシート (貸借対照表) の悪化を防止したい中央銀行が、インフレ率を上げたい政府と取引する形で、長期国債の買いオペ (市場操作) を行うことを提案しています。そこで用いられるのが「ボンド・コンバージョン (債券交換)」というインフレリスク軽減手法です。

(中略)

 ボンド・コンバージョンとは、一九三〇年代の大恐慌の際にアメリカで用いられた手法です。
 中央銀行がすでに購入した固定金利つきの国債の金利を、政府との協定によって固定金利から変動金利に変換し、インフレによる金利リスクを吸収することです。
 インフレが発生すれば、新規に発行する国債の表面金利は上昇することになります。すると、既発の低い利率の国債の価格がそれによって下落し、それを大量に保有している中央銀行のバランスシートを悪化させることになります。
 そこであらかじめ、そうなったときにも中央銀行のバランスシートが悪化しないよう、政府と中央銀行が協定を結んで懸念を取り除いた上で、中央銀行による国債の買い入れ額を増やしてもらうわけです。
 実際にインフレとなった場合、中央銀行が保有する国債の利子が変動することによって政府から中央銀行に支払う金利は増加することになりますが、同時にそれとほぼ同額だけ中央銀行から国庫への納付金を増加させ、政府と中央銀行のバランスシート内で損益の相殺を行うのです。
 このように、特定の目的のために政府と中央銀行との間で結ばれる協定のことを「アコード」といいます。もっともバーナンキは中央銀行のバランスシートの毀損自体がなぜそれほど大きい問題なのか、と疑問を呈していることも付け加えておきましょう。


 バーナンキによれば、日本で財政政策の効果が限定的だったことは、「リカードの等価命題」によって説明される。それでは日本はどうすればよいのか。バーナンキは、財政政策と金融政策の合わせ技を実施すべきである、と主張していると書かれています。



 まず、「リカードの等価命題」についてですが、「財政政策の効果は限定的なものに終わりました」と書かれていますので、多少は効果があったということでしょう。すなわち、この命題は「完全には成り立たない」とみてよいと思います (「公債の中立命題」「「公債の中立命題」 の成立条件」参照 ) 。

 「リカードの等価命題 (中立命題)」が完全には成り立たないにしろ、ある程度の相当性をもって妥当している以上、バーナンキの説くように、「将来の税負担と現在の財政拡大のつながりを絶つこと」、すなわち「財政政策と金融政策の協調 (合わせ技)」を行えばよい、と考えられます。

 具体的には「日本銀行は政府が新規に発行する長期国債の買い入れ額を増やし、政府はそれによって得た貨幣発行益を財政支出と減税に充当すればいい」というのですが、この主張は「バーナンキの背理法」が前提になっていると思います。つまり、中央銀行が国債を買い続けても困ったことは起こらない、という主張です。



 もっとも、中央銀行のバランスシートが毀損する、という問題があることはありますが、「政府の信認と中央銀行の信認」で述べたように、中央銀行のバランスシートのみが「きれい」であっても、なんにもならないと考えられます。私が個人的に考えただけでは説得力がないかもしれませんが、
もっともバーナンキは中央銀行のバランスシートの毀損自体がなぜそれほど大きい問題なのか、と疑問を呈していることも付け加えておきましょう。
と書かれているように、バーナンキも中央銀行のバランスシート毀損はそれほど問題視していないならば、この考えかたには説得力がある、と考えてよいと思われます。

 とはいえ、バーナンキは中央銀行の立場 (バランスシート) にも配慮した主張をしています。「ボンド・コンバージョン (債券交換)」です。このような方法があるなら、なおさら、日銀による国債買い入れ (信用緩和) には問題がないのではないかと思われます (「量的緩和と信用緩和」参照 ) 。



 なお、バーナンキは、上記政策を実行する前提として「日本銀行は『保有する長期国債の総額を日銀券の流通残高以下に抑える』という現行の自主ルールを放棄すべきである」と説いていると書かれています。法令による制限でないならば、日本銀行は政策変更とともに、自主ルールを変更する余地があるのであり、

   日本銀行が政策を変えれば、日本のデフレは終わる「かもしれない」

と考えられます。日本銀行が金融緩和を行わないならば、なぜ行わないのか、その説明が求められます。日銀には、説明責任が生じうると思われます。
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