NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音曲日誌「一日一曲」#60 ブリトニー・スピアーズ「(I Can't Get No)Satisfaction」(Ooos!...I Did It Again/Jive)

2023-05-31 05:00:00 | Weblog
2008年12月7日(日)

#60 ブリトニー・スピアーズ「(I Can't Get No)Satisfaction」(Ooos!...I Did It Again/Jive)





この2日で27才になったアメリカのトップ・シンガー、ブリトニー・スピアーズのセカンド・アルバム(2000)よりローリング・ストーンズのカバー曲を。ロドニー・ジャーキンスによるプロデュース。

リリース当時、ブリトニーは18才。すでにデビュー・シングル&アルバムで大ブレイク。10代半ばでポップ・スターとしての王座を獲得した彼女が、その地位をゆるぎないものにしたのが、このセカンド・アルバム、ということになる。

インナースリーブを見ると、彼女の素顔はまだまだあどけない。現在のセクシー路線(2001あたりから始まっている)に比べると、ホント、当時はアイドル歌手そのものだったのだ。

8才で芸能界デビュー、子役時代を経て、10代なかばで歌手デビュー。彼女が目標にし、後には共演も果たしたマドンナに比べると、まるまる10年早くポップ・クイーンの座に着いたわけだが、若すぎる成功というものは、子役出身の映画俳優に多いが、えてして本人の実生活に混乱をもたらすもの。ブリちゃんもご多分にもれずで、20代に入ってからの私生活における迷走ぶりは、皆さんご存知のとおりだ。パリス・ヒルトンあたりと並んで「お騒がせセレブ」の常連となってますな、ここ4、5年。

でもこのアルバムを出したころは、まだまだ清純路線のまっただなかで、なかには少々エロティックな雰囲気の曲もあるものの、おおむね健全なポップ・チューンでした。

で、この「(I Can't Get No)Satisfaction」でありますが、ロック=バンド・サウンドというよりはマドンナ・ライクなダンス・チューンに仕上がっとります。

基本的には「いい子路線」のブリトニー(なにせ、「結婚するまで処女でいる」なんてことを当時は公言していたからね)。しかし、いい子でばかりいると、シンガーとしての芸風にも限界がある。

そこで、あえて基本路線をふみはずし、あたしだって不良にだってなるかもしんないわよ、とチラリ本音を見せたのが、このストーンズ・カバーなんだと思う。

いつものさわやか路線というよりは、ちょっともの憂げでセクシーな歌い方は、マドンナをひき継いでポップ・クイーンとなった彼女にふさわしい貫禄さえ感じさせますな。日本の、あまたいる女性アイドル歌手たちとは、全然スケールが違うって感じ。

現在のやさぐれなブリちゃんの、原点ともいえる一曲。ひさしぶりに第一線に復活、デビュー以来のヒットとなった「Womanizer」なども合わせて聴いてみれば、ポップ・スターとしての彼女の底力がよくわかるのでは。ルックスだけじゃなく、歌声そのものにハンパじゃない魅力があるのですよ、ブリトニーには。


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音曲日誌「一日一曲」#59 フレディ・キング「Feelin' Alright」(Live At Liberty Hall/Blue Moon)

2023-05-30 05:00:00 | Weblog
2008年11月30日(月)

#59 フレディ・キング「Feelin' Alright」(Live At Liberty Hall/Blue Moon)





76年に42才の若さで亡くなったフレディ・キング。彼の70年代のライブから、トラフィックのカバーナンバーを。デイヴ・メイスンの作品。

68年のセカンド・アルバム「Traffic」に収録されたこの「Feelin' Alright」、白人・黒人を問わず、実にさまざまなアーティストがカバーしている。

おもだったところでは、白人ならジョー・コッカー、グランド・ファンク・レイルロード、スリー・ドッグ・ナイト、レア・アース、ジェイムズ・ギャング、バッド・フィンガー、ドクター・ジョンに、ポール・ウェラー。変わり種では可愛い子ちゃん系女性シンガーの、ルルなんてのもいる。

そしてもちろん、オリジネイターのデイヴ・メイスンやその盟友、スティーヴ・ウィンウッド、ジム・キャパルディもソロで録音している。

黒人ならこのフレディ・キングを代表格としてジャクスン5、オハイオ・プレイヤーズ、シュープリームス、フィフス・ディメンションと、さまざまな個性のアーティストがカバー。アイザック・ヘイズ、スタッフなんて人たちまでやっている。

白人が作曲したファンク・チューンとしては、もっともポピュラーになった一曲だといえるね。

さて、このフレディ・キング版は、ライブということもあいまって、非常にテンションの高い仕上がりだ。バック(フェンダー・ローズ、ハモンド・オルガン、ベース、ドラムス)の演奏も非常に重心の低い、スーパー・ヘビーなグルーヴだが、フレディはひとりでそれらに拮抗するボーカル&ギターを聴かせてくれる。

