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年金資金の管理運用機構(GPIF)の株式運用増加策には反対だ。

2014年06月19日 12時18分35秒 | 日記
このブログでも、我々の年金資金を管理運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国債などのリスクの少ない債券運用方針から、リスク負担の大きい株式へ運用のウエイトを移そうとしている。

 この話が政府の関係者から出ただけで、日経平均株価が1000円以上値上がりして,推移しているようだ。

 安倍首相の株価を上げる事だけで、日本の景気が良くなっていると見せようとしている。筆者はこの姑息な手段には同意できない。

 なかなかこれといった有望な成長戦略が打ち出せていないだけに、このような株価浮上策は、一時的な効果はあるだろうが、日本経済には決して良い影響を与えないと思っている。

 まず一番大きな懸念は、国民の年金資金を、あたかも国家の運用資金のような形で、株式市場に投資して、元本割れのような大赤字を出した場合は、だれが責任を担うのか?

 それだけではなく、数兆円以上の巨額が市場に投入される事により、いろんな形で株式市場に影響を与える事が考えられる。

 外資系の投機ファンドなどは、千載一遇のチャンスと、この貴重な国民の年金資金をむしり取りに群がるだろう。

 その上、大きく株価の変動が生じた場合、その会社の経営内容そのものまで、影響を与える可能性もある。

 自由主義国家の民間企業が、いつの間にか政府の強い干渉下に入り、それこそ国家による管理社会の中で運営される日本企業になってしまう可能性もあり、果たして国際社会で、自由な発想を持つ外資系企業と、対等に競争できるであろうか?

 この辺りの危惧を、経済評論家の 山崎 元 氏が、コラムに詳しく懸念材料として書いておられる。

(ダイヤモンド.オンラインより貼り付け)

2014年6月18日
山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

GPIFが株式を買い増ししない方がいい「5つの理由」

これが成長戦略とは情けない
安倍政権が打ち上げたGPIFの運用改革

 安倍政権がまとめつつある「成長戦略」には、やはりGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革が組み込まれている。事の善悪を棚上げして、相場予想だけを考えるなら、GPIFが国内株式を買うことによる株高、外貨建て資産を買うことによる円安(これも株高につながる)は、「一時的には」ある程度の効果を持つだろう。

 効果の大きさは当て推量するしかないが、少し考えてみよう。仮に新しい運用計画の「基本ポートフォリオ」で「国内株式」を現状で保有する約17%から、5%引き上げて22%にするとした場合、GPIF分だけで直接6兆5000億円の日本株買いが発生する。

 これに、GPIFの運用方針に影響を受ける資金(3共済と厚生年金基金)からも買いが発生する。さらに、GPIFのリスクとリターンと最適解計算の論理から見て、日本株のウェイトを上げる場合には、「外国株式」「外国債券」の組み入れも増えるだろう。

 ここから円安と、これによる株高効果が見込める。日経平均にして、かれこれ5000円くらい(全くの当て推量なのでアテにしないほしい)の上昇が「一時的には」あってもおかしくない。「日経平均2万円」なら政府も満足だろう。自慢げに胸を張る安倍首相の姿が、うっすらと目に浮かぶのは気のせいか。

 ただしこうした効果は、9月くらいと予想される新しい運用計画が「発表された後」に表れるわけではない。計画の見直し内容がわかるのと平行して、市場への影響は前倒しで表れはじめる公算が大きい。

 一方政府としては、期待が先走って株価が上がり、「消費税率10%」の可否を安倍首相が決断する年末に化けの皮がはがれて、株価が下がるような展開は避けたいだろう。

 また、過去の経験に鑑みると、公的年金の株式買いは上値を追うようなスタイルではなく、下げを飲み込むような形で、じわじわ進行する公算が大きい。GPIFがポートフォリオの調整にどのくらいの時間をかけるのかはわからないが、しばらく(数ヵ月?)株価が「下がりにくくて上昇しがち」な日々が続いて、買いが止まったところから、だらだらと株価が下がるような展開が予想できる。

