かすかな物語

2021-03-25 13:16:42 | 生い立ち・家族
あまりにおぼろげな話である。
かすかなかすかなイメージでしかない。

幼いころ、布団の中で母から聞いた物語。
(本当にそうだろうか?)

主人公(私)は、井戸の中を覗いている。
あるいは井戸の底から上を見上げている。

井戸の壁に、
覗いているのなら下の方。
見上げているのなら上の方。
とにかく手の届かない位置に、二つの小さなきのこが並んで生えている。

その片方のきのこは、かさの色が赤いのか、
蝶でも留まっていたのか、
リボンを着けているような可愛らしいイメージ。

可愛いのだけど、哀しい印象。

本当に母がこれに似た話をしたことがあるのか。
何かの出来事を、私がこんなイメージで記憶しているのか。
それとも夢の中の話なのか。

何年か前に、母の在職中に、教え子が井戸に落ちて死んだことがあったと聞いた。
そう言われれば、そんなことがあったような気もする。
そのことだろうか?

井戸の底から見上げているのだとしたら、
死者の目線とも考えられる。

胎児のままで亡くなった兄の思いだったのかもしれない。

だとしたら、二つのきのこは、姉と私?