「気合い!」「一発!!」とかいうドリンク剤のCMに匹敵するノリといいますか、とにかく、フレディの歌声のインパクトは強烈だ。

トラフィックら白人系のバンドは、サビ、つまり「Feelin' Alright」の繰返し部分の歌を、コーラスにして迫力を出そうとしているのが多いが、フレディはそんなの必要なし。

ひたすらひとりで歌いまくって、全然問題ないのである。さすが、ミスター・タフネス。

これに太刀打ちできる白人シンガーは、ジョー・コッカーくらいしかおらんね(笑)。

ロック、ファンク、ブルース。すべてを飲み込んで、うねり流れる大河を思わせる、フレディ・キングのサウンド。

そのスケールの大きさには、ただただ脱帽であります。必聴。

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音曲日誌「一日一曲」#58 ルーズヴェルト・サイクス「Sweet Old Chicago」(Blues by Roosevelt "The Honey-Dripper" Sykes)

2023-05-29 05:07:00 | Weblog
2008年11月16日(日)

#58 ルーズヴェルト・サイクス「Sweet Old Chicago」(Blues by Roosevelt "The Honey-Dripper" Sykes/Smithsonian Folkways)





ルーズヴェルト・サイクス、61年の録音。彼のピアノによる弾き語り。おなじみロバート・ジョンスン「Sweet Home Chicago」を改題したナンバーである。

ブルース界には、やたら「キング=王」が多いが、「プレジデント=大統領」とよばれるアーティストは特にいないようである。

ジャズ界においてプレス(プレジデントの略)といえば、当然、レスター・ヤングということになっているが、もし、ブルース界でひとりプレスの称号を与えるとすれば、このルーズヴェルト・サイクスをおいてあるまい。

なにせ、名前からしてルーズヴェルトである。フランクリン・ルーズヴェルト大統領にちなんで命名された出生時(1906年)から、彼の大物ぶりは始まるといってよい。

戦前・戦後を通して、常に第一線で活躍、約50年に渡ってアメリカ国内でレコーディングを続けただけでも、その実力はハンパでない。

チョビ髭にオールバック・ヘアといい、押出しのいい体型といい、ミュージシャンにならなければ政治家になっていそうなキャラ。まさにブルース界のプレスである。

さて、今日紹介するのは、ロバート・ジョンスンの作品を、サイクス流にピアノ弾き語りにアレンジしたもの。タイトルも、都会風にちょっと洒落た「Sweet Old Chicago」に変えてあり、歌詞も結構変えてある。

ロバート・ジョンスンの原曲が、田舎に住みながら大都会シカゴを思う、そういう曲であるならば、サイクスのこの曲は、シカゴに長年住む者が、古きよき時代をしのぶ、そういう曲に仕立てられている。まさにアーバンなブルース。

弾き語りながら、原曲ではギターの低音弦が紡ぎ出していたブギのリズムを、ピアノの左手に置き換え、見事なノリを生み出している。

さすが、かのメンフィス・スリムにピアノを手ほどきしたというサイクス。そのリズムには、寸分の隙もない。

そして、特徴ある高めの声で、思い切りシャウトするボーカル・スタイル。これもサイクスならではの強烈な個性だ。

ロバート・ジョンスン、そしてその影響を受けたエルモア・ジェイムズ、マジック・サムらの、一連の流れとはまた違った、見事なアレンジに、ただただ感服。

他人の曲を演っても、自分の味にきちんと仕立てる、これが一級のミュージシャンの証明だと思う。

ジャズィな雰囲気を持ちながらも、ブルースのダイナミクスを持ち続けた、ワン・アンド・オンリーなサイクス。その歌声とピアノに酔ってくれ。

【追記】

本日、ある方から、本欄についてご意見のメールを頂戴しましたので、この場を借りて、レスさせていただきます。

「本欄の記述につきまして、事実との違いは多々あろうかと思います。それにつきましては、当方の浅学を恥じるしかございません。

しかしながら、ここは報道あるいは学術的なサイトではございません。いわば個人のひとりごと、趣味に関するオダを、脈略なく書き連ねたページにすぎません。たかだか一日数件のアクセスしかないサイトですから、社会的な責任など、あろうはずもないと思っています。

「こんなバカなことを書いている人もいるんだ。笑止千万」と呵々大笑されるのが、本欄に対する、もっとも正しい反応ではないかと思っております。

さまざまなご指摘をいただいたことは、ありがたく存じますが、本欄は今後もこのスタイルを変えずにやっていくつもりです。

よろしくご了解をお願いいたします。MAC拝」


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音曲日誌「一日一曲」#57 セントルイス・ジミー「Dog House Blues」(Goin' Down Slow/P-Vine Japan)

2023-05-28 05:06:00 | Weblog
2008年11月9日(日)