 以下に説明するように、筆者はGPIFの、特に国内株式の買い増しに反対だ。だが、一時の株価の上昇はありそうで、これが景気に効く効果も多少はあろう。とはいえ、GPIFの株式買い増しのような、皮相的で弊害の大きな志の卑しい「公的株価操縦」政策が国家の成長戦略の1つだというのは、一国民として大変情けない思いがする。

GPIFが株式を買い増し
しない方がいい「5つの理由」

 GPIFが特に「国内株式」を買い増ししない方がいい理由を、以下の5つにまとめてみた。

(1)政府機関であるGPIFが上場企業の大株主となることで、政府は日本企業の株主であると同時に監督者でもあるという「利益相反」が強化される。

(2)GPIFが上場企業の大株主になることで、議決権の空洞化と企業統治の弱体化が起こる。

(3)大資金の公的資金であるGPIFの売買は市場参加者に利用され、国民の年金積立金の運用が「カモ」にされる。

(4)大きすぎる公的資金としてGPIFの情報管理が難しい。GPIFが運用方針に関する説明責任を十分果たすと市場参加者に出し抜かれやすくなるし、情報漏れは市場参加者間にとって不公平につながりやすい。

(5)GPIFに株式をため込んでしまうと、将来の年金積立金縮小の際の株価の下落などの影響が大きくなる。

 GPIFはすでに日本の多くの上場企業の実質的な大株主だが、「国内株式」に対する配分をさらに増やすと、ますます大きなシェアを持つ株主となる。株主は当然高い投資リターンを望む。

 一方、GPIFは政府の一機関であり、人間の行動に大きな影響を与える「人事」は政府の影響下にある。そして、政府の多くの官庁は管轄する業界を監督する役割を負っている。

GPIFと縁の深い厚労省は薬品業界の監督者
政府機関が大株主になることの「利益相反」

 前述の2つの利害の間には、小さくない矛盾の問題、つまり「利益相反」が存在する。

 一例を挙げる。GPIFと縁の深い厚労省は、薬品業界に対する監督者の役割を持つが、GPIFは製薬会社の株式を保有している。厚労省は、製薬会社が利益を上げやすい行政を行うことが製薬会社の株式のリターン向上につながるが、他方でこれが国民の健康や経済に対して好ましいとは限らない。たとえば、薬価をどう決めるのがいいか考えてみよう。利益相反が「ない」とは言えまい。

 同時に厚労省は、薬価や薬の承認をはじめとして、薬品株のリターンに大きな影響を与える重要情報を豊富に持った、第一級のインサイダーでもある。政府が薬品株の株価形成に関与することは、フェアでない。

 薬品業界以外にも、経産省、国交省、金融庁など、政府が業界の利害に深く関わる業種が数多い。

 政府が民間企業の株式を保有し高いリターンを目指すことと、政府の業界に対する指導や規制行為との間には、明白な利益の対立関係が存在する。

 GPIFが上場企業の大株主になることは、コーポレートガバナンスの上でいいことではない。

 推察するに、政府及び政府の意を受けた有識者たちは、株式の保有を民間に任せておくよりも、政府の意を受けた機関が大株主となって議決権行使などの働きかけを行う方が、企業経営に対してプラスの刺激となると考えている節がある。

 しかし、民間企業の経営に個別に介入しない建前の政府が株主となるよりも、直接の利害と経営介入への権利を持った民間株主が株主となる方が、企業経営にははるかに大きなプレッシャーがかかる。

 GPIFの議決権行使は、GPIFが大まかな方針を定めて、運用機関に対して投資リターン最大化のための積極的な行使と報告を求め、これをGPIFがチェックする形で行われる。個々の企業の議決権行使についてGPIFが個別に判断を示さないのだとすれば、GPIFは年金運用の受託者として十分な関与の責任を果たしていないと言えるし、個々に判断を示すなら個別の民間企業の経営に対する介入である。

