小林良暢 『なぜ雇用格差はなくならないのか』 ( p.18 )
金融危機が勃発した九七年頃から、非正社員は増え続けてきたが、今回、非正社員の過剰が調整され始めている、と書かれています。
( 図表 1 - 1 はグラフであり、掲載するのは困難なので ) 上記引用文を表に整理しました。
著者は、「最近の『非正社員は解雇しやすいから、不況になると真っ先に切られてしまう』という見方が、必ずしも正しくないことがおわかりいただけるだろう。」 と書かれていますが、
私は、「非正社員は解雇しやすいから、不況になると真っ先に切られてしまう」 という見方が正しいのではないかと思います。すなわち、
と考えるべきではないか、と思います。
このパターンは、今回の不況にもあてはまると思います。すなわち、今回も、まっさきに非正規雇用が削減されたのであり、それが一段落した今、次に起こるのは、正規雇用の削減である、と予想されます ( 同時に、非正規雇用が増加に転じると予想されます ) 。
正規雇用の人々がこの流れを止めるには、非正規雇用の人々を 「味方につける」 必要があります。つまり連帯しなければならないと考えられます。
しかし、連帯する、ということは、正規雇用の人々が待遇の悪化を甘受して、非正規雇用の人々の待遇改善・雇用の増加に協力する、ということにほかなりません。「自分の待遇が悪化してもかまわない」 という人 ( 正社員 ) がどれほどいるか、を考えると、正社員の削減は阻止不可能だと思います。
もっとも、連帯したところで、
正規雇用の待遇悪化 + 非正規雇用の増加
となるにすぎず、
正規雇用の削減 + 非正規雇用の増加
と、どれほど違うのか、という疑問はあります。
なお、急速に景気が回復すれば話は別ですが、「デフレは終わらない」 と予想されますので、その可能性はほとんどないと思います。
この非正規リストラは、非正社員の急増と日本の雇用構造が変化した結果、起こったものである。図表1-1は、一九八五年から今日までの雇用形態別の労働者数の増減を、四つの時代に区分して示したものである。
四つの時代とは、労働者派遣法が施行された八五年から九〇年までのバブル期、九〇年から九五年までのバブル崩壊期、それから二〇〇〇年までの構造調整期、そして二〇〇〇年代の構造改革期である。
この四つの時代の特徴は、次のようなものである。まず、八〇年代後半のバブル期は、正社員が増えるとともに、パートタイマー全盛期の余韻を引きずって非正規雇用も増大した。次の九〇年代のバブル崩壊期には、パート・アルバイトの雇用は半減したが、正社員はバブル雇用の余勢を調整できず、逆にさらに増えた。この「過剰雇用」が不況長期化の最大の原因となった。それでも「一〇年不況」と言われ始め、金融危機が勃発した九七年頃からは、正社員の削減に手をつけ、同時にパート・派遣など非正社員へのシフトが始まった。二〇〇〇年代の構造改革期には、その傾向がさらに鮮明になり、正社員が減少する一方で、派遣・請負労働者や契約社員の急増が顕著になったのである。
ここで重要なことは、この間一貫して不況期でも非正社員が増えてきた、という事実である。最近の「非正社員は解雇しやすいから、不況になると真っ先に切られてしまう」という見方が、必ずしも正しくないことがおわかりいただけるだろう。
この二三年の間で、正社員数のピークは九七年の三八一二万人で、この時の非正規比率は二三・二%であった。この正社員の過剰雇用を調整したのが、〇一~〇二年にかけての大企業リストラである。失業率はピーク時の〇三年四月には五・五%まで上昇した。一方、二〇〇〇年から〇八年にかけては、派遣社員と契約社員が四〇〇万人、非正社員全体では五〇〇万人も増加したことになる。今度の大不況では、その非正社員の過剰の調整が始まっている。これが今回の非正規リストラの正体なのである。
金融危機が勃発した九七年頃から、非正社員は増え続けてきたが、今回、非正社員の過剰が調整され始めている、と書かれています。
正規雇用 | 非正規雇用 | ||
( 正社員 ) | ( 非正社員 ) | ||
バ ブ ル 期 | ( 85 ~ 90 年 ) | 増 | 増 |
バブル崩壊期 | ( 90 ~ 95 年 ) | 増 | 半減 |
構造調整期 | ( 95 ~ 2000 年 ) | 減 | 増 |
構造改革期 | ( 2000 年 ~ ) | 減 | 急増 |
現 在 | 減 |
( 図表 1 - 1 はグラフであり、掲載するのは困難なので ) 上記引用文を表に整理しました。
著者は、「最近の『非正社員は解雇しやすいから、不況になると真っ先に切られてしまう』という見方が、必ずしも正しくないことがおわかりいただけるだろう。」 と書かれていますが、
私は、「非正社員は解雇しやすいから、不況になると真っ先に切られてしまう」 という見方が正しいのではないかと思います。すなわち、
- バブル崩壊期のデータは、「景気が悪化すると、まっさきに非正規雇用が削減される」 ことを示しており、
- 構造調整・改革期のデータは、「正規雇用を非正規雇用に置き換えた」 ことを示している、
と考えるべきではないか、と思います。
このパターンは、今回の不況にもあてはまると思います。すなわち、今回も、まっさきに非正規雇用が削減されたのであり、それが一段落した今、次に起こるのは、正規雇用の削減である、と予想されます ( 同時に、非正規雇用が増加に転じると予想されます ) 。
正規雇用の人々がこの流れを止めるには、非正規雇用の人々を 「味方につける」 必要があります。つまり連帯しなければならないと考えられます。
しかし、連帯する、ということは、正規雇用の人々が待遇の悪化を甘受して、非正規雇用の人々の待遇改善・雇用の増加に協力する、ということにほかなりません。「自分の待遇が悪化してもかまわない」 という人 ( 正社員 ) がどれほどいるか、を考えると、正社員の削減は阻止不可能だと思います。
もっとも、連帯したところで、
正規雇用の待遇悪化 + 非正規雇用の増加
となるにすぎず、
正規雇用の削減 + 非正規雇用の増加
と、どれほど違うのか、という疑問はあります。
なお、急速に景気が回復すれば話は別ですが、「デフレは終わらない」 と予想されますので、その可能性はほとんどないと思います。
80年代バブルを演出した銘柄群が大暴落したのは96~97年頃です。多くの銘柄の株価が何分の1にまで暴落しました。勢い余って倒産、上場廃止になった銘柄も多数あります。
また、雇用関係について指摘しておきますと、90年代は、人口の多い団塊ジュニア世代が学校を卒業して社会に出た時期でもあります。団塊ジュニアのピーク世代が四年制大学を卒業したのは、95~97年頃です。(浪人、留年なしの場合)
新卒者が大量にいるのに企業が大幅な雇用調整を行ったため、低所得&低待遇&不安定雇用のフリーターやニートが多く生まれてしまいました。このため、団塊ジュニア世代(現在30代)の未婚率は非常に高く、子供の居ない若者が多くいます。
90年代後半の雇用政策の失敗が超少子化を招いており、国内需要の減少、ひいてはデフレの一因にもなっている訳です。
日経平均株価の動きを見ますと、90 年に 1/2 になっており、それ以降、下落が始まったとみるのが自然だと思います。
コメントは、正規を非正規に 「置き換えた」 と捉えるのは間違っている、という趣旨でしょうか? 「置き換えた」 と捉えることを否定・批判されているとも受け取り難く、コメントされた意図がわからないのですが、教えていただいたことも踏まえ、もっと内容のある記事を書けるよう、努力したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。