#57 セントルイス・ジミー「Dog House Blues」(Goin' Down Slow/P-Vine Japan)





日本のP-Vineレーベルから92年にリリースされた、セントルイス・ジミーのアルバムより、彼のオリジナルを。

セントルイス・ジミーこと、ジェイムズ・オーデンは1903年、テネシー州ナッシュヴィル生まれ。

8才で両親を失い、その後14才頃、セントルイスへ移住し、音楽活動を本格的に始める。芸名はもちろん、彼の地にちなんで付けられたものだ。そこで、名ピアニスト/シンガー、ルーズヴェルト・サイクスと知己になり、レコーディングでも共演している。

33年、齢30にしてシカゴに活動の場を移し、そして41年、名曲「Goin' Down Slow」のヒットを出す(55年にも再録音)。これにより「セントルイス・ジミー」の名は全国区レベルで知られるようになる。

吹き込んだレコードは、複数のレーベルにて、32年から55年の間に50曲ほど。しかし、57年、交通事故に遭い、入院したのがきっかけで、ソングライターに転向することになる。

以前から付き合いのあったマディ・ウォーターズ、そしてハウリン・ウルフらに楽曲を提供して、彼は後半生を終えることとなった。77年、シカゴにて逝去。享年74。

歌手としてのセントルイス・ジミーは自らピアノを弾きながら、訥々と半ば語るように歌うスタイルが持ち味だった。

その曲も、畢生の名曲「Goin' Down Slow」をはじめとして、苦労の多かった前半生を反映してか、ちょっと苦みのある内容のものが多い。

きょうご紹介するのは、「Dog House Blues」。これも複数回レコーディングを行っている曲だが、これはピアノ、エレキギター、ウッドベース、ドラムスというカルテットによる演奏だ。

バックにホーン・セクションが加わったバージョンもあるが、少人数のコンボによるこのバージョンのほうが、しっとりと味わい深いように思う。

ソリッドなギターに、オブリで決めるピアノ。ジャズィな演奏をバックに、かみしめるように歌うセントルイス・ジミー。決して派手なものはないが、ジンと心にしみてくる歌だ。

こういう歌は、やはりバーボン・ウィスキーをチビチビやりつつ、じっくりと味わうのが一番ですな。おすすめです。

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音曲日誌「一日一曲」#56 ゲイリー・ムーア「Walkin' By Myself」(Still Got The Blues/Virgin)

2023-05-27 05:00:00 | Weblog
2008年11月3日(月)

#56 ゲイリー・ムーア「Walkin' By Myself」(Still Got The Blues/Virgin)





ゲイリー・ムーア、90年リリースのヒット・アルバム「Still Got The Blues」より。ジミー・ロジャーズの代表曲のカバーである。

80年代までの彼は、ヒット曲を出さねばならないというプレッシャーに追われて、やりたい音楽をのびのびと出来ない状態だった。

が、90年代に入り、ふっきれたように自分が本来求めていた音楽をやりだすようになった。

その、「再スタート点」がこの「Still Got The Blues」だといえるだろう。

オリジナル5曲、カバー7曲という全12曲。この「Walkin' By Myself」のような年代もののブルースも、結構取り上げている。フェントン・ロビンスンやアルバート・キングの「As The Years Go Passing By」とか、ジョニー・ギター・ワトスンの「Too Tired」とか、オーティス・ラッシュの「All Your Love」とか。ゲイリーが個人的に一番リスペクトしている、ピーター・グリーンの作品「Stop Messing Around(モタモタするな)」も、しっかりと入っている。

ま、曲はブルースなんだが、歌いかたにせよ、ギター・プレイにせよ、おなじみのゲイリー・ムーア・スタイルには変わりなく、やたらハイ・テンションでタイト。

この「Walkin' By Myself」もえらく歯切れがよく、オリジナルのジミー・ロジャーズ版の、あの力の抜けた、いい意味でルースな感じとはまったく対極にある。

いわゆるブルース・ファンは、まったく受け付けなさそうな音だが、これはこれでブルースのひとつのありかたとして、アリなんじゃないかと筆者は思うとります。

ブルースということばは、楽曲の形式・構成のひとつの種類であって、そのサウンド、アレンジの詳細までは定義するものではないと、筆者的には考えているので、HR/HMなブルースがあっても、ヒップホップなブルースがあっても、いっこうに構わない。果たして、その音が自分の好みにあうかどうかは別問題だが。

というわけでコクニー流にいえば「ガリー・モー」の歌うブルースも、クラプトンあたりとはまた違った意味で、ブルースというものを世に広く知らしめているといえそう。

個人的にはタイトル・チューン「Still Got The Blues」、「As The Years Go Passing By」「Midnight Blues」あたりのまったり系、メロウ系よりも、この「Walkin' By Myself」、「Too Tired」のような、べらんめえ調のアップ・テンポのブルースの方が好きだ。