 ところで先般、政府の意を受けて報告書が出た「日本版スチュワードシップコード」は、GPIFのような資産保有機関と運用会社の双方の機関投資家の行動方針を規定するもので、GPIFも受け入れを表明している。同コードの第5原則では、個々の企業の事情に応じた対話と議決権行使への積極的関わりが求められているが、これは、GPIFの「個別の民間企業経営への不介入」の建前と矛盾している。

 この状況は、投資家・運用者としてのGPIFにとって不都合なことだが、そもそも政府機関が民間の株式を大量に保有するという、制度の建て付けが悪いことに起因する。GPIFの国内株式買い増しは、この不都合の規模を拡大する。

 政府も投資家としてのGPIFも、企業経営に対する民間株主のプレッシャーが不十分だと考えているのかも知れない。しかしその目的のためなら、改革すべきは上場企業同士の株式持ち合いや、金融機関による株式保有など、経営者層が自らを楽にするために工夫している仕組みの排除ないしは軽減であって、公的資金による株式投資拡大は手段として不適切だ。

 GPIFが新しい基本ポートフォリオ(資産の配分比率)が決定したら、これを公開する必要があり、市場関係者はGPIFの今後の資産運用を推測することができる。

 もともと巨額の公的資金による運用にあっては、資金のスポンサー(GPIFの場合は年金加入者と納税者全体)に対する十分な説明責任を果たそうとすると、他の市場参加者にこの情報を利用される不利を被ることになる。

かつて行なわれた株価の買い支えで
公的資金の動きを利用した市場参加者

 1990年代に行われた公的資金による株価買い支え(当時「株価PKO」と呼ばれた)がそうだったが、公的資金の動きは他の市場参加者に読まれて、利用された。証券会社や機関投資家のトレーディングルームでは、しばしば「公的(資金)の買い」という言葉が飛び交っていた。

 端的に言って、公的資金の買いを見込んで株を仕込み、株価が上げた場面を利食い売りに利用する投資家が内外にいて、公的資金側は必要以上に高い株価で株式投資を積み上げた。公的年金は市場のカモにされたのである。

 加えて、GPIFのような大きな資金が予測可能な形で動くことは、市場の参加者としての金融機関にとって全般的に収益獲得のチャンスであり、加えてGPIFに関する情報収集で優位に立てる金融機関は、一層有利に収益を稼ぐ機会を得る。ヘッジファンドならずとも、運用成績が報酬に影響する市場の参加者が有利な情報にアクセスしようとするのは、「当たり前」である。

 GPIFの運用方針見直しは、GPIFの資金運用を受託して手数料を稼ごうとする金融機関と、GPIFの動きを利用して稼ごうとする金融機関の2種類の「金融的バイ菌」を増殖させることに繋がるだろう。

 経済常識的な推測としては、バイ菌に感染した人々が後押しして決まったものだと考えるのが妥当なのかもしれない。

 そもそも、巨額の資金を1ヵ所に集めて「管理し切れないほど重要な投資情報」をつくってしまったことが、市場に関わる制度設計として失敗なのである。

今後の公的年金制度の見直しに制約も
GPIFの株式買い増しは弊害が大きい

 冒頭に検討したように、GPIFが株式を買い増しする際には、株価は上昇する公算が大きい。これは、将来GPIFが積立金を縮小するときには、「公的資金の売り」が出やすいということだ。

 公的年金の積立金は当面取り崩しが必要だし、前述のような弊害を縮小するためには積立金自体の縮小を図ることが妥当だ。そもそも賦課方式である日本の公的年金は、130兆円に迫るほどの積立金がなくても運営できる。

 GPIFは国民から運用資金を召し上げて運用している巨大な投資信託のようなものだ。しかしGPIFに株を集めてしまうと、「株価に悪影響が出るから」という理由で、積立金の縮小がやりにくくなる。

 運用方針見直しによって株式に投資する額を大きくしてしまうと、今後の公的年金の制度的な見直しの制約になる可能性がある。

 GPIFの株式買い増しは弊害が大きい。

(貼り付け終わり)