木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

会員限定PTA活動の学校施設利用

2017-06-02 22:52:13 | お便りコーナー
お便りいただきました。

木村先生の御意見、「学校教育法137条により、学校施設の学校教育以外での利用は、社会教育その他公共のために使う場合でなければならず、会員(の子)限定サービスは 『公共のため』 とはいえなからダメ」 というのは、下記【A】~【C】の、何を指しているのでしょうか? (すべて該当?)

【A】…PTA主催イベント等の活動場所として、学校施設 (校庭や体育館など) を使わせてもらえる。
【B】…【A】だけでなく、365日いつでも、学校施設内に事務局 (PTA室) を置かせてもらっている。
【C】単に学校施設 (学校という場所) を使わせてもらえる (【A】と【B】) だけでなく、しょっちゅうプリントや記念品を先生に配ってもらったり、授業時間に入り込んで親子レクをさせてもらったり、会費の集金,役員の選出,総会の開催・・・「学校の内部組織?」と誤解されるほどに、全面的に学校 (=公務員である先生たち) の協力を得ながら、運営させてもらっている。


会員限定サービス(を規約に書いてある変なPTA)だと、
学校全体(非会員の子息を含む学校に通う全児童生徒への)の教育とは無関係になるので、
少なくとも学校教育目的ではないことになり、
Aをするには他の団体と同じ手続きや手数料が必要になります。

なお、会員限定サービスでAをする場合には、
その施設を学校教育で利用しない時間帯であることが絶対の条件になります。
(学校施設は学校教育目的の利用が最優先されるためです)

さらに、学校は、保護者に対して、いじめ防止を推進するための啓発活動を行う義務があり
(いじめ防止対策推進放8条)、
保護者が、非会員の子どもに疎外感をいだかせるような
非学校教育目的の地域活動(要するに会員限定PTA活動)を行っている場合には、
改善をするよう必要な措置をとらなくてはなりません(同法7条)。

会員限定プール解放イベントも、いじめを誘発するようなものになっている場合には
学校は、やめるなり、非会員にも開放するなり、保護者つまり会員限定PTAの主催者に
指導をしたり、そのような団体に施設を課さないようにしたりするなり、すべきでしょう。

ということで、Aの場合は、
リトルリーグやサッカー教室、ママさんバレーと同様の手続きで借りることはできるのですが、
それは
①学校教育目的では利用していない時間帯でないといけない
 (休日や、児童生徒がいったん全員下校した放課後のみに限定、学校教育法137条の趣旨)し
②いじめを誘発させるような疎外感を発生させるものでもいけない(いじめ防止対策推進法)
というのが絶対条件になります。

まず会員限定PTAの場合、学校教育での利用時間と被るような形で
施設を利用することも多いので、①要件はかなり効果を発揮します。
(会員限定PTAお祭りをやる場合は、いったん、子どもたち全員が下校し、
 下校完了以降に準備をはじめ、準備が終わったところで
 再度、会員の子どもたちが学校にやってきて開始となる。
 面倒くさい・・・。
 が、ママさんバレーなどは、当然、子どもたちの下校後からでないと活動できない)

さらに、野球やサッカーなど、一部の児童生徒が趣味でやるものだと
②の要件はさほど問題になりませんが、
単なるお遊戯会やお祭り、ゲーム大会などだと、②の要件はかなりきつくなってくるので、
会員限定PTAがこの二条件を充たしながらそれらの活動をやるのはとても難しいのです。



次に、通常、一般の団体が、学校施設の専有を認められることはないので
公平の観点からBはありえないことになり、
また、Bを本当に認めるなら
他の団体も専有を申し込めるようにしないと平等原則(憲法14条1項)違反でしょう。
(実際にはそんなことは無理なので、
 会員限定サービスつまり学校教育目的以外の団体に施設を専有させることは不可能です)


Cについても、プレゼントなどを配る行動は、誰が配るのであれ、
会員限定サービス(学校教育目的ではない活動)を会員限定PTA
(先生がやる場合も会員限定PTAの役員ないし代理人としてがやっている)ということなり、
Aと同じ扱いになります。
(なお授業時間やホームルームの時間、学校行事などの時間にこれをやると、
 学校教育目的で利用すべき時間帯に
 学校教育以外の目的で施設を利用させたことになり、違法行為になります)

