木の実幼稚園のゆかいな仲間たち

愛媛県松山市にある『木の実幼稚園』の先生たちによるBlog

第47回 大寒マラソン大会

2024-01-22 18:30:00 | Weblog
2024.01.22


19日(金)から延期となった本日、

47回を数える「大寒マラソン大会」が

開催されました。


ただのマラソン大会にあらず。


突き詰めていくと、

人間形成における

かなり重要な体験の場であり、

そこまでの道程に重要な意味があり、

大会においては一人ひとりの子どもに

ドラマが描けるのです。


日々の園生活の中で、3年間

子どもたちはプレイコートを走ります。

戸外遊びに取り組む前に走ったり、

「今日は〇週」

「今日はこの曲が終わるまで」など

学齢やその日の状況によって

走る方法を変化させながら

園生活の一部として、走ります。

基礎体力や免疫力の向上、

全身運動による肺機能の向上といった

身体の発育の効果のみならず、

大会に取り組むことにより、

意識的に或いは無意識のうちに自分を知り

そして周りを知り、

自我や他我と向き合いながら

自分の目標を見つけていきます。


練習会や大会を通して

自分の心の中で沸き起こる感情を知り、

時には家庭で語らう中で

物事の捉え方や考え方を学んだり、

そして

自分の心の中でそれらを消化・吸収したり、

子どもたちは

本当に様々なことを経験していきます。

だからこそ、一人ひとりの子どもに

ドラマがあるのです。


今年は、年長の男の子と

年少と年長の女の子にスポットライトを当てて

ドラマのほんの一部を紹介させて頂きます。



半世紀近いマラソン大会の歴史の中で、

「大会3連覇」という

3年もの長い間先頭を走り続けた子が

過去に数名います。

今年も、それに挑戦した男の子がいました。


今年度1回目の練習会、1位。

万全。

2回目の練習会で、再び1位。

いよいよ盤石。


ただ過去に、

密かに優勝候補に挙げられた子が

直前に体調を崩したり

大会当日に力を発揮できなかったり

或いは競技中に転倒したりして、

悔しさでグチャグチャに泣いた経験があります。


「絶対は、無い。」


これがマラソン、

そしてスポーツ

そして人生の醍醐味です。


そこまでの道程があるからこそ

目標に届かなくても感動し、

或いは手が届いて感動するのだと思います。


この男の子、

「自信がある様子」

と、大会前に担任から聞いていました。


2024年1月22日

結果、見事に優勝。

この日、「絶対を覆す全ての不安要素」を跳ねのけ

見事に「3連覇」を達成したのです。


こうだい君、

まだ小さな君も

やがて立派な大人に成長します。


その途中、

君の行く手を塞ぐ壁が

何度も立ちふさがるでしょう。

くじけそうになる時もあるでしょう。


その時に、今日を思い出して下さい。

まだ小さかった君が、

大きな壁に立ち向かったことを。

そして

家族に支えられながら

その壁を飛び越えたことを。


担任の先生から聞きました。

大会に向けて

ずっと以前から練習を開始していたことを。

そして、毎日のように練習していたことを。

そんな自分が居たことを、

どうかずっと、覚えていてください。

優勝、そして3連覇

本当におめでとう。





話は、年少の女の子へ。


年少さんにとっては

初めての大会です。

どの子がどのくらい走れるのか、

我々にもわかりません。


練習会1日目に

1位になった女の子がいます。


練習会2日目、

順位を2つ下げ、3位に入りました。


競い合いのある競技なので、

よくあることです。

本当に大切なことは順位ではなく、

この時に 彼女が心の中で

どのような経験ができているのか、

ここが着目点になります。


どんなことを思いながら大会を迎えるのだろうと、

密かに注目していました。


結果は更にいくつか順位を落としたのですが、

胸が熱くなる出来事が待ってくれていました。


マラソンのコースは、

園庭を飛び出して右に急カーブを切ったあと

しばらく直線が続きます。

一人ひとりにとって

レース序盤の位置取りが決まってくる

最初の山場です。


