昨晩ふと、昨秋の運動会のことが思い出されました。
運動会の直後、蜂に刺されてしまった様子の年長児とそのお母さんを車に乗せ、
急遽会場から土曜日でも開いている皮膚科に走るといった出来事がありました。
子どもの様態も安定しているようなので
道すがら、以前からそのお母さんに聞いてみたいと思っていた質問を、
投げかけてみました。
「学生の頃、何かスポーツをされていましたか?」
帰ってきたのは「陸上をしていました」という返事でした。
その返事を聞いた私が思わず「やっぱり!」と少し大きな声になってしまったのには、
訳がありました。
車のバックシートに腰を掛けたその年長児が、
ちょうど1年前の運動会のリレーで見せた走るフォームがあまりにきれいで
「いつかチャンスがあったら、保護者の方にこの質問をしてみたい。」
と思っていました。
「やっぱり!」と少し興奮してしまった私は、
「どんな大会に出場していたんですか? どのくらいのタイムで走っていたんですか?」と、
不躾にも立て続けに質問してしまい、その子のお母さんは少々恥ずかしそうな面持ちで
「高校生の頃に県大会に出場して・・・その時点での県大会の最高記録でした」と、
話してくれました。
スポーツが大好きな私は「(うわぁ、県のナンバーワンのランナーだった人がこの人なんだ。)」と、
少し高揚していました。
「こはるちゃんのフォームがとてもきれいなのは、きっとお母さん譲りなんですね。」と、私が言うと
「いえ・・・年中の頃はまだフォームがフニャフニャで・・・その頃に一緒に練習したんです。」と、
当時を思い出しながら話してくれました。
その年長児は今年度の運動会で、年少から年長までの選手で構成されるチームでリレーに出場し、
優勝しました。
しかしその優勝は、ギリギリところで手繰り寄せた優勝と言えるほどきわどく、
運動会前の一カ月に渡る練習や総練習では、勝つよりも負けることの方が多いという具合に
優勝の見込みが決して高くはない勝負でした。
しかし、最後にトロフィーを掲げたのは
その子がいたチームでした。
「優勝おめでとうございました。 運動会に向けてどんな準備をしていたんですか?」と、
うっかりスポーツ誌の記者かというような質問をしてしまった私に
「・・・チームの友だちと練習していました。
実は・・・最初は同じクラスのあやみちゃんとしていた練習だったんですが、
そのうち集まれる子が一緒に練習してくれて・・・
夕食を済ませた後に車のライトの明かりで練習した日もありました。」と、
教えてくれました。
そのお母さんから話を聞いてみるまで、子どもたちが、そのご家庭や周りのご家庭が
どのような努力をされていたのか知る由もありませんでした。
しかし、何かに本気でチャレンジしようとした時、
努力を伴わない結果など無いのだと、再認識させられました。
ずっと以前、
スタジアムのホームストレッチを誰よりも速く駆け抜けた少女も、
きっと毎日 日が暮れるまで努力していたのでしょう。
その少女はやがて母になり、
それでも以前と変わらず
今度は母として全力疾走しているんだと、
静かに感動したことを昨晩ふと思い出しました。
そして同じように、
卒園までの毎日を大勢の保護者の方々と全力疾走で駆け抜けてきたことに、
感謝の気持ちが募ります。
卒園の日を迎える3月は、心がソワソワします。
お別れを間近に予感すると悲しくなってしまうので、
卒園のことは考えないように毎日を過ごすようにしています。
それでも明日はやってきます。
今年は新コロナウイルスの不安に世界が覆われ、
後の時代に振り返ると忘れられない年となるでしょう。
そんな時であっても、明日迎える式典に制約や制限があっても
いつもと変わらず心を込めて子どもたちを祝福してあげたいです。
努力が報われるとは限りません。
報われるあてがあって努力をしているわけでもありません。
でも、一人一人が心を込めて努力をしたこと足し算していけば、
かかわった全ての人の思い出に残る、
素敵な式典になると信じています。
卒園児のみんな、明日は忘れられない年の、忘れられない卒園式にしよう。
みんなの力を足し算しよう。
僕たちは、そうやってみんなで3年間過ごしてきたから。
K.N.