なお、以上は、法律家によって意見が分かれ得るような論点ではなく、
法律を読めばそう書いてある、というものです。

で、実際問題、PTAはAからCを許されているのですが、
それは、学校に通う児童生徒全員のための活動なので、
PTA活動は「学校教育目的活動」に該当するという説明が可能なためです。
(会員限定でないから、AからCが許されるわけですね)

AからCの特権を与えられたPTAは、
普通、規約や定款に会員限定サービスとは書いてありません。

そうした学校教育目的とされたPTAが、
実際には会員限定サービスとして施設を利用した場合には、
目的を偽って施設を利用させてもらったことになりますので、
学校に対する詐欺行為になる可能性もあります。

また、非会員の子どもであっても、
PTAに対して規約通りに、自分たちにもきちんと利益を与えるよう請求できますから、
(非会員の子どもを含めて利益を与えることを学校に約束しているので、
 子どもは学校を介してPTAに要求できます)
父や母が非会員だろうと、子どもは堂々とPTAに要求しましょう。権利です。

と言った感じでどうでしょうか。

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6 コメント

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Unknown (非会員です。)
2017-06-05 08:53:15
お返事、本当にありがとうございます。

私が知りたいのは、サイトンさんと同じく、下記の点なのですが、

[ 別エントリhttp://blog.goo.ne.jp/kimkimlr/e/17eefb8bc1c3dded29765a901d1f5070への、サイトンさんのコメントより ]
>>学校施設の利用を認めても違法ではないような気がします。
> (意見)
>ここでの“学校施設の利用”とは、新しいブログエントリに書かれた例ではどれに該当するのでしょう。【B】は会員限定PTAに対しては認められないと思うのですが、“一部だけ”会員限定サービスもあるPTAに対して であれば許されるものなのでしょうか。

スポ少や子供会などと同じように学校施設の使用手続きをするのであれば、PTAが会員(の子)限定イベント(←もちろん学校教育時間外)実施のために学校施設を利用するのを認めても違法ではないような気がする…が、
PTAのイベントは、どうしても “単なるお遊戯会やお祭り、ゲーム大会” のような類のものになるだろうから、会員の子しか参加できないとなると、非会員の子に疎外感を抱かせる恐れがある。
だから、保護者であるPTA役員たちが学校施設内で(…たとえ公民館など 学校以外の場所であっても)、 そんなイベントを会員(の子)限定で行おうとしているのであれば、いじめ防止対策推進法により、学校には、それをやめさせる義務がある。(やめさせなければ違法)

したがって、たとえ学校教育時間外であっても、会員(の子)限定サービス活動をするようなPTAに、【B】【C】 の特権を学校が与えることは、感情論や道徳論だけでなく、法的にも有り得ない…との御意見でしょうか?


>以上は、法律家によって意見が分かれ得るような論点ではなく、法律を読めばそう書いてある、というものです。

法律のド素人であり、学歴も何も無い一般市民の主婦である私が、木村先生に対して こんなことを申し上げるのは恐れ多いのですが (どうか気を悪くされないで下さい!)、
いじめ防止対策推進法には、「どういう言動がダメで、学校は禁止しなければならない」 と具体的には書かれておらず、「学校には、PTAによる会員(の子)限定サービスをやめさせる法的義務がある」 というのが、すべての法律家に共通の認識である、ということにはならないような…。

法律家の中にも、あの大塚嘉一氏とか、こんな弁護士 (http://www.yama-nori.com/blog/?p=243http://www.yama-nori.com/blog/?p=247) とか、熊本PTA裁判で 「PTAに入らない選択をした以上、お子さんが恩恵を受けられないのは当然、仕方ないんじゃないですか」 と言い放った裁判官とか、色々いますよね…。


私自身、「PTAを名乗って活動する以上は、アメリカでPTAが発祥した当時の立派な理念を守ってもらいたい」 と感情の部分では思っていますが、
「学校には、保護者に対して、いじめ防止を啓発する義務があるから、PTAによる (学校教育時間外の) 会員の子 限定サービスをやめさせることは法的義務」 というのは、どうも違和感があるのですが…。


