木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

何はともあれ王座戦

2012-09-06 12:51:53 | 将棋
昨日の王座戦第二局は、大変な話題になっている。
今日、勤め先に出勤してみると、
どこもかしこも「昨日のハブ、見たか?」の話題ばかりである。

そして、ネット上では、
昨日の対局をガンダムに例えると、どういうことになるのか?
という話題でもちきりだという。

そこで、私なりの検討結果を示したい。

昨日は、羽生先生が「角交換四間飛車」を採用したことで話題になった。

羽生・渡辺戦は、がっちりした居飛車、
野球に例えると、両軍右のエースが登板する本格派の試合になることが多いのだが、
この戦法は、意表を突くものである。
「ダルビッシュ」の先発が予告されていたのに、ふたを開けてみたら
「坂東栄二」がでてきたようなもの、と表現すればよいだろうか?
いや、それは極端だ。

まあ、それはともかくとして、これまた多くの解説のあるところだが、
この「角交換四間飛車」は、羽生先生が直前の王位戦で戦った
藤井九段の得意戦法であり、というより、
トップ棋士で、その戦法を使うのは、ほぼ藤井九段に限られている。

なぜ、あまり人気がないかというと
「手詰まりになり易く、攻めを組み立てるのが大変」という戦法である。

(なお、この言葉は、
 昔、タモリ先生が、ふかわりょう先生と共演するときの苦労として語った言葉にそっくりである)



そして、羽生先生自身が王位戦で藤井九段の角交換四間飛車を破っている。

(・・・とはいえ、その闘いは
 羽生先生ならではの中盤から終盤の鬼気迫る異様な攻めと、
 あっとおどろく受け流しであり、
 藤井九段の戦法そのものが悪かったと断言できる
 内容ではなかったわけだが。)


さらに、重要なのは、渡辺王座自身が、
一年ほど前の棋聖戦挑戦者決定戦で、
角交換四間飛車を用い、深浦九段に粉砕されている、という点である。

その負けっぷりに、
当時の振り飛車党党首久保九段は、
「深浦九段の対策は完璧だった。
 私は、角交換四間飛車を指したいとは思わない」とコメントしており、
この戦法、苦労が多い、というのは、多くのプロ棋士の感覚だと思われる。


さらに悪いことに、昨日の横浜決戦で、渡辺王座が選んだ戦法は
「居飛車四枚穴熊」であった。

(ちなみに、昨日の対局場は、
 これまでの対局場で最も高い建物とされる横浜ランドマークタワー。
 高さ270mの対局場の高さの更新は、
 2024年の棋聖戦第二局(豊島棋聖VS中村太地棋王・王位)の
 スカイツリー決戦まで待っていただくよりほかない)

この居飛車四枚穴熊は、渡辺王座の勝率が9割近い戦法であり、
まさに鉄板戦法。いや、鉄板流は、森内名人だ。

まあ、とにかく、9割勝つ戦法であり、
夕食休憩までは、羽生挑戦者、道険し、の空気が漂っていた。

なにしろ、羽生挑戦者は、夕食休憩までに
玉が行ったり来たりすること実に9回(だったよね?)。

サッカーに例えると、前半45分で、
左サイドバックと右サイドバックが、9回ほど
無意味なポジション変更をしているようなものである。
(さっぱりなたとえだ)


敵は勝率9割の居飛車四枚穴熊、
自らはほとんどのプロが敬遠する戦法、
その上、何も意味がなさそうなポジション変更を9回。

恐らく、アマチュア初段前後の中途半端なファンは
「ヤル気あるのか?」と、つっこんだことだろう。


しかし、羽生先生の恐ろしいのはそこからであった。
なんと、シンドイと言われた端攻めを成功させ、
最終版で金引き(見た目防御力が下がりそうで、
唯一成功する防御の手)の好手で一手勝ちに持ち込む。

この試合を観戦したファンの多くが
「こんな素晴らしい試合を観戦できてよかった。
 この試合を堪能できない将棋ファンでない人間は、本当に哀れだ」
と思っただろう。私も思った。


それはさておき、これを最後にガンダムに例えてみることにしよう。
羽生、渡辺戦。これをアムロ・シャア戦に例えることに
文句のある人はいないだろう。

続いて、渡辺=シャア機だが、これは9割勝率の鉄板ということで、
シャアの最終搭乗機であるサザビーということでよかろう。

いや、居飛車四枚穴熊は、攻撃力を犠牲に異様な防御力を誇る戦法。
はっきり言って、ハイメガ粒子砲はついていない。
穴熊は、搭乗機というより、むしろ要塞。
というわけで、渡辺=シャア機は、宇宙要塞ア・バオ・アクーでよかろう。

他方、羽生二冠=アムロ機だが、
これは、ほとんどの人がのりたがらず、また、
どちらかというと自分とは違う陣営の人々の機体で
かつシャアが一回乗った機体なら、何でもよい。

この条件を充たすのは、文句なしにアッガイだろう。



これで例えが完成した。昨日の王座戦第二局をガンダムに例えると、

「アムロが、アッガイ(角交換四間飛車)に、
 乗り降りを9回繰り返しながら(9手損しながら)、
 シャアの指揮するア・バオ・アクー(四枚穴熊)を
 足一本になりながら(一手勝ち)攻略した闘い」

ということになる。

私としては、様々な分野の知識を総動員して作り上げたたとえだが、
これで伝わるだろうか?





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4 コメント

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Unknown (ザッキー)
2012-09-06 17:51:02
例えるなら、2024年NHK将棋杯トーナメントで、因縁の佐藤棋士対豊島棋士戦が行われ、対局前インタビューで、佐藤棋士が、ヅラをつけず、ギャグもなし、淡々と応えた後、将棋までも勝ってしまうぐらいの出来事と、理解してよろしいのでしょうか?
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Unknown (Jiro)
2012-09-06 20:04:52
王座戦第2局は、序盤・中盤・終盤、隙なくおもしろかったですね。

名局賞級だと思うのですが、、、

思うのですが、、、

羽生先生には居飛車で勝負してほしかったというのが本音です。

(渡辺王座が心の中で「逃げないでくださいよ、羽生さん」とつぶやかれたような…)
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Unknown (Anderson)
2012-09-07 21:03:43
私も一昨日の王座戦はニコ生でずっと見てましたが、すさまじい対局で、
先生と同様何かに例えられないかなぁ・・・とずっと考えていたのですが、
よい例えが全く浮かばなかったのであきらめました。

残り時間1分で竜王がひねり出した▲4六桂が印象的でした。

それはそうと、このまま高さを追求していくと、
そのうち銀河戦も国際宇宙ステーションで行われるようになるのでしょうか。
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>Andersonさま (kimkimlr)
2012-09-10 14:50:14
はい。
来年は、木星上空のモノリス様の御前で行われます。
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