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音曲日誌「一日一曲」#400 リー・ドーシー「Get Out Of My Life, Woman」(Amy)

2024-05-10 07:35:00 | Weblog
2024年5月10日(金)

#400 リー・ドーシー「Get Out Of My Life, Woman」(Amy)





リー・ドーシー、1965年12月リリースのシングル・ヒット曲。アラン・トゥーサンの作品。トゥーサンによるプロデュース。

米国のR&Bシンガー、アーヴィング・リー・ドーシーは1924年ルイジアナ州ニューオリンズ生まれ。幼なじみに有名シンガー、ファッツ・ドミノがいる。

10歳の時に家族と共にオレゴン州ポートランドに移住。格闘技を始め、20代はプロボクサーを志していたが成功せず、30歳を過ぎてニューオリンズに戻り、自動車修理業につく一方で夜はクラブで歌うようになる。

初レコーディングはレックスレーベルからのシングル「Rock Pretty Baby」。その後もシングルをリリースしたが、いずれも不発に終わる。30代半ばの60年頃、フューリーレーベルと契約。

パーティで名プロデューサーのアラン・トゥーサン(1938年生まれ)と出会い、彼のバックアップによりシングル「Ya Ya」を61年にリリース、これがいきなりR&Bチャート1位、全米7位の特大ヒットとなる。

全米級の知名度を得たドーシーは、その後同年の「Do Re Mi」がR&Bチャート22位、全米27位のヒットとなるものの、3年以上不発状態が続く。

このままただの一発屋で終わるかと思いきや、起死回生のヒットが出る。65年リリースのシングル「Ride Your Pony」である。この曲でR&Bチャート7位、全米28位を獲得、再びドーシーは世間の注目を浴びるようになる。

そして同年末リリース、「Ride Your Pony」の勢いを借りて再度ヒットしたのが、本日取り上げた「Get Out Of My Life, Woman」である。

彼の多くの曲同様、トゥーサンが作曲、プロデュースした本曲は、R&Bチャート5位、全米44位の輝かしい成績をおさめた。

12小節ブルースである「Get Out Of My Life, Woman」は、1965年という制作時代を反映して、シャッフルではなく、軽く跳ねる8ビートなのが大きな特徴である。微妙に従来のパターンと異なるコード進行にも、トゥーサンならではのアイデアが感じられる。

ピアノのトゥーサンのほか、のちにミーターズとなるミュージシャンたちがバックをつとめており、これが本曲の新しさを生み出している。のちのニューオリンズ・ファンクの源流とも呼べるだろう。

「Ya Ya」で初ヒットを飛ばした61年頃のドーシーは、まだ従来の素朴なニューオリンズR&B路線を引きずっていたが、65年の彼は見事に時代の変化に合わせてサウンドをアップデートしたわけだ。

これはいうまでもなく、トゥーサンの卓抜した才能によるところが大きい。

シンプルだがパワーに溢れた、この曲の魅力に注目するアーティストはすぐに現れた。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドである。

彼らが66年8月セカンド・アルバム「East West」でカバーしたことで、白人リスナーもこの曲への関心が強まった。ロック・バンド、アイアン・バタフライもカバーし、一方ソロモン・バーク、フレディ・キングら黒人アーティストもアルバムで取り上げて、名唱を残している。

ドーシーとトゥーサンのコラボはその後も続いて、「Working in the Coal Mine」「Holy Cow」(ともに66年)、「Yes We Can Can」(70年)などの名曲、ヒット曲を生み出した。

ひとの人生は、どういう人に出会うかで大きく変わるとよく言われるが、遅咲きでなかなか芽が出なかったリー・ドーシーの場合、まさにその好例だと言える。

ドーシーのホットでタフな歌声、これも大きな才能ではあるのだが、やはりその並外れた成功は、アラン・トゥーサンの時代の変化を察知し、先取りしていくセンス、作曲能力なくしては、あり得なかった。

トゥーサンとの出会いこそが、ドーシーの人生最大のターニング・ポイントなのだ。

ニューオリンズ・サウンドの代表選手、リー・ドーシーのイカしたロッキン・ブルースを、のちのカバー・バージョンと共に楽しんでほしい。






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