NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#43 オールマン・ブラザーズ・バンド「AT FILLMORE EAST」(PolyGram)

2021-12-24 05:21:00 | Weblog

2001年5月20日(日)



オールマン・ブラザーズ・バンド「AT FILLMORE EAST」(PolyGram)

今日は、tRICK bAGがらみのアルバム。なぜかこれも二枚組。1971年発表の作品。

「悲劇のバンド」オールマンズは、メンバーを交代しながらも、いまだに続いているということだが、やはりこのアルバムを出した頃の、デュアン・オールマンが生きていた時期が音楽的にベストであったことは、どなたにも異存はあるまい。

とにかく、デュアンのスライド・ギター・プレイは文句なく素晴らしかった。

60年代のデュアンは、アトランティック系シンガーのバックをつとめる、一スタジオ・ミュージシャンに過ぎなかったが、スライド・ギターをモノにすることで、一躍トップ・ギタリストへと脱皮した。

そのツヤと伸びのある特徴的なトーンは、スライド・ギターの歴史を塗り替えたといってよかった。

以後、さまざまなフォロワーが登場したが、やはり、どのひとりとして、オリジネイターたるデュアンを超えることはできなかったと思うが、いかがであろう。

さて、このライヴ・アルバム、ロック史にその名を残すホール、フィルモア・イーストにおける71年3月12・13日の録音。

オールマンズのステージの特徴としては、(同じくフィルモアの常連、グレイトフル・デッドなどもそうであったように)1曲1曲が非常に長く、1曲で20~30分なんてことも珍しくなかった、ということがある。

このアルバムでも、「WHIPPING POST」がまさにそのケース。

LP時代は片面全部を占めた、22分以上もある大曲である。

でも、それだけ延々とプレイしていても、決してダレるどころか、「だんだん良く鳴る法華の太鼓」ではないが、演れば演るほどどんどん全員のグルーヴが高まっていく、そういうプレイなのである。

LP1枚目のB面に相当する、「YOU DON'T LOVE ME」にしても、然り。

コアにあるのはブルースだが、それにファンク、ラテン、ジャズなどさまざまなジャンルの音楽を取り入れ、ツイン・ドラムスというリズム上の冒険にも果敢に試みた、「引き出し」の多いサウンド。

同じブルース進行でも、変則的なリズムを取り入れたりして、新味を出すことに成功している。

だが、テクニック最優先型ではない。バンド本来の泥臭さはちゃんと残して、変に洗練された方向へはむかわない。あくまでやも、重心は低いのである。

これが、彼らがただのホワイト・ブルース・バンドを超えて、ワン・アンド・オンリーな存在となりえた理由といえよう。

このライヴでは、ブルースではスタンダード中のスタンダード、「STORMY MONDAY」も演奏しているが、多くのリスナーには、T・ボーン・ウォーカーのオリジナルよりも、彼らのバージョンがもっとも親しまれているだろう。

デュアン自身、多大な影響を受けたに違いない先達、エルモア・ジェイムズの「DONE SOMEBODY WRONG」もカバーしている。エルモアの魂が、デュアン独自のスタイルによってよみがえった1曲だ。

これぞまさに、「温故知新」。いや「音故知新」か。

デュアンのスライド・ギターばかりほめるのもいかんな。ディッキー・べッツとのツイン・リード、これも息がピッタリと合ってて、絶品だ。ベッツ作の「IN MEMORY OF ELIZABETH LEED」、やっぱり、名曲である。

あまり注目されることはないが、グレッグのボーカルも若干シブ目ながら、いい味を出している。そしてもちろん、変幻自在な3人のリズム隊も素晴らしい。

こういう、リズムに独特の「うねり」のある玄妙なサウンドを聴いたあとにゃ、お子様ランチみたいな打ち込み系音楽は聴けないよ、まったくのハナシ。

やっぱり、ノリ、グルーヴとは、生身のプレイヤー同士のインタープレイから初めて生まれるものだと思う。この一枚ははっきりとそう語っている。


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