黒人ブルースとはまったくテイストは違うが、白人なりのブルース唱法&奏法を打ち立てたガリー・モーの、会心の一撃。そんな感じだ。

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音曲日誌「一日一曲」#55 ジョニー・ギター・ワトスン「Cuttin' In」(The Very Best Of Johnny Guitar Watson/Rhino)

2023-05-26 05:03:00 | Weblog
2008年10月25日(土)

#55 ジョニー・ギター・ワトスン「Cuttin' In」(The Very Best Of Johnny Guitar Watson/Rhino)





ジョニー・ギター・ワトスン、99年リリースのベストアルバムから、彼のオリジナルを。

ジョニー・Gことジョニー・ギター・ワトスンは、これまでも「一日一枚」で2回取り上げたが、いずれも後期、DJM時代の録音で、今回は1952~63年、彼の10代から20代にかけてのレコーディングをコンピしたものなので、時代はだいぶん遡る。

このナンバ-は、ブル-スではなく、ワルツ調のバラード。歌詞を聴いていただくとわかると思うが、ダンス・パーティでの恋のさやあてをテーマとしたもの。だから、ワルツってことやね。

ジョニー・ウィンターにも多大な影響を与えた、ラフなボーカル、そしてアクの強い、ペナペナ・ギター。サウンドは古めなれど、その個性は不変。ジョニー・Gは最初(ハナ)っからジョニー・Gであった、そう感じるね。

バックのストリングスは華麗なロッカ・バラード調だが、エッジのたった歌とギターは実にエグい。まさに好対照。

あまりシャウトは多用せず、ヘタレ系シンガーと思われがちな彼だが、この曲ではけっこうシャウターしております。

DJM時代のコンテンポラリーで洒落たサウンドも魅力的ですが、リーゼントでキメた、初期のブルースマンっぽいジョニー・Gもカッコええです。必聴!

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音曲日誌「一日一曲」#54 フェントン・ロビンスン「Slow Walking」(Night Flight/Alligator)

2023-05-25 05:09:00 | Weblog
2008年10月18日(土)

#54 フェントン・ロビンスン「Slow Walking」(Night Flight/Alligator)





フェントン・ロビンスン、84年のアルバムから、彼のオリジナルを。

本HPでフェントンを取り上げることは、これまでほとんどなかったですが(「パクりの殿堂」でECの「レイラ」のパクり元が、彼の作品「As The Years Go Passing By」だったなんて、小ネタぐらいですな)、ひと頃は日本でも、非常に人気の高いブルースマンだったんですよ、お若いの。

70年代、「ポストB・B・キングの急先鋒」みたいにいわれていた時期もあったぐらいで、人気投票でもつねに上位。現在のかすみ方が信じられないくらい。

それはともかく、フェントンといえば「Somebody Loans Me A Dime」(シングルは67年、アルバムは74年発表)、これでキマリ!みたいに片付けられがちですが、寡作ではありますがその後も何枚かのアルバムを出して90年代まで活動を続けていたんですよ。

で、これはアリゲイターからの3枚目ということになっていますが、実はオランダはブラック・マジック・レーベルが原盤という、いわくつきの一枚。

フェントンといえば、特徴あるメロウなギター・プレイばかり語られがちですが、もちろんシンガーとしても確かな実力を持っていて、それがあの「Somebody Loans Me A Dime」として結実したといえます。

力んで派手にシャウトしたりすることはあまりないですが、非常に深みのある、説得力のある歌声。繊細な高音と、包容力を感じさせる中低音をたくみに使いわける、見事な歌いぶりです。

フェントンの師匠格、レジー・ボイドのアレンジによる重厚なホーン・サウンドをバックに、彼のリズム感あふれるギターとボーカルが躍動する一曲。

メロウだけがフェントンじゃない、これを聴いてあなたもそう思うに違いありません。ご一聴を。

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音曲日誌「一日一曲」#53 ダブル・トラブル「Say One Thing」(Been A Long Time/Tone-Cool)

2023-05-24 05:00:00 | Weblog
2008年10月5日(日)

#53 ダブル・トラブル「Say One Thing」(Been A Long Time/Tone-Cool)





皆さんご存知、かのスティーヴィー・レイ・ヴォーンのバックバンドだった、ダブル・トラブル。90年、SRVの死後は、さまざまなアーティストのバッキングをつとめていたが、2001年、チームとしての初めてのアルバムをリリースした。それが「Been A Long Time」 だ。

SRV存命中はキーボード、ボーカルを含む4人だったが、SRV没後はベース&ドラムのコンビとなったダブル・トラブル。ベースのトミー・シャノン、ドラムのクリス・レイトンの二人組である。

