NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#93 ミッキー・ベイカー「Midnight Midnight」

2009-09-27 07:34:06 | Weblog
#93 ミッキー・ベイカー「Midnight Midnight」(Atlantic Blues: Guitar/Atlantic)

シンガー/ギタリスト、ミッキー・ベイカーの59年のインスト・シングル曲を。ベイカーとカーティス・アウズリーの共作。

ミッキー・ベイカーといってもピンとこないムキも多いだろうが、R&Bデュオ、ミッキー&シルヴィアの片割れのミッキーといえば、少しは通りがいいかもしれない。

ミッキー&シルヴィアは56年にデビュー、「Love Is Strange」(邦題・恋は異なもの)をヒットさせた男女デュオ。ふたりともエレクトリック・ギターを弾くというのがその特徴で、実際ベイカーがシルヴィアにギターを手ほどきしていた。

ふたりはその後も何曲かヒットを放ち、3年後にコンビを解消している。シルヴィアはその後、ロス・インディオスに参加‥‥というのはもちろん冗談で、70年代にソロで「Pillow Talk」というお色気たっぷりなディスコ・ナンバーをヒットさせたから、そこのお父さんもご存じかも。

相方のミッキー・ベイカーのほうも、その後ソロとしてギターに歌に活躍しておりまして、きょうの曲は、アトランティック在籍時代にヒットさせている。

これが実にカッコよろしい。ミディアム・テンポのシャッフル・ビートに乗せて、メリハリあるギター・プレイを聴かせてくれるのだ。

ジャズ、ブルース、R&B、ロックンロールと、さまざまな要素を匂わせるそのプレイは、なんともクール。

その手のブルーズィな音楽を志すギタリストたちにとって、格好のお手本といえますな。

ファースト・ソロ・アルバム「The Wildest Guitar」にも収録されているが、そこで演っている曲を見ると「夜も昼も」「枯葉」「オールド・デヴィル・ムーン」「落葉の子守り唄」といったジャズ・スタンダードあり~の、自作のブルースあり~のと、実に選曲の幅が広い。

あえて歌はうたわず、ギターのみで勝負しているが、フレーズの豊富さ、表現の巧みさにより、決してあきさせるということがない。コール・ポーターの「夜も昼も」が見事なゴーゴー風ダンス・ナンバーになってしまっているのには、ただただビックリ。

ピー・ウィー・クレイトンの「ブルース・アフター・アワーズ」の流れをうけ、後にはフレディ・キングの一連のインスト・ナンバー(「ハイダウェイ」「ザ・スタンブル」など)にもつらなっていく、ギター・インストの傑作、それが「Midnight Midnight」。

とにかく、ビートがメチャご機嫌なのであります。

ベイカーは今年、84才。音楽活動の話はここのところとんと聞きませんが、いまも元気でギターをつまびく生活を送っているというんだったら、いいんですが。生涯現役プレイヤーを貫いて亡くなった、あのレス・ポール翁のように。

レス・ポールにもまさるとも劣らぬ、「リビング・ギター・レジェンド」、それがミッキー・ベイカーであります。必聴。

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#92 ロニー・ブルックス「Figure Head」

2009-09-20 11:19:23 | Weblog
#92 ロニー・ブルックス「Figure Head」(Authentic Blues/Fuel 2000)

1933年生まれのベテラン・ブルースマン、ロニー・ブルックス、若き日のレコーディングより。クレイグ=デニーズ=エマーソンのトリオの作品を。

本名リー・ベイカー・ジュニア。ルイジアナ州ダビュイッソンに生まれ、テキサス州ポート・アーサーに移り住む。20代の後半、ロックン・ローラーとして「ギター・ジュニア」という芸名でローカル・レーベル、ゴールドバンドよりデビュー。後に同名のミュージシャンがいたこともあり、ロニー・ブルックスに改名することになる。

60年代はメジャーを目指してシカゴに出てきたもの、鳴かず飛ばずの状態が続き、レコード会社を転々とすることになるが、運が向いてきたのが79年にアリゲーターに移籍、アルバム「Bayou Lightning」を出したあたりからだ。

この一枚で見事、ブレイク。ブルックス、46才にしてついにオトコとなったわけである。

本曲はそのアルバムに収められた79年録音版‥‥ではなく、オリジナル録音版から。ミディアム・スローのブルース。オルガン(とホーン)のバック・サウンドが時代を感じさせる、いなたいナンバーだ。

もともとはルイジアナやテキサスといった「田舎」で、ほのぼの、ゆるゆるとしたブルースをやっていたブルックスが、都会(シカゴ)の世知辛い環境に入って揉みに揉まれた。そんな足跡も感じられる、ちょっとメランコリーな味わいもある。

ロニー・ブルックスというひと、日本ではいわゆるブルース・マニア以外にはほとんど知られていないし、その歌声よりもギター・プレイで語られることが多い。

が、彼は歌でも結構な実力を持っていると筆者は思う。メジャー未満のブルースマンのおおかたは、おもにギター・プレイで勝負、歌は素人に毛が生えた程度というのが相場だが、彼はもともと流行歌手的なデビューをしただけあって、声に魅力があるのだ。

とくにその中音・低音の巧みな使いわけかたとか、声の響きのよさは、特筆に値いするように思う。

塩辛声系のブルースマンにはない、ほどよい「甘さ」も感じられる。

「Bayou Lightning」にも、この曲の再演が収められているのだが、比較するにオリジナル版のほうが断然いい。若いころのほうが、歌声にまろみと色気があるのだ。

あえてギター・プレイを抑えて、歌一本で勝負するこの一曲。けっこうお気に入りであります。

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#91 カール・ウェザズビー「Come To Papa」

