La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

死者の日のピブ

2020年11月03日 | ユカタン諸々

映画「リメンバー・ミー」のおかげで日本でも知名度が上がったらしい、メキシコのお盆・死者の日(リンク先は2017年の村の)がやってきた。

死者のパンというほのかなオレンジ味のパンなどは共通しているが、ユカタン地方独特の食べ物に、ピブがある。簡単にいうと、トウモウロコシ粉で作った生地に肉や野菜を入れて焼いたもの。おそらくこの説明から連想される料理はいくらでもあるので、これを読んで想像してください。

とにかくそのピブは、日本のおせちと同じく、もう食べないという人や、どこかで買うという人や、焼くには焼くがオーブンで…という人などいろいろいる。メキシコへ来て4回目(正確には5回目だが、初年は到着してすぐで存在を知らなかった)にして、本来の作り方である、焼いた石と一緒に地中に埋めて焼いて作る工程を見学する機会を得た。その記録。

というか、前から見たいと思っていて、先週、誰かしないか聞こうと村役場へ行ったら、ちょうど来た女性がうちでするというので、見に行った。朝5時からと言われて5時20分に行った(メキシコでは「何時からと言われたら一時間以上経ってから行くのが普通」だが、念のため早めに)ら、この時期はまだ暗く、裏庭の電球が切れたので6時からと言われた。

 

   穴を掘る。

この一家の玄関先。年配男性が指示を出し、ときにやって見せながら、その子供世代が作業する。

   肉と野菜と生地。

その間、女性陣がピブそのものを作る。鶏肉と豚肉(ユカタンには美味しくて安い牛肉はない)。トマト、玉ねぎ、チリ唐辛子2種、エバソテ(日本ではアリタソウというらしい)と、クローブなどの香辛料。生地は、トウモロコシ粉。タコスでも何でもこの粉で作る。日本にあるやつとちがって、ここのは白いトウモロコシ。

 エパソテ。

 包むのに使うバナナの葉の準備。

大きい葉っぱをきれいに拭いて、左右二枚に分けて筋を取り、さらに大中小の幅になるように切る。

 

  

ブロックで湿った地面部分との境を作り、掘った穴にトタンみたいな板を敷いて、次に薪、その上に石。全部その辺にあるもの。今年はハリケーンも来たしここんとこ天気が悪いので、地面も薪も湿ってて材料集めが例年より大変だった。

 左側の橙色の壁の家。

この家は村の中心部にあって、うちのあたりほど木が生えてない。共同ゴミ集積所が閉鎖されてから剪定ゴミの処分で困っていた(以前はかまどで燃やしていた。野焼き禁止条例を受けてゴミ収集が始まったが、剪定ゴミの量が半端ない。でも別料金を払いたくない)が、今度から大きいのは取っておくことにした。

   生地。

ラードにアチオテというユカタンの調味料を入れて、熱して溶かす。これをトウモロコシ粉に混ぜる。パンみたいにこねるわけじゃないが、量が多いので大変そう。このアチオテ、日本でいう固形ブイヨンみたいな粉末を固めたものが売られていて、それしか知らなかったが、メルカード(市場)で売ってる黒い粒がそれだと判明した。粒ごとラードに入れて煮る。

  

そのアチオテを苦いオレンジの果汁に溶かしたものにコンソメとこしょう(たっぷり)を入れて、肉を漬ける。この方法で漬けた肉を焼いたものが、ユカタン料理として有名なコチニータ。

 

  

石の入れ方は、長老格がチェック。薪が燃えて石が熱くなり、薪が燃え落ちると石が穴に収まるという仕組み。

 シュロの葉の準備

バナナの葉で包んだものをさらにシュロの葉で包む。まず軽く炙って、葉の付け根を削って綺麗にして、2枚取って端っこの葉同士を結ぶ。

 本体と蓋部分の生地の計量。

  いよいよ成形。

シュロ、バナナの葉の筋、バナナの葉の順で敷いて、そこに生地を広げ、縁を立ち上げてお盆みたいにする。

    

肉と野菜を入れる。

  最後に肉のつけ汁をかけて蓋。

蓋の生地はくっつかないようビニールの上に広げておいて、詰め終わったら上から載せる。端をくっつけて形を整える。

  

バナナの葉をバナナの葉の筋で作った紐で閉じて、二枚組にしたシュロの葉でさらに包む。自分たちが食べる分だけじゃなくて、希望者に売る予約販売をするので、我々の分も合わせて21個。

 

 石も焼けて、包んだものも完成。

 石の上にトタン板を乗せて、シュロの葉を敷く。

   

ここからは、石の温度が下がらないように急ぐ。ユカタンでは滅多に目にしない、手早い作業w。シュロの葉の水分が蒸発して湯気が上がってくるところへ、包んだものを投入。上にトタンを乗せて、隙間を掘って出た土(この辺ではほぼ砂)で埋める。

  石の上にも薪など

今年は湿った地面によって熱を奪われて生焼けになるのを避けるため、念入りに薪を積んでいた。が、何しろ乾いた枝や丸太が足りないため、アスファルトの波板やヤシの葉も積んで火を付ける。

 

  2時間後、焼きあがる!

熱いから、出すのも大変。

   こんなの。

 まずは日本でいう盆棚にお供え。

話しかけることが大切なんだそうで、誰それさん、降りてらっしゃい、ピブ焼けましたよ、どうぞ…と、祭壇に向かって話しかける。

 ピブが焼ける前の祭壇。

一家はカトリックなので、マヤ文化バリバリの盆棚とはちょっと違う。

 

というわけで、念願の地中焼き(スペイン語でエンテラーダ、マヤ語でピビル)を見学することができた。ここからは、おまけ画像。

 一家の荷物運搬車。

1台のバイクをハンドル・前輪と、エンジン・モーター・後輪、に分解して、鉄製の枠で荷台、そこへプラスチックの椅子を乗せて座席部分も作り、荷台の片側へエンジン、もう片側へ別のタイヤをつけてある。究極の部品取り&改造。

 朝ごはんのコチニータ・タコス。

 死者の日のお供えの一部「甘いもの」。