NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#66 meg「GROOVE TUBE」

2009-02-21 15:33:29 | Weblog
#66 meg「GROOVE TUBE」(room girl/ワーナーミュージックジャパン)

しばらくブルース漬け状態だったので、ここいらで気分転換、口直し的な一曲。日本の女性シンガー、megのデビュー・アルバムより、4thシングルを。樫原伸彦プロデュース。

シブヤ系がお好きなひとなら当然ピン!と来るだろうが、フリッパーズ・ギターのヒットのカバー。DOUBLE KNOCKOUT CORPORATIONこと小沢健二&小山田圭吾の作品だ。

meg(現在はMEGに改名)は広島県出身の28才。上京してファッション・モデルとして活動、そのかたわらインディーズでCDを出し、2002年に岡村靖幸のプロデュースでメジャーデビュー。

モデル、シンガー、そしてファッション・デザイナーの三足のわらじを履く彼女だが、「デキる女」ふうの肩肘はった感じはみじんもなく、キュートな容姿、自然体のキャラ、抜群のファッション・センスで若い女のコたちに人気が高い。

歌のほうも、実力派というよりは、ちょっと舌足らずな発声がチャラ&ユキふう。最近では、中西ヤスタカ(Perfumeを手がけている)のプロデュースでエレクトリック・ポップ路線のシングルを数曲出しているが、着ぐるみの猫をバックに従えたダンスなど、ファンシーな演出がどこかトミフェブを連想させたりする。ポップでおしゃれでキュート、それが彼女なんである。

さて、今日の一曲は、ファンクだけどめちゃポップ。バンドの編成はシンプルながら、ボーカルの多重録音や凝ったミキシングにより、カラフルなサウンドに仕上がっている。

この人の声の、独特の甘さと透明感をそこなわずに、ダンサブルな曲になっているのだ。樫原というプロデューサー、なかなかの仕事人と見た。

最近のテクノな音(アルバム「BEAM」「STEP」)も決して悪くはないんだけど、期間限定的な試みにしといたほうがいい気がする。あくまでも、MEG本来の持ち味は、ナチュラル系だと思うから。

ステージでは思い切りポップではじけて、でもスタジオでは彼女の「生成り」のような歌の魅力を引き出していってほしいもんだ。

彼女は地方出身ながら、ローカルな匂いが全くしない。「都会的でポップでキュート」という女性シンガーが最近あまりいないけど、MEGはかなりいい線いってる。お客さん、今年はブレイク必至、買いでっせ。

#65 ビッグ・ジョー・ウィリアムズ「Wild Cow Moan」

2009-02-14 19:39:38 | Weblog
#65 ビッグ・ジョー・ウィリアムズ「Wild Cow Moan」(Big Joe Williams and the Stars of Mississippi Blues/JSP)

しばらく更新が出来なくてゴメン。三週間ぶりの一曲はこれ。ビッグ・ジョー・ウィリアムズ、45年の録音から。トラディショナルにウィリアムズが手を加えたナンバーだ。

ビッグ・ジョーは1903年、ミシシッピ州クロフォード生まれ。

ギター一台を道連れに、街から街へと演奏旅行をして渡り歩く、典型的な放浪のミュージシャンだった。

したがって彼の録音は弾き語りスタイルのものが多いが、これは珍しくバンド編成のもの。

彼と同じく放浪のブルースマン、サニーボーイ・ウィリアムスンIIのハープ、ランサム・ノウリング、ジャッジ・ライリーのリズム隊がバックをつとめている。

ビッグ・ジョーの音は、一聴してすぐわかる。声も枯れた味わいで特徴があるし、ギターも9弦という変則的なもので、高音部の響きが独特だから、間違えようがない。まさにオリジナルなのだ。

82年に79才で亡くなるまで終生、ビッグ・ジョーはカントリー・ブルースのスタイルを変えなかったが、この曲もまた、典型的な田舎のブルース。

歌詞がまずいなたく(野生の牛だもんね、まさに村(ソン)の世界!)、歌唱もまた、ひなびた感じ。ギター演奏も実にそれっぽい。さらにサニーボーイのもの憂げなハープが、歌やギターを引き立てている。

以前に「一日一枚」で、彼とライトニン、テリー&マギーと共演したライブの曲を取り上げたことがあるが、その四人の中でも、ビッグ・ジョー・ウィリアムズは、ダントツでいなたい(あ、この場合の「いなたい」は、勿論、ほめ文句だからね)。

ミシシッピという土地とともに生き、死んだブルースの巨人。このどっしりとした生き方、憧れですわ。

ビッグ・ジョーのように音楽と日常生活が一体化している、そういう「生涯ミュージシャン」を、ワタシも目指したいと思っております。ハイ。