2009-09-13 08:39:29 | Weblog
#91 カール・ウェザズビー「Come To Papa」(Come To Papa/Evidence)

今年56才の中堅ブルースマン、カール・ウェザズビーの4枚目のソロ・アルバムからタイトル・チューンを。ウィリー・ミッチェルとアール・ランドルの作品。

ウェザズビーは53年、ミシシッピ州ジャクスン生まれ。係累にミュージシャンが多いこともあってか自らもギターを弾き始め、父親がアルバート・キングと懇意にしていたことからそれがキングの目にとまり、20代の後半にはキングのバック・バンドに一時参加することになる。

彼の本格的なプロ・ミュージシャンとしてのキャリアは、ハーピスト、ビリー・ブランチが率いるバンド、サンズ・オブ・ブルースから始まる。

80年代前半から90年代半ばまではそのグループに在籍、96年、ソロ・デビューを果たす。

以来、病気によるブランクをはさみながらも2004年まではコンスタントにアルバムを発表。2005年以降はふたたび録音が休止状態となっているものの、玄人筋では非常に評価の高いひとだ。

まずは、きょうの一曲、聴いてみよう。この曲はもともと、ベテラン・ソウル歌手アン・ピーブルスが「Come To Mama」のタイトルで歌い、ヒットしたナンバー。それを男性版バージョンで出すに際して、わざわざオリジナル・シンガー、ピーブルスを引っ張り出してレコーディングしたあたり、ウェザズビーの相当な意気込みが感じられる。

このアルバムではおまけに同じピーブルスの代表曲、当コーナーでも昨年の9月21日に取り上げた「(I Feel Like) Breaking up Somebody's Home」までカバーしてるんだから、すごい気合いだ。ソウル・シンガーとして、一歩前に出てやるぜ、みたいな。

とはいえ、シャウトな歌姫、ピーブルスとは対照的に、ウェザズビーの歌声はわりとソフトで、ほとんどシャウトしない。師匠格にあたるアルバート・キングにも通じるところのある、スモーキーな声が印象的だ。

これがよくも悪くも、彼の個性といえるだろう。「クルーナー唱法」というのがソウルにもあるとしたら、彼はその見事なサンプルといえそうだ。

バック・ミュージシャンに目を転じてみると、これがなかなか。ベースにウィリー・ウィークス(クラプトン、ジョー・ウォルシュのバックなどでおなじみですな)、キーボードにラッキー・ピータースン、そしてメンフィス・ホーンズと豪華豪華なのだ。当然、音には文句のつけようがない。

ウェザズビー自身のギター・ソロは控えめで、そちらを期待したムキには肩すかしだったかもしれないが、これも彼の、ギターよりあくまでも歌を前面に出そうという姿勢のあらわれなんだろうね。

アルバート・キング亡きあと、そのソウル・ブルースのラインを引き継ぐ稀少なひとり、カール・ウェザズビー。

派手さはないが、自分の気に入った曲をじっくりと歌いこんでいくウェザズビーには、隠れたファンも多い。

ふたたび新作で、その味わい深い歌声とギターを聴かせてほしいものであります。

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#90 マット・ギター・マーフィ「J.F.A.」

2009-09-06 08:14:08 | Weblog
#90 マット・ギター・マーフィ「J.F.A.」(Lucky Chram/Roesch)

ギタリスト/シンガー、マット・ギター・マーフィ2000年のアルバムより、マーフィのオリジナル・インスト曲を。

マット・ギター・マーフィは1927年ミシシッピ州サンフラワー生まれ。

プロ・ミュージシャンとしてのキャリアは、40年代末にメンフィスにてスタート。以来、半世紀以上にわたって、ブルース/R&B/ソウル界でバッキングの達人として活躍してきた。

おもな共演相手は、メンフィス・スリム、ハウリン・ウルフ、ジュニア・パーカー、ボビー・ブランド、ジェイムズ・コットン、そしてブルース・ブラザース。

アレサ・フランクリンの亭主役となった、ブルブラ映画二作での役者ぶりを、覚えているかたも多いだろう。

ヒゲ面にキャップにTシャツ姿、見てくれはいかにも「おっちゃん」という感じだが、ギターを持たせれば、右に出る者がない。

そのプレイは正確無比でスピーディ、計算しつくされたテクニカルなものだが、けっして無味乾燥なものでなく、ブルーズィなフィーリングも十二分にもっており、いわば完全無欠のギタリストなのだ。

60才を過ぎてようやくソロ・アルバムをリリース、2000年までに三作をリリースしているが、その後は健康上の問題があり、活動停止の状態にある。実に残念である。

とまれ、きょうの一曲、聴いてほしい。ジャズィな味わいのスロー・ブルース・ナンバーで、マーフィは実に気持ちよさげに、愛器を弾きまくっている。

タイトルの「J.F.A.」とは、日本サッカー協会のこと‥‥なわけもなく、全く意味不明なのだが、まあこの際、意味を知ったところでしょうもない。(おそらく、マーフィの友人の名前から来ているんだろうな。)

とにかく、そのフレーズひとつひとつが、過去何十年かにわたる、ありとあらゆるカッコいいブルース・ナンバーを凝縮したもの、そんな感じである。

ハムバッカーの粘りある音色が、実に艶(H)っぽくて、いい。この演奏を聴けば、世間で名ギタリストともてはやされている(おもに白人のロック系)ギタリストのプレイが、まだまだ大したことがないのが、よくわかると思う。

「ギターとはこういうふうに弾くもんじゃい!」と無言で教えてくれるのが、マーフィの演奏だ。

一音一音にゆるぎないフィーリングがみなぎる、マット・ギター・マーフィのプレイ。まさに「ギター」のニックネームにふさわしい。必聴であります。

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