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★高村祭。光太郎の詩碑「雪白く積めり」の前に、参加者を代表して、太田小学校2年生児童2名が献花する。
◆光太郎が、わたしの精神の内側に沿って魂の底に侵入したことが、これまでに2度ある。
1度目は、わたしが大学時代、卒業論文で、大東亜戦争下の詩人たちの戦争期から敗戦期に至る精神の変遷を取りあげているときだ。
わたしは、光太郎の「一億の号泣」を見いだす。
一億の号泣
綸言一たび出でて一億号泣す。
昭和二十年八月十五日正午
われ岩手花巻町の鎮守
鳥谷崎神社社務所の畳に両手をつきて
天上はるかに流れきたる
玉音の低きとどろきに五體をうたる
五體わななきてとどめあへず。
玉音ひびき終わりて又音なし
この時無声の号泣国土に起り、
普天の一億ひとしく
宸極に向かってひれ伏せるを知る。
微臣恐惶ほとんど失語す。
ただ眼を凝らしてこの事実に直接し、
苛も寸毫の曖昧模糊をゆるさざらん。
鋼鉄の武器を失へる時
精神の武器おのづから強からんとす。
真と美と至らざるなき我等が未来の文化こそ
必ずこの号泣を母胎としてその形相を孕まん。
(昭和二十年八月十六日午前花巻にて)
敗戦によって、一種の解体現象、あるいは深い挫折感に陥る文学者が多いなかで、光太郎のみは「鋼鉄の武器を失へる時/精神の武器おのづから強からんとす。/真と美と至らざるなき我等が未来の文化こそ/必ずこの号泣を母胎としてその形相を孕まん」と、戦争責任に服し、批正すべきは批正し、貫くべきは貫き、背筋を伸ばして、新しい生活を切りひらいていこうとする強靱な精神構造は、別格をなしていた。(この記述内容のつづきや、「2度目」については後日触れることにする。)
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★高村祭。地元の茶道サークル会員(三彩流新茗会)による献茶。
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★高村祭。献茶に使用する水は、この智恵子抄泉を使っている。
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★高村祭。花巻市立西南中学校1年男子による詩碑「雪白く積めり」の朗読。
雪白く積めり。
雪林間の路をうづめて平らかなり。
ふめば膝を没して更にふかく
その雪うすら日をあびて燐光を発す。
燐光あをくひかりて不知火に似たり。
路を横ぎりて兎の足あと点々とつづき
松林の奥ほのかにけぶる。
十歩にして息をやすめ
二十歩にして雪中に坐す。
風なきに雪蕭蕭と鳴つて梢を渡り
万境人をして詩を吐かしむ。
早池峯(はやちね)はすでに雲際に結晶すれども
わが詩の稜角いまだ成らざるを奈何にせん。
わづかに杉の枯葉をひろひて
今夕の炉辺に一椀の雑炊を煖(あたた)めんとす。
敗れたるもの卻(かえつ)て心平らかにして
燐光の如きもの霊魂にきらめきて美しきなり。
美しくしてつひにとらへ難きなり。
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★高村祭。花巻高等看護専門学校の1年生39人が先導し、参加者全員(300人くらい)で光太郎の詩「岩手の人」を朗読する。
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岩 手 の 人
岩手の人眼静かに、
鼻梁ひいで、
おとがひ堅固に張りて、
口方形なり。
余もともと彫刻の技芸に遊ぶ。
たまたま岩手の地に来り住して、
天の余に与ふるもの
この如き重厚の造型なるを喜ぶ。
岩手の人沈深牛の如し。
両角の間に天球をいただいて立つ
かの古代エジプトの石牛に似たり。
地を往きて走らず、
企てて草卒ならず、
つひにその成すべきを成す。
斧をふるって巨木を削り、
この山間にありて作らんかな、
ニッポンの背骨岩手の地に
未見の運命を担う牛の如きの魂の造型を。
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