以下の引用は、「経済学の十大原理」のうちの一つ、「交易 (取引) はすべての人々をより豊かにする」(…のはなぜか)を説明している部分です。
話を簡単にするために、著者は
このような状況を想定したうえで、著者は
これは要するに「あらゆる能力に秀でた人は、能力の劣る人と交易(取引)すべきか?」という問いです。具体的にわかりやすくいえば、「牛飼には、農夫よりもたくさんの牛肉を作る能力があり、かつ、農夫よりもたくさんのジャガイモを作る能力がある場合、牛飼は農夫と交易(取引)すべきか?」という問いです。
それでは早速、著者による説明を引用します。
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.70 )
引用文中の「表3-1」を次に示します。
表3-1 農夫と牛飼の生産機会
1オンスの生産に 8時間の生産でできる
必要な時間(分) 牛肉とジャガイモの量(オンス)
▼ ▼ ▼ ▼
牛肉 ジャガイモ 牛肉 ジャガイモ
農夫 60 15 8 32
牛飼 20 10 24 48
農夫が牛肉ばかり作れば1日8オンス、ジャガイモばかり作れば1日32オンス作れます。牛飼は牛肉ばかり作れば1日24オンス、ジャガイモばかり作れば1日48オンス作れます。これは計算で簡単に確かめられます。
これを図示すれば次のようになります。なお、農夫や牛飼が「牛肉とジャガイモを1日4時間ずつ」作った場合などの値もグラフには記入してあります。
図3-2
★(a) 農夫の場合
牛肉(オンス)
8 *
*xx
* xx
* xx
4 * xx
* xx
* xx
* xx
* xx
****************************ジャガイモ
0 16 32 (オンス)
★(b) 牛飼の場合
牛肉(オンス)
24 *
*xx
18 * xx
* xx
12 * xx
* xx
* xx
* xx
* xx
****************************ジャガイモ
0 12 24 48 (オンス)
引用を続けます。
以下では、農夫と牛飼がどちらも「牛肉とジャガイモを1日4時間ずつ」作って自給自足している場合、すなわち
農夫は毎日牛肉 4オンス、ジャガイモ16オンス
牛飼は毎日牛肉12オンス、ジャガイモ24オンス
を生産・消費して(食べて)いる場合と比較して話が進められています。
同 ( p.72 )
結局、交換(取引)によって、
農夫と牛飼がどちらも「牛肉とジャガイモを1日4時間ずつ」作って自給自足している場合の状況、すなわち
農夫は毎日牛肉 4オンス、ジャガイモ16オンス
牛飼は毎日牛肉12オンス、ジャガイモ24オンス
を生産・消費して(食べて)いる状況が、
農夫は毎日牛肉 5オンス、ジャガイモ17オンス
牛飼は毎日牛肉13オンス、ジャガイモ27オンス
を生産(または交換によって入手)・消費して(食べて)いる状況に変わっています。
この話には、強力な説得力があると思います。反論の余地がまったくありません。
以上によって、「経済学の十大原理」のうちの一つ、「交易 (取引) はすべての人々をより豊かにする」(…のはなぜか) は完全に説明されたと考えてよいと思います。
なお、このことをもって、海外との「自由貿易」がただちに「よい」といえるかは、微妙だと思います。それについてはあとで考えますが、
今回の話は自由貿易の是非を考える際の「前提」知識になると思います。
話を簡単にするために、著者は
- 牛肉とジャガイモという二つの財しかない世界で、
- かつ、その世界には牛飼と(ジャガイモをつくる)農夫の2人しかおらず、
- 2人とも牛肉とジャガイモを食べたいと思っている
このような状況を想定したうえで、著者は
- 牛飼が牛肉しか作れず、農夫はジャガイモしか作れない場合
- 牛飼はジャガイモ作りが苦手で、農夫は牛肉の生産が苦手である場合
これは要するに「あらゆる能力に秀でた人は、能力の劣る人と交易(取引)すべきか?」という問いです。具体的にわかりやすくいえば、「牛飼には、農夫よりもたくさんの牛肉を作る能力があり、かつ、農夫よりもたくさんのジャガイモを作る能力がある場合、牛飼は農夫と交易(取引)すべきか?」という問いです。
それでは早速、著者による説明を引用します。
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.70 )
農夫と牛飼はそれぞれ1日に8時間働くものとしよう。ジャガイモを栽培してもいいし、牛を飼育してもいいし、その両方を行ってもいいものとする。表3-1は、各人が各財を1オンス(約28グラム)つくるのにかかる時間を示している。農夫は、1オンスのジャガイモをつくるのに15分かかり、1オンスの牛肉をつくるのに60分かかる。牛飼は、どちらの作業も上手(生産性が高い)なので、1オンスのジャガイモをつくるのに10分、1オンスの牛肉をつくるのに20分しかかからない。表3-1の右側の列は、農夫と牛飼が1日に8時間働き、その財だけ生産したときにできるジャガイモと牛肉の量を示している。