もちろん、この二人だけではさすがにアルバムは出来ない。10年来、バックアップして来た数多くのアーティストのゲスト参加により、本作は制作されている。たとえば、ダラス出身のシンガー/ギタリスト、ドイル・ブラムホール、ダブル・トラブルと改名される前のトリプル・スレット時代のリードボーカル、ルー・アン・バートン、かつてのメンバ-、キーボードのリース・ワイナンス、ジョニー・ラング、ウィリー・ネルスン、ドクター・ジョン、そしてSRVつながりのジミー・ヴォーンといった錚々たるメンツである。

人脈総動員により完成したアルバム中でも、なかなか健闘しているのが、ドイル・ブラムホール(二世)。かつてダブル・トラブルの二人、そしてチャーリー・セクストンとで結成したアーク・エンジェルズで92年デビュー、最近ではエリック・クラプトン・バンドにも参加しているブラムホールは、ソロ・アルバムは3枚しか発表しておらず、セールス的にもまだ地味~な、いわゆる隠れた名プレイヤーなのだ。(ダブル・トラブルは、もちろん、彼のソロ・アルバムにも参加している。)

ちなみに、SRVに「Change It」など何曲かを提供しているシンガー/ギタリスト/ドラマー、ドイル・ブラムホールは、彼の親父さん、一世のほうなので、混同なきよう。

ドイル・ブラムホール・ジュニア、その歌声は線はあまり太くなく、ギターにも派手なものはないけど、実にツボを押さえたファンキーなプレイを聴かせてくれる。

もちろん、ダブル・トラブルのふたりのサポートも盤石。切れのいいビートは、さすがブルース・ロック界最強のリズム・セクションである。

同アルバムは、ブラムホールのこの一曲の他には、ZEPの「Rock And Roll」、マディ・ウォーターズの「She's Alright」なんぞをやっているが、半分は彼らのオリジナルでもある。

つまり、ただのプレイヤーではない、コンポーザー・チームとしての二人の実力も発揮されたアルバムといえる。

惜しむらくは2001年以降、第二弾のリリースはまったくされていないということ。ってことは、一回こっきりの企画盤なのかなぁ?

彼らの演奏力なら、新しいブルース・ビートを生み出すことも十分期待出来るだけに、ちょっともったいない。

ぜひ、SRVを越えるようなスゴいアーティストを発見して、世に送り出して欲しいもんだ。

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音曲日誌「一日一曲」#52 デトロイト・ジュニア「Anybody Can Have the Blues」(Turn Up the Heat/Blue Suit)

2023-05-23 05:02:00 | Weblog
2008年9月28日(日)

#52 デトロイト・ジュニア「Anybody Can Have the Blues」(Turn Up the Heat/Blue Suit)





デトロイト・ジュニア、95年リリースのソロ・アルバムより彼のオリジナルを。

デトロイト・ジュニアことエメリー・ウィリアムズ・ジュニアは31年、アーカンソー州ヘインズ生まれ。

晩年期のハウリン・ウルフ・バンドに加入、ピアニストをつとめていたひとだ。

70年代からソロ・アルバムを発表していたが、注目されるようになったのは、本作から。

アルバムは、彼の歌とピアノによる弾き語りの曲と、バックバンドがついたリズミカルなナンバーに大きく分かれるが、本曲は前者にあたる。

これがまあ、実に独特な味わいのブルースだ。やたらと力まず、塩辛声で飄々と歌いあげていくジュニア。

彼のピアノ演奏も、味わいがふかい。歌をそこなわず、しっかりとリズムを刻んでいく。見事な歌伴プレイ、まさに職人の仕事です。

当アルバムには、亡きボス・ウルフの代表作「Killing Floor」のカバーも収められているが、あえてバックをつけず、ピアノだけでガンガン歌いまくっている。なんともユニークな「Killing Floor」なのだ。

ジュニアは本アルバム発表の10年後、73才で亡くなっている。数枚のアルバムを置き土産に。

最晩年に10年間だけ、脚光を浴びつつこの世を去って行く。いかにも手練れの職人ブルースマンらしい、人生の引き際なんでないかな。

いわゆるプロフェッショナルな歌手ではないけど、本業のピアノだけ弾くのでなく歌もきっちりこなす、こういうのが本場のミュージシャンらしいところ。日本の歌わない(歌えない?)ミュージシャンの皆さんも、見習ってほしいもんだ。

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音曲日誌「一日一曲」#51 アン・ピーブルズ「I Feel Like Breaking up Somebody's Home Tonight」(The Best of Ann Peebles:)

2023-05-22 05:29:00 | Weblog
2008年9月21日(日)

#51 アン・ピーブルズ「I Feel Like Breaking up Somebody's Home Toniht」(The Best of Ann Peebles: The Hi Records Years/The Right Stuff)