その直線を走り終えたあと

左にカーブして川沿いを走るのですが、

私が今日いた場所が、

その「左にカーブするところ」です。


私の場所から

スタート直後のことはわかりません。

最初の直線も、見えません。

子どもたちの姿を最初に捉えることができるのが、

この「左にカーブするところ」です。


年少女児の部がスタートして

最初のランナーがこのカーブに入った時

先頭を走っていたのが、

この女の子でした。


練習会で順位を落としていた彼女が

レース序盤の山場で見せたその姿は


「1位になるんだ」


という

彼女の意思表示のように感じられて

ただただ胸が熱くなりました。


生まれてまだわずか4年ほどの子が

こんなに強い意志を持てるのかと、

その姿に感動しました。


その意味において、

既に順位は二の次なのです。




最後に、

年長の女の子のお話を記します。


練習会1日目、1位。

しかし、

過去2年度において

練習会・大会と

まだ一度も

「1位」を経験したことの無かった子です。


その子が、

ついに「1位」を手にした日になりました。


それから5日後の練習会2日目、

その小さな手のひらから

「1位」の看板が

スルリとこぼれ落ちてしまったのです。


序盤の「転倒」。

競技なので、どうしたって起こり得ます。


立ち上がっても

どうしようもない距離が広がっていた景色が

彼女の瞳にはどう映ったのでしょう。


泣きながら走りました。


痛みもあったでしょうが

体だけではなく

心も一緒に痛むんです。

だから

わかっていても

涙が止まらなくなるのです。

幼くても

どうしようもない距離だということを

「1位にはなれない」ということを、

理解したのかもしれません。


でも、その日彼女は

自分にできることをやりました。

泣きながら

ゴールを目指して走り続けました。


大会当日

一瞬だけ

練習会と同様に彼女の表情が崩れました。

練習会で見かけた泣き顔に近い表情です。


先頭で1週目を通過し

2週目に入るカーブで、

追走してきた女の子に並ばれ

そして一瞬抜かれたのです。


どんな気持ちがよぎったのでしょうか。


それからしばらくして

2週目を終えて最後の直線に入った時、

彼女は再び先頭に立っていました。


あおばちゃん、

今日という日は、

なんと得難い日になったことでしょう。


練習会の2日目に、

君はくじかれました。

不安を抱えながら

大会のスタートラインに立っていたかもしれません。

自信をもってレースに入れなかったかもしれません。

レース中に、

得体のしれない焦りを感じたかもしれません。


それでも、

君は全て克服しました。

まだ小さいけれど、

そんなにもすごい力が

君にはあるのです。

優勝、本当におめでとう。





マラソン大会のブログを記す際、

時折書かせて頂くのですが、

「順位が付く競技の経験」を大切にしつつ、

「順位そのものが大切なのではない」

ということを

同時にお伝えさせて頂いています。


子どもたちに順位を付けることについて

やわらなんとなく否定的な社会の空気があることを

我々は知ってはいるのですが、

そのようなことは

彼らが生きる将来においても、

どのような社会においても、

姿を変えて登場します。


普段から競争する必要なんかない。

でも、

競争が人を成長させるチャンスを生み出すことを

すべて否定したくはないのです。


だから、幼くても

順位と向き合う経験を

ほんのわずかでもすることによって、

その道程において

一人ひとりが目標を持てたり

なにかにチャレンジする意欲を持てることは

彼らの心の成長にとって

ちがう角度からの栄養となるのです。



PTA体育部の皆様、補助役の皆様

今年度の大会も

無事実施できました。

皆様のおかげです。

改めて感謝申し上げます。


また、地域住民の方々の交通の利便性向上のため

大会直前までいくつも表示を制作して下さった

好永さん、本当にありがとうございました。



第47回大寒マラソン大会 完



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