引用文中の「表3-1」を次に示します。
表3-1 農夫と牛飼の生産機会
1オンスの生産に 8時間の生産でできる
必要な時間(分) 牛肉とジャガイモの量(オンス)
▼ ▼ ▼ ▼
牛肉 ジャガイモ 牛肉 ジャガイモ
農夫 60 15 8 32
牛飼 20 10 24 48
農夫が牛肉ばかり作れば1日8オンス、ジャガイモばかり作れば1日32オンス作れます。牛飼は牛肉ばかり作れば1日24オンス、ジャガイモばかり作れば1日48オンス作れます。これは計算で簡単に確かめられます。
これを図示すれば次のようになります。なお、農夫や牛飼が「牛肉とジャガイモを1日4時間ずつ」作った場合などの値もグラフには記入してあります。
図3-2
★(a) 農夫の場合
牛肉(オンス)
8 *
*xx
* xx
* xx
4 * xx
* xx
* xx
* xx
* xx
****************************ジャガイモ
0 16 32 (オンス)
★(b) 牛飼の場合
牛肉(オンス)
24 *
*xx
18 * xx
* xx
12 * xx
* xx
* xx
* xx
* xx
****************************ジャガイモ
0 12 24 48 (オンス)
引用を続けます。
以下では、農夫と牛飼がどちらも「牛肉とジャガイモを1日4時間ずつ」作って自給自足している場合、すなわち
農夫は毎日牛肉 4オンス、ジャガイモ16オンス
牛飼は毎日牛肉12オンス、ジャガイモ24オンス
を生産・消費して(食べて)いる場合と比較して話が進められています。
同 ( p.72 )
牛飼:農夫さん、あなたにいい取引の話があるの。私たち両方の暮らしをよくする方法を思いついたわ。あなたは牛肉をつくることをきっぱりとやめて、全部の時間を使ってジャガイモを栽培するの。私の計算では、あなたが1日に8時間働くとすると、ジャガイモを日に32オンスつくることができるわ。その32オンスのうちの15オンスを私にくれれば、そのお返しに、私は5オンスの牛肉をあなたにあげる。そうすれば、あなたは毎日17オンスのジャガイモと5オンスの牛肉を食べることができるようになるわ。いまはジャガイモ16オンスと牛肉4オンスでしょ。あなたが私の言うとおりにすれば、あなたはどちらの食べ物もいまよりも多く食べることができるわけよ(このことをはっきりと示すために、牛飼は図3-2のパネル(a)を農夫にみせた)。
農夫:(疑わしそうに)それはとってもいい話みたいだな。だけど、どうして、君はそんな話をもちかけてきたんだい。その取引がそんなに僕にいい話なら、君にもいい話であるはずがないからね。
牛飼:ところがそうじゃないのよ。私にもいい話なの。毎日6時間を牛の飼育に使って、2時間をジャガイモの栽培に使うと、私は牛肉18オンスとジャガイモ12オンスをつくることができるわ。ジャガイモ15オンスと交換にあなたに牛肉5オンスをあげると、私は牛肉13オンスとジャガイモ27オンスを手にすることができるの。そうすると、私も両方の食べ物をいまよりもたくさん食べることができるのよ(牛飼は図3-2のパネル(b)を農夫にみせた)。
農夫:わからないな……。話があまりにもうますぎるよ。
(中略)
牛飼:私たちがどちらも得するのは、それぞれの得意なことに特化することが交換(交易)によって可能になるからよ。あなたはジャガイモの栽培に使う時間を増やし、牛の飼育に使う時間を減らす。私は牛の飼育に使う時間を増やして、ジャガイモの栽培に使う時間を減らす。特化と交換(交易)の結果として、私たち2人がどちらも働く時間を増やさずに、より多くの牛肉とジャガイモを消費することができるのよ。
結局、交換(取引)によって、
農夫と牛飼がどちらも「牛肉とジャガイモを1日4時間ずつ」作って自給自足している場合の状況、すなわち
農夫は毎日牛肉 4オンス、ジャガイモ16オンス
牛飼は毎日牛肉12オンス、ジャガイモ24オンス
を生産・消費して(食べて)いる状況が、
農夫は毎日牛肉 5オンス、ジャガイモ17オンス
牛飼は毎日牛肉13オンス、ジャガイモ27オンス
を生産(または交換によって入手)・消費して(食べて)いる状況に変わっています。
この話には、強力な説得力があると思います。反論の余地がまったくありません。
以上によって、「経済学の十大原理」のうちの一つ、「交易 (取引) はすべての人々をより豊かにする」(…のはなぜか) は完全に説明されたと考えてよいと思います。
なお、このことをもって、海外との「自由貿易」がただちに「よい」といえるかは、微妙だと思います。それについてはあとで考えますが、
今回の話は自由貿易の是非を考える際の「前提」知識になると思います。
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