黒人女性シンガー、アン・ピーブルズ、ハイ・レコードにおける72年のレコーディング。アル・ジャクスン・ジュニア、ティモシー・マシューズの作品。

アン・ピーブルズといえば、「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」のオリジナル・シンガーとして、ロックファンにも知られる存在だが、それ以外にも佳曲は多い。特にハイ・レコードに所属していた時期は、名唱が目白押しといっていい。この曲も、そのひとつ。

MG'Sのドラマー、アル・ジャクスン・ジュニアが曲を提供しているが、ビートといい、歌詞の内容といい、そしてなにより歌いぶりといい、実にへヴィなブルースに仕上がっている。

黒人女性シンガーにしては珍しくスレンダーな体から、しぼり出すように歌い上げるピーブルズ。その迫力は、重量級のビッグ・ママ系シンガーとはまた違ったもので、心臓をえぐり出すような鋭さに満ちている。

で、さっそくこの名曲に目をつけ、カバーしたのが、御大アルバート・キング。「Breaking up Somebody's Home」とタイトルを縮めて、同年のアルバム「I'll Play The Blues For You」の中で演っている。

アルバート・キングのバージョンは、歌いかたがかなり違っていて、彼流のソフトなスタイルで通している。一聴しただけでは、同じ曲とは思えないくらい。

でも、両バージョンに共通しているのは、道ならぬ恋の悲しみ、苦しみを訴える、心の叫びだ。歌の表現スタイルは対照的でも、きわめてブルースであるという点で、二者に違いはない。

今回は特別に、ふたりのバージョンを聴きくらべていただこう。いずれ劣らぬディープな表現力に圧倒されます。

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音曲日誌「一日一曲」#50 ボビー・パーカー「Shine Me Up」(Shine Me Up/Black Top)

2023-05-21 05:40:00 | Weblog
2008年9月15日(月)

#50 ボビー・パーカー「Shine Me Up」(Shine Me Up/Black Top)





おかげさまでこのコーナーも、無事50回目を迎えることが出来た。読者の皆さまに感謝感謝。

さて、50曲目はこれ。ボビー・パーカー、95年リリースのセカンド・アルバムより、タイトル・チューンを。

ボビー・パーカーは37年、ロサンゼルス州ラファイエット生まれ。おん年71才のブルースマンだ。

50年代初頭から、サックス奏者ポール・ウィリアムスのバンドに参加。57年以降はソロ・シンガーとしてデビュー。何曲かのヒットを持ちながらも、アルバムを出すことなく80年代までは陰の存在だった実力派。

そんなパーカーが、ついにブラック・トップよりアルバム「Bent Out Of Shape」を出したのが、92年。3年後にリリースしたセカンド・アルバムが、「Shine Me Up」だ。

先日とりあげたビッグ・モジョといい、パーカーといい、アルバム・デビューを果たすのが50代~60代ってのは、ブルースならではの話だろうねぇ。やっぱ、コドモには出来ん音楽だからかのぉ。

歌、ギター、曲作りともにこなすパーカー。カバーにほとんど頼らず、このアルバムも11曲中10曲、彼のオリジナルという徹底ぶりである。

曲調はブルースが多いが、ソウルな曲も結構ある。今日聴いていただくのは、ソウル系のナンバーだ。

ブラス・セクションをバックに、リラックスして歌うパーカー。少し高めで、辛口の声質が、いかにもソウルフル。

ギターのほうも、これ見よがしのテクを披露するということなく、控えめながら余裕を感じさせるプレイ。さすが40年のキャリアですな。この手のシニア系ブルースマンって、ギターは上手いけど、歌がイマイチってひとが多いと筆者は思っているんだが、パーカーについては、歌もギターも上手い。つまり、バランスが非常に良いのです。

かつてのヒット曲「Watch Your Step」は、ビートルズにも影響を与えたというパーカー。メジャーにはなりきれなかったが、そのシブい実力は、いろんな後続アーティストに影響を与えていそうだ。

知らない、聴かないままでは、もったいないのひと言。ぜひ、チェックしてみてちょ。

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音曲日誌「一日一曲」#49 エリック・クラプトン「Hey Hey」(Unplugged/Reprise)

2023-05-20 05:34:00 | Weblog
2008年9月7日(日)

#49 エリック・クラプトン「Hey Hey」(Unplugged/Reprise)





MTV企画でのエリック・クラプトン・ライブ。92年リリース。

クラプトンにはソロ・デビュー当時から、アコースティック・サウンドへの指向があったが、それが本格的に開花したのが、この「アンプラグド」である。

この曲は、ECのレパートリーとして知られる「Key To The Highway」の作者、ビッグ・ビル・ブルーンジーの作品。

ビッグ・ビルは戦前・戦中期におけるシカゴ・ブルースのボス的存在で、レコーディング曲数もハンパではない。「Hey Hey」は、51年に録音されているが、ECがこの曲を取り上げたことで、歴史に埋もれていた佳曲が、40年ぶりに命を吹き込まれたといえるね。

