05/20 私の音楽仲間 (586) ~ 私の室内楽仲間たち (559)
飛び交う手裏剣
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
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ホラ吹き Violin
今回の譜例も、Mozart の Violin、Viola のための
協奏交響曲 変ホ長調 K364、その六重奏版から。
Vn.Ⅰのパート譜で、第Ⅰ楽章の冒頭です。
たった一段しかありませんね。 前回の譜例ではこれ
が抜けており、次の段から始まったことになります。
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[演奏例の音源]は、私が編集したインチキなもの。
今回の主役は、最初の5つの音符、特に2小節目の
リズムです。
2 3 4
もう一つは、sfp の存在でしょう。 p のときに、弓が軽く
なってくれるかどうか…。
またそれに伴って、「弓の位置を駒から若干遠ざける」、
「弓の速度を落とす」…ような “細工” も、同時に必要に
なります。
とは言え、アンサンブルの場では、自分が正確に弾こう
とするだけで精一杯です。 余計な解説などしている暇は
ありません。
この曲でこの6人が顔を合わせるのは、今回だけなの
です。 いわば、一期一会の場。
でも、この形が現われるたびごとに、6人は試行錯誤を
続けています。 お聞き取りになれないかもしれませんが、
各回のタイミングには、微妙な差が生じているのです。
こういう目に見えない関係が、音楽のアンサンブルでも
実在するんですよ? ときには、裏で手裏剣が飛び交って
いることさえ!
たとえば3小節以後に、降りて行く短い音符がありますね。
そのうち二回目では、「私がブレーキをかけている」…ように
聞こえるかもしれない。
同じ[演奏例の音源]です。
ところが実際は、そうではありません!
事の詳細はこの場では記しませんが、“もっと微妙で鋭い
やり取り” が、裏で行われているんです。 何往復も!
一旦やられたように見えて、実は密かに返り討ちを
狙っていたりして…。 “たまには”…ですけど。
怖いですね、恐ろしいですね? 遊びの場とは言え、
真剣勝負です。
♩ ♪ ♩
さて、上の同じ譜例には、小さな音符を3つ書き足してみました。
順に四分音符、八分音符、四分音符ですが、これ、何のことだと
思われますか?
実は “f を鳴らしている時間” のつもりなんです。
最初の1、2は、長い音符。 もし “f の時間” が短いと、鋭く
聞こえすぎる。 でも長すぎると、“f のイメージ” が残りすぎる。
私の好みでは、このぐらいがちょうどいい。
一方、音符3は f のままですが、次に短い、つまり “スピード
の速い” 八分音符がある。 先ほど記したように、語尾を軽く
する必要があるのです。
本来は、ここまで意思統一する必要があるのでしょう。
さて、この協奏交響曲。 解説にあるとおり、複数のソロ
楽器を伴って進行します。
通常の協奏曲に比べれば、「ソロとオケとの “やり取り” に
緊迫感がある」…というのが、私なりの印象です。 もちろん、
管弦楽だけの部分や、独奏楽器だけの部分 (カデンツァ) も
存在しますが。
今回は “5つの音符” から成るモティーフを取り上げました。
その間、音程はまったく動きません。 どの楽器でも。
この形、2つのソロ楽器には、原曲では一度も出てきません。