言語空間+備忘録

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雇用対策の問題点

2009-08-17 | 日記
小林良暢 『なぜ雇用格差はなくならないのか』 ( p.20 )

 サラリーマンやOLには、いざという時のセーフティネットとして、雇用保険がある。前回の〇一年から〇二年にかけての雇用危機では、その中心が正社員の失業者であったので、リストラされた大半の人は雇用保険の一般求職者給付を受給することができた。
 ところが、今回の雇用調整は非正規リストラであるため、その対象者は雇用保険に加入していないことが多い。厚労省が〇八年末に発表した推計によると、雇用保険に未加入の労働者が一〇〇六万人おり、この多くが非正規労働者だという。非正規労働者はおよそ一八〇〇万人いるから、約六割弱が雇用保険に未加入という計算になる。
 その後、厚生労働省が〇九年になって発表した追加推計によると、雇用保険の適用要件を六カ月に緩和するなどしたこともあり、一四八万人が雇用保険適用の恩恵に浴することになった。しかし、あとの八五八万人は、依然として給付漏れのままであることが、明らかになったのである。このうち五一四万人は主婦パートや学生アルバイトなど、生活基盤のある人たちだから、緊急性は高くないとしても、残る三四四万人が雇用保険という「セーフティネット」から完全に漏れて、直接生活保護という地べたに叩き落とされることになっているのである。
 二〇〇〇年代に入って以降、派遣などの非正社員の急激な増大という雇用の構造変化に対応して社会保険や社会保障制度を拡充してこなかった政策的な不作為が、「セーフティネットなき失業者」を大量に生み出したのである。さらに、緊急対策も後手にまわっており、このままでは「政策ミス」の上塗りになってしまう。


 非正規労働者の約六割が雇用保険に未加入であり、雇用保険未加入者の多くが非正規労働者である。セーフティネットがないのが問題であるが、政府の対策は後手にまわっている、と書かれています。



 雇用保険の適用要件を六か月に緩和したにもかかわらず、858 万人は給付漏れのままである、というのですから、雇用保険に未加入の労働者のうち、およそ 85 %の人々は、雇用されている期間が六か月に満たないのだと思います。すなわち、非正規労働者の大部分は、短期的な仕事を転々としているのではないか、と思われます。

 もっとも、「主婦パートや学生アルバイトなど、生活基盤のある人たち」 が 500 万人ほどいる、とのことなので、セーフティネットがなく、本当に大変なのは 344 万人の人々 ( 35 % ) だと思います。

 ( 関連する情報として、「貧困層の規模」 があります。よろしければ参考にしてください。 )



 ところで、( この本を ) さらに読み進むと



同 ( p.22 )

 今回の非正規リストラを受け、「製造派遣禁止」「日雇い派遣の禁止」「登録型派遣の原則禁止」などの主張が、政財界や労働組合、マスコミから聞こえてくる。しかし当の非正規労働者たちからは、そうした声はあまり聞こえてこない。このような政策が、派遣労働者自身の声を汲み上げて政策化したものとは、どうしても思えないのである。
 非正規失業者は、雇用保険の失業給付など生活資金と再就職のための支援を求めているのであって、政府与野党、また経済界、労働組合の対応は、この点でどこか決定的にずれている。今回、そういう違和感を抱いた人が多いのではなかろうか。
 どうしてこうなるかというと、「非正規労働者一八〇〇万人時代における非正規リストラ」という現実的な危機感が、あまりにも希薄だからである。
 例えば、桝添要一厚生労働大臣は、国会で非正規失業者対策について質問されて、「政府は、雇用保険の受給資格について、過去一年の保険料納付が必要だったものを六カ月にした。また先行き一年以上の雇用の見込みのあるもの、という適用基準を六カ月に短縮して、失業手当給付をもらいやすくした。さらに、再就職困難者には失業給付を六〇日上乗せした」と答弁している。一方、民主党は失業手当の受給期間が終了しても再就職できない人に、教育訓練を受講すれば月一〇万~一二万円を生活費として支給する案を提案している。双方ともに雇用保険の穴を埋めるために必要な政策ではあるのだが、いずれも雇用保険に加入していることが前提であり、雇用保険に未加入の非正規労働者のことはまったく視野に入っていない。政府・与野党に共通する視野狭窄が、具体的な施策と非正規失業者のニーズとのあいだに決定的なズレを生んでいる。
 また、地方自治体でも非正規リストラに遭った人たちを臨時職員として採用し、仕事と住まいを提供しているところがある。にもかかわらず、実際にはその応募は少ないという。何でもいいから雇用機会さえ用意すれば自然と人が集まるほど、雇用市場は甘くない。一口に派遣失業者と言っても、本当に当座の生活にすら困っている人から、しばらくは何とかなる人まで様々いるため、それぞれのニーズに合わせてきちんと施策を振り分けなければならないのである。
 このように、政府や与野党が行おうとしている緊急施策、野党や労働組合が主張する施策が、非正規失業者自身のニーズと完全にずれているように思われる。これでは非正規リストラで失業した人の現実的な救済にはならない。


 政府は、雇用保険を拡充するなどの対策を行っているが、そこでは雇用保険に加入していることが前提とされており、雇用保険に未加入の非正規労働者のことはまったく視野に入っていない、と書かれています。



 非正規労働者も救済せよ、という趣旨はわかるのですが、

 344 万人もの人々がセーフティネットなき失業という、大変な状態にあるにもかかわらず、なぜ、

   「地方自治体でも非正規リストラに遭った人たちを臨時職員として採用し、仕事と住まいを提供しているところがある。にもかかわらず、実際にはその応募は少ない」

のでしょうか。著者は、

   「何でもいいから雇用機会さえ用意すれば自然と人が集まるほど、雇用市場は甘くない。一口に派遣失業者と言っても、本当に当座の生活にすら困っている人から、しばらくは何とかなる人まで様々いるため、それぞれのニーズに合わせてきちんと施策を振り分けなければならないのである。」

と書かれていますが、彼ら 344 万人は、「本当に当座の生活に困っている人」 ではないのでしょうか? セーフティネットがない、というと大変そうですが、じつは、彼らには 「仕事を選ぶ余裕がある」 のかもしれません。



 なお、「製造派遣禁止」 、「日雇い派遣の禁止」 、「登録型派遣の原則禁止」 などが、当の非正規労働者のニーズからズレている、という話は、重要だと思います。

 選挙が近づいてきており、各政党はマニフェスト ( 公約 ) を発表していますが、雇用対策として、ニーズに合わない 「禁止」 も主張されています。そのあたりも含めて、「どの政党に投票するか」 を考えなければならないと思います。

 このブログでは引き続き、「それでは、どうすればよいのか」 を考えてゆきますが、おそらく選挙には間に合わないと思います。
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