冬ちゃん

2018-01-09 14:43:34 | あれこれ
冬ちゃんは、『里帰り』に書いた高校時代に大嫌いだった友達である。
嫌いだった人のことを書くのはどうかと思うのだけれど、
なんだか冬ちゃんのことをいろいろ考えてしまったので、書いてみようと思う。

冬ちゃんとは部活が一緒だった。
クラスも同じだった。
一番最初に、部活の先輩だった「お兄さん」と私は、お互いに勘違いして、
恋に発展するかもしれないような状況になったことがあった。
でも、勘違いに気づいたお兄さんは、冬ちゃんとつき合うことになり、
私もそれを祝福し、私たちは兄と妹になった。

いつ頃からだったか、私は冬ちゃんのことをあまり好ましく思わないようになった。
でも、それは私の中に冬ちゃんにお兄さんを取られたという思いがあるからじゃないのかと自分で疑って、
そんな自分は絶対に嫌だと思って、
冬ちゃんのことを嫌いだと思わないようにがんばっていた。

でも、どうにもならない出来事があった。
2年の夏休み、合宿中の深夜だった。
冬ちゃんたちは起きて話し込んでいたが、私やMちゃんは寝る態勢に入っていた。
でも、寝つけなくて目は覚めていた。
そのうち冬ちゃんが、後輩の女の子たちにお兄さんとのことを話し出した。
その頃は、お兄さんとはもうあまりうまくいっていなかったようである。
冬ちゃんは、後輩の前でお兄さんのことをボロクソに扱き下ろした。
そりゃあ、恋愛中にはいろいろなことがある。
彼氏の愚痴・悪口を言うことは構わない。
でも、その場にいた後輩たちはお兄さんの後輩でもある。
みんなお兄さんのことをよく知っている。
個人的に話すのならともかく、その場には何人も集まっていた。
そんなところで言うのはルール違反じゃないのか!?

私はものすごく腹が立ってますます眠れなくなった。
一度寝返りをした。
後輩の一人が言った。「あれ?みなみさん起きてるのかな?」
それを聞いた冬ちゃんの声がする。「えーーーー!?困るぅ~~~!!」
明らかに冬ちゃんの側からも、私に聞かれては困る話だったのである。

私はその前から、冬ちゃんのことがかなり嫌いになっていたようだ。
Mちゃんも同じ部活だったのだけれど、
Mちゃんと冬ちゃんは仲がいいと思っていた。
Mちゃんは冬ちゃんのことが好きなんだろうと思っていた。
だから、冬ちゃんを嫌いだなんてMちゃんには言えないとずっと思っていたのを覚えている。
その翌日、Mちゃんと2人になる機会があった。
前の晩の出来事を抱えきれないでいた私は、思い切って言ってみた。
「こんなこと言ったら、私のこと嫌いになるかもしれないけど、私、冬ちゃんのことが嫌いなんだ」
Mちゃんは「私もっ!!!」と即答した。
私は、びっくりするのと同時にほっとした。
冬ちゃんのことを嫌いなのは、私の捻くれた心のせいじゃなかったんだと思えた。

Mちゃんとも冬ちゃんとも、1年も2年も同じクラスだったけれど、
1年の時は違うクラスだったはるちゃんという女の子がいた。
はるちゃんは家が私とは近くて、Mちゃんとも仲が良かった。
最初はMちゃんとはるちゃんと私と、3人で仲良くしていたのだけれど、
次第に私はMちゃんとはるちゃんの話についていけなくなった。
Mちゃんは私よりはるちゃんとの方が気が合うんだなと思った。
がんばって一緒にいたけれど、無理してるなあと思い、私は2人から少し離れた。
クラスには他にも仲の良い友達はいたので良かったのだけれど、
寂しい想いはしていた。

その時である。
私が2人から距離を取ったのを見て、冬ちゃんが私に接近してきた。
休み時間のたびに私のところにやってきてあれこれ話しだすのである。
あからさまな行動だったと思う。
他の友達も驚いていた。「冬ちゃんどういうつもりなんだろう?」って。

申し訳ないけれど、その頃の私は、冬ちゃんのことがとても嫌いだったし、
なんだか足元を見られたようでおもしろくなかった。
私がはるちゃんにMちゃんを取られて、冬ちゃんにお情けをかけられてるみたいじゃないか?
私はどうしても冬ちゃんに笑いかけることができず、つれない返事ばかりをしていた。
そのうちに冬ちゃんは、他のグループの子から嫌われていた別の女の子と仲良くなった。
冬ちゃんには、他に友達がいなかったのかもしれない。
確かに今思えば、冬ちゃんと仲の良かった子って誰だろう?って思いつかない。
でもその頃の私は、本当に冬ちゃんのことが嫌いで、そんな冬ちゃんの立場を思いやることなんかできないでいた。

でも別に大喧嘩をしたわけでもないし、「嫌い」って宣言したわけでもない。
部活も同じだったわけだし、冬ちゃんとはそこそこにつきあっていた。
学生時代に、冬ちゃんの下宿先に泊めてもらったこともある。
年賀状もずっと交換している。

その年賀状である。
冬ちゃんの年賀状は、家族連名で印刷されたものに何も言葉が添えられていない。
毎年必ずそうなのである。
宛名ももちろん印刷である。
私はこんな年賀状いらないと思った。
写真などの入ったオリジナルのものなら何も書いてなくてもいい。
でも、明らかに業者さんのデザインのただのはがきである。
「元気?」の一言もない。
心が狭かったころの私は、腹を立てていたが、思い直して私の方からはいろいろ書くようにした。
クラス会の案内とかにも、なんの音沙汰もないようなので、
一度年賀状に貼ってあったメールアドレスにメールをしたこともあった。
それでも返事はなかった。
何か精神的なものを抱えているのかもしれないなとも思う。
だったら、年賀状をくれるだけましなのかもしれない。

そんな状況の中で見つけたあのラブレターめいた手紙である。
冬ちゃんのことをいろいろと考えてしまった。
もしかしたら冬ちゃんは、本当に私のことが好きだったのかもしれない。
だったら、私は冬ちゃんにかなりひどい仕打ちをしたのかもしれない。
でもそれはしかたなかった。
私は本当に、冬ちゃんのことが嫌いだったのだから。

 みなみは冬にとっていちばんステキな女の子
 もし冬が男の子だったら絶対好きになってたはず

 前から思うのだけれど みなみと2人きりでお話すると冬はとってもあがってしまうの
 まるで男性といるときみたいに…

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