MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

トゲのあるセリフ

2014-05-01 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

05/01 私の音楽仲間 (574) ~ 私の室内楽仲間たち (547)



             トゲのあるセリフ



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 譜例は、ある弦楽四重奏曲の一部です。 
4/4拍子ですが、
三拍目の後半から始まる形が多いですね。


 しかし、開始のタイミングには微妙な差があります。 それを
表わすために書き込んだのが、の音符や休符です。

 


 待つタイミングが違うのですから、弾き始める音の長さも当然
異なるわけで、その差には神経を遣います。 これ、やはり正確
に弾き分けなければならないのでしょうか?


 よく見ると、

(1) 内の音符はすべて 八分音符”、また

(2) 内の休符はすべて 付点八分休符” です。


 休符は長いから、後には必ず十六分音符続く。 


 曲は、Beethoven の弦楽四重奏曲 イ短調 Op.132
第Ⅰ楽章で、展開部の後半でした。

 



 演奏例の音源]は、[譜例]の17小節前、時間にして40秒
ほど
前から始まります。

 Violin 私、San.さん、Viola E.さん、チェロはH.さんです。



 作曲者が厳密に書き分けているので、演奏者も
弾き分け
なければならない。 でもそれには、どんな意味があるのか?


 この “付点のリズム” は、モティーフの大事な要素ですが、
その中でも “微妙な差” をつける必要があるから…でしょうか。


私も最初はそう考えたのですが、どうもそうではなさそうです。


  「作曲者は、僅かな差から、大きなコントラストを作りたい?」
そうは見えない。

 「二つのリズムが対話をしている?」
そんな場面でもありません。



 私が結局たどりついた結論は、音楽の “流れ” でした。


 「喋り出すときは、敏捷な十六分音符から始まる。」
その前にあるのは、もちろん休符です。


 「話の途中で繰り返すときには、滑らかな八分音符で続ける。」
もし十六分音符だと、話にトゲがありすぎるので。 いずれにせよ、
大事な付点音符そのものは、ちゃんとその後に健在です。




 こういう小さな差を書かれると、とても困ります。 その意図
解りやすい場合ばかりではないから。 想像するしかありません。

 

 「下手な想像、休むに似たり! 違うぞ。」
作曲者の、そんなトゲのある叱責が聞えてきそうです。




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