歌の構造はきわめてシンプル。「Hey Hey」という恋人への呼びかけの繰り返しが、ひたすら耳に残る。

思うにブルースの歌詞には、つぶやきというかモノローグ的なものもあるが、恋人への呼びかけ、哀願的なものが意外と多い。この曲もそうだし、同じく「Key To The Highway」の後半、「Give me one~」のくだりもそうだな。タイトルでいえば「Hey Bartender」「Hey Lawdy Mama」とか。

会話のセリフがそのまま歌詞になっていく。いかにも日常の詩(うた)、ブルースらしい表現だといえそう。

話は脱線するが、筆者はこの「Hey Hey」という曲を聴くたび、ついつい左とん平の「ヘイ・ユウ・ブルース」を思い出してしまう。

とん平氏の歌詞というかラップは、恋愛がテーマの「Hey Hey」とは全然違って社会派的なものだったけど、なにか歌の姿勢として共通したものがあるとすれば、呼びかけ、つまりオレはこう思ってんだけど、どうよ?みたいな他者への働きかけにあるんじゃないかと思う。いささかこじつけっぽいけど。

つまり、コール&レスポンス、他者との相互関係性こそが、ブルース的なのだ。

自己完結に終わったり、ナルシシズムに固まったりすることなく、つまり「ぶらない」ところが、ブルースの魅力なのだよ。

さてこの曲、ギター2本だけで、はねるような、躍動感あふれるリズムを生み出しているのが、実にいかしている。

高音に特徴あるリフが、耳に残る一曲。アコースティック・ブルースのスタンダードとして、残り続けることだろう。

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音曲日誌「一日一曲」#48 パーシー・スレッジ「You're Pouring Water On A Drowning Man」(When a Man Loves a Woman)

2023-05-19 05:28:00 | Weblog
2008年8月31日(日)

#48 パーシー・スレッジ「You're Pouring Water On A Drowning Man」(When a Man Loves a Woman/Collectables)





今月最後の一曲はこれ。サザン・ソウルの大ヒット「男が女を愛する時」で知られるパーシー・スレッジのデビュー・アルバムより。

パーシー・スレッジは41年、アラバマ州レイトン生まれ。10代より音楽活動を始め、20代は昼間は病院の看護夫、夜はエスクワイアーズというローカル・グループのボーカリストという生活をしていた。

そんなパーシーにチャンスが舞い込んできたのが、66年。白人DJにしてプロデューサー、マッスル・ショールズ・スタジオの経営者でもあったクイン・アイヴィーの目にとまり、彼の肝煎りで初レコーディング、名門アトランティック・レコードからデビュー・アルバムを出すことになる。

これがデビュー盤にして見事大ヒット。タイトル・チューン「男が女を愛する時」は40年以上を経た現在でも歌い継がれる、ソウル・スタンダードとなった。

が、スタートが幸運過ぎたのか、その後はせいぜい中ヒット程度しか出せず、「男が女を愛する時」を越えるバラードを生み出すことは、出来なかった。

嗚呼、まさに典型的「一発屋」。ショウビズの世界は、きびすぃ~っ!

でも、こう考えてもいいんじゃないかな。たった一曲だけでも、世界中のソウル・ファンの記憶に残る名曲を残すことが出来たんだがら、御の字だと。

パーシー・スレッジの顔がどんな顔かロクにしらないリスナーは多いけど、あの悲痛なまでにソウルフルな歌声は、聴けば一発でわかる。これぞ、歌手冥利に尽きるというものでしょう。

実際、彼のデビュー・アルバムのジャケットには、彼の写真が使われておらず、白人女性モデルの写真が使われているから、パーシーの顔を知らないひとが多いのも、ムリはない。

で、そのお顔を拝するに、歌声と同様、かなり暑苦しい感じで、女性とかひきそうなタイプ。こりゃあ、イメージ写真を使って、正解だったかも(笑)。

それはともかく、彼のデビュー・アルバムは急ごしらえだったらしく、他人のカバーが多い(11曲中6曲)ものの、非常に出来はいい。パーシーのために作られた曲も、もちろん粒揃いで、仕掛人アイヴィーの腕前を感じさせる。

本日聴いていただく「You're Pouring Water On A Drowning Man」は、ベイカー=マコーミックのコンビによる作品。サム・クックをちょっと思い出させる、陽気なミディアム・テンポのナンバーだ。失恋の痛手をユーモアで包んだ歌詞を、パーシーならではの張りのある歌声で熱唱している。

「男が女を愛する時」は、その力みまくった歌いぶりといい、多分に演歌チックな出来だが(まあ、それゆえに日本でもヒットしたんだろうけど)、パーシーにも、もっと陽性な、カラッとした持ち味があることがわかる一曲だ。ぜひ聴いてみるべし。

