NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#64 ジョニー・ウィンター「Mother-In-Law Blues」

2009-01-25 10:23:06 | Weblog
#64 ジョニー・ウィンター「Mother-In-Law Blues」(Raisin' Cain/Blue Sky)

ジョニー・ウィンター、CBS-ブルースカイ時代の最後を飾る、80年のアルバムよりの一曲。

ジョー・パリス、ボビー・トレロとのトリオ編成によるスタジオ録音盤だが、ここではハープを加え、カルテットで演奏している。まるでライブ録音のように、生々しい音だ。

「Mother-In-Law Blues」というと、「アーニー・K・ドゥの?」とか聞かれそうだが、これはまったく別の曲で、ボビー・ブランドがオリジナル。例によってドン・ロビー(ディアドリック・マローン)名義の作品だ。

アーニーのほうの、ほのぼの系の曲調ではなく、かなーりハードな味わいのブルース。

オヤジの後添えに、うっかり惚れちまった、やるせなさ。まさにブルースな内容の歌を、辛口のボーカルでシャウトするジョニー。

また演奏のほうも、相変わらず息もつかせぬハイスピードで、飛ばしまくってる。

彼のギター・ソロって、ホント、目一杯音符が詰まっていて、密度がハンパなく濃ゆい。

ワンパターンといえば、ワンパターンなんだが、こういうハード・ドライヴィングなノリの曲でこそ、彼の歌やギターは、最大限に威力を発揮しますな。

最近では、04年以来レコーディングもなく、体調不良という便りしか聞かないジョニー・ウィンター。一度も来日をしたことがなく、初公演も夢のまた夢になりそうで、非常に残念であります。

一ファンの筆者としてはともかく、彼の過去のレコーディングを聴いて、気持ちをたかぶらせる。これしかありませんな。KEEP ON ROCKIN'!!

#63 ボー・カーター「Banana In Your Fruit Basket」

2009-01-18 16:42:54 | Weblog
#63 ボー・カーター「Banana In Your Fruit Basket」(The Essential/Classic Blues)

新年早々「今年も地道に更新してまいります」と書いたわりには、相変わらずのマイペース更新になってしまった。スマソ。

で、今年の二曲目はこれ。ちょっと意表をついて、戦前のカントリー・ブルースでは代表的なグループ、ミシシッピ・シークス出身のギタリスト/シンガー、ボー・カーターの作品だ。

ボー・カーター、本名アーメンター・チャットマンは1893年ミシシッピ州ボルトン生まれ。ミシシッピ・シークスではメイン・ボーカルをウォルター・ヴィンスンに譲っていたが、ソロ・シンガーとしては20年代後半から40年頃まで、多数の曲をレコーディングしている。

ところで、日本のブルース・リスナーは、言語の問題があるためか、ついつい忘れがちなことがひとつある。

それは、ブルースは原初的な形態において、猥雑な内容のものがかな~り多かった。すなわち、ブルース曲のかなりの部分は、春歌・猥歌のたぐいであったということだ。

ロバート・ジョンスンのいくつかの曲しかり、もっと時代が下ってもウィリー・ディクスンの「スプーンフル」しかりである。そのものずばりでなく、巧妙にダブル・ミーニングにしてあっても、要はBawdy Songなのである。

まあ、カネのない社会の最下層の人々にとって、数少ない娯楽のひとつが●ックスだったわけだから(あとはギャンブルね)、ブルースのモチーフとしてよく出てくるのは、いたしかたないことなんである。

さて、このカーター氏も、ご多分にもれず、そういうちょっとエロティックな比喩の歌をよく歌ってらっしゃる。今日の曲も、タイトルからして、いかにもそれっぽい、意味深な感じでしょ?

聴いてみると、歌は素朴な味わいのものなので、特別エロい印象はないのですが、歌詞はモロにあのことを歌っております。

ギター伴奏も実にシンプルといいますか、かなりシロウトっぽいのですが、むしろそれがいい雰囲気を醸し出してて、◎。

同じアルバムでいうと、「Cigarette Blues」「Let Me Roll Your Lemon」あたりもその系列の作品といえそう。

どこか突き抜けてしまったところさえある素朴なエロティシズム。これも戦前ブルースならではの特徴であり、魅力ともいえましょう。ぜひご一聴を。

#62 ビッグ・ジョー・ターナー「TV Mama」

2009-01-04 18:56:09 | Weblog
#62 ビッグ・ジョー・ターナー「TV Mama」(The Very Best Of Big Joe Turner/Rhino)

明けましておめでとうございます。今年も地道に更新してまいりますので、巣ならびに一日一曲、よろしくです。

さて、今年の一曲目はビッグ・ジョー・ターナー、50年代のヒット「TV Mama」。

ビッグ・ジョー・ターナーといえば、1911年カンサスシティ生まれ。30年代、スウィング・ジャズの時代から一貫したスタイルで歌い続けてきた黒人シンガー。

その名の通り堂々たる体躯から発するビッグ・ボイスで、ジャズ~R&B~ロックンロールの時代を制覇して来た、ステージ・キング的な存在だ。

代表曲は40代にして吹き込んだロックンロール・ナンバー「Shake, Rattle And Roll」や「Flip, Flop And Fly」。いずれも、アトランティックでの録音。

これが何故かティーンエージャーにも大ウケ。いまでいえば、40代半ばになっても「ゴールドフィンガー'99」みたいなイケイケのヒットを出してしまうヒロミ・ゴーみたいなもんか。

ノリのよさ、陽性のキャラも、どこか郷と似ているような気もするね。

さて、この「TV Mama」は、イントロを聴くとおわかりいただけるかと思うが、エルモア・ジェイムズとの共演盤。

ラジオに代わって、当時マスメディアへの主役へと躍り出たテレビをモチーフに、ユーモアあふれるターナー・ワールド全開のブルースに仕上がっている。

いわゆる「ブルーム調」なれど、ひと味違ったものになっているのは、ターナーのキャラクターゆえか。

テンポを上げ過ぎず、一歩一歩確実に進んで行く感じのビートが、いかにも王者の風格だわな。

ビッグ・ジョー・ターナーはその後、ジャズ系のパブロ・レーベルなどで数多くのアルバムを遺し、いわゆる流行歌手としてのピークを過ぎてからも、70代まで意欲旺盛な音楽活動を続けていた。日本の懐メロ系歌手で、こんな人、なかなかおらんよね。

年をとろうが、流行が変わろうが、泰然として音楽道を突き進む。こういう爺サマに憧れますな、ハイ。