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音曲日誌「一日一曲」#47 ミシシッピ・ジョン・ハート「Hot Time In The Old Town Tonight」(The Best Of Mississippi John Hurt/Aim)

2023-05-18 05:12:00 | Weblog
2008年8月24日(日)

#47 ミシシッピ・ジョン・ハート「Hot Time In The Old Town Tonight」(The Best Of Mississippi John Hurt/Aim)





ミシシッピ・ジョン・ハート、66年の録音。トラディショナル・ナンバー。

1893年、ミシシッピ州テオクに生まれたハートは、1928年に13曲のレコーディングを行っているが、それきりチャンスはなく、農業をはじめとする肉体労働で生計をたてていたという。

ところが63年、齢70才にして、おりからのトラディショナル・フォーク・ブームもあって、再度、片田舎で暮らしていた彼に脚光があたる。

史上最高齢ともいえる爺ちゃんシンガー、カムバック・デビューである。

3年後73才で亡くなるまで、65年のニューポート・フォーク・フェスティバルに出演したり、数枚のアルバムをレコーディングするなど、充実した晩年を過ごすことになる。

まさに、人生最後にして初めて訪れた、輝かしき日々といえますな。

ハートの歌や演奏は、ブルースのジャンルにとらわれることなく、バラード、スピリチュアル、フォーク、そして流行り歌と、さまざまなスタイルの音楽を包括していた。

ブルース・シンガー以前から存在していた、いわゆる「ソングスター」とよばれる、歌うたいだったのである。

そのギター・サウンドはあくまでも軽快なフィンギー・ピッキングによるものだし、歌いぶりも、鼻歌ふうで力みのまるでないスタイル。

でもこれが実にいい味を出しているんですわ。

たぶん、歌もギターも、若いころから特に変化することなく、ずっとあのホンワカした感じだったんだろうな。

きょう聴いていただく「Hot Time In The Old Town Tonight」は、田舎の小さな町の、週末のダンス・パーティを歌ったトラッド・ナンバー。

肉体労働者の唯一の娯楽ともいえる宴のさまを、例の和みと癒しにみちた声で素朴に歌いあげている。

そして、意外と力強くしっかりしているのが、彼のギター・プレイ。フィンガー・ピッキングを志すひとにとっては、格好のお手本となりそうな、リズミカルな演奏も聴きもの。70代にしてこのプレイとは、さすが昔とった杵柄ですな。

ハート翁の最晩年の置き土産。日頃、刺激の強い音楽に食傷気味のかたにはおすすめの、心安らぐハッピー・ミュージックであります。

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音曲日誌「一日一曲」#46 ロベン・フォード&ザ・ブルー・ライン「Good Thing」(Handful Of Blues/Blue Thumb)

2023-05-17 05:32:00 | Weblog
2008年8月17日(日)

#46 ロベン・フォード&ザ・ブルー・ライン「Good Thing」(Handful Of Blues/Blue Thumb)





ロベン・フォード、95年のアルバム「Handful Of Blues」より、彼のオリジナル・ナンバーを。

ロベンは51年カリフォルニア州ユキア生まれ。フュージョン・バンド「イエロージャケッツ」のメンバーとして名を上げ、83年にバンドを離れてからはソロとして活躍している。

基本的にはジャズ畑のひとだが、ラリー・カールトンなどと同様、その音楽的ルーツにはブルース、R&Bが色濃く感じられる。

自らもブルース・ナンバーをよく歌い、これが結構イケるのである。ソロ・シンガーとしてやっていけるほどの個性はないが、バンドの一パートとしてのボーカルは、十分にこなしている。

「歌えるジャズ・ギタリスト」としては、ジョージ・ベンスンあたりを別にすれば、当代随一といえるんじゃないかな。

彼のバンド、ザ・ブルー・ラインはトリオ。ロベンのギターにベース、ドラムスという、いたってシンプルな編成である。この曲では、キーボードがゲストで参加しているが。

「Good Thing」は、ちょっとダルな、スロー・ブルース。ここでのロベンのソロがいい。ソリッド&クリアーでメリハリのあるサウンド、ブルースとジャズを巧みに織り交ぜたフレージング。

ことに、後半、尻上がりにエキサイトしていくところなど、カッコいいのひとこと。

でも、これだけセンスのいいロベンなのに、たったひとつだけ残念なことがある。

それは髪型、コスチュ-ムなどのセンスがイマイチなこと。もともと身なりに構わないってひとなんなら、まだいいんですが、本人はお洒落をしているつもりだから、タチが悪いのです。あれはどうにかならんものかねぇ~。

プロなんだから、専属スタイリストくらいつけたほうがいいのにと、彼の奇妙なステージ衣装を見るたびに思います。

ということで、そのファッションを除けば歌はうまいし、ギターは最高だしで、文句のつけようのないロベン君なのであります。

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