いじめ防止対策推進法が施行されたのは2013年9月であり、そんなに昔の話でもありませんが、
それ以前には、「 “一部だけ” であっても (学校教育時間外の)会員の子 限定サービスをするPTAに対しては、【B】【C】 の特権を認めてはならない」 ということに法的根拠は無かった、のでしょうか。


また、「会員(の子)限定PTAイベントは、非会員の子へのイジメに繋がる」 というのは、「PTAに加入する保護者が圧倒的大多数である」 という前提での話だと思うのですが、
もしPTAが本来あるべき形・・・つまり完全入退会自由であり、非加入者に対して批判的な雰囲気もなければ、加入する保護者の方が少数派かもしれません。 加入率2~3割くらいが自然な数字ではないか、と。

PTAに加入している2~3割の保護者たちが、PTA活動として学校運営を支援し (=すべての児童が対象)、それと並行して、学校教育時間外には、会員の子 (2~3割の児童) だけに参加資格のあるイベントもする…ということならば、それが非会員の子 (7~8割の児童) へのイジメに繋がるとは考えにくいような…。

その場合は、「会員(の子)限定サービスの存在によって、7~8割を占める非会員の子へのイジメを心配する必要は無いから、そのPTAを学校支援団体と認めて 【B】【C】 の特権を与えても問題なし」 なのか、
或いは、「会員・非会員の割合とか、イジメの可能性は関係ない。たとえ〝一部だけ” であっても、たとえ学校カリキュラム外であっても、とにかく非会員の子を排除する活動を行っているようなPTAが、【B】【C】 の特権を与えられるなんて有り得ない」 のか・・・どうなんでしょう?
(後者の場合、その法的根拠は?)


※尚、「PTAによる 学校カリキュラム外での 会員(の子)限定活動」 は、その開催告知・参加者募集プリントの配布や、取りまとめ作業を、教室で先生に やってもらうのではなく、役員が自力で行う、という前提で、このコメントを書いています。


ちょっと話が逸れますが、私が住む地域の自治会は、全世帯加入が当然との雰囲気ですが、その自治会の傘下組織として、「子供会」 があり、自治会加入世帯の小1~中2までの子が自動的に会員となり、母親たちには子供会の世話役をする義務が課せられます。
(小学校PTAと子供会とが癒着・連動している例も多いようですが、うちの地域の小学校PTAと、子供会とは、完全に独立して別組織です。)

その子供会は、スポ少と同じように学校施設の使用手続きをして、小学校の体育館で 「お楽しみ会」 などのイベントをします。みこし祭りや、半日バス旅行など、学校施設以外の場所でのイベントもあります。
私は以前、子供会の世話役を引き受け、これらのイベントの企画・運営にも関わりました。

その後、思うところあって自治会を脱退した為 (たぶん、唯一の非加入世帯)、それに伴って、私の子も 自動的に子供会から抜けたことになり、子供会イベントへの参加資格や、子供会から記念品をもらう資格もなくなりました。
PTAとは違い、自治会や子供会というのは互助会なのでしょうから、それは当然のことと納得しています。

幸い、うちの子は 子供会に興味がないので、イベントに参加できないのを嫌がることはありません。
しかし今後、もし他にも誰かが自治会を脱退したら、その家の子は、子供会イベントに参加できないことを悲しく感じるかもしれないし、「イベント参加資格を持つ子が圧倒的大多数である」 という状況から、その子へのイジメに繋がる可能性もあるかもしれません。

その場合、「保護者に対して、いじめ防止を啓発する義務がある」 うちの地域の小学校・中学校は、子供会の世話役 (=その小・中学校に子供を通わせている母親たち) に対して、「自治会非加入世帯の子も、子供会イベントに参加させろ。それが無理なら、イベントをやめろ」 と指導する義務があるのでしょうか?

それは、何か違う、と感じるのですが…。 (どうなんでしょう?)


色々と質問させていただきましたが (本当に長文で すみません)、最後に、岡山西小学校PTAのプール開放について。

岡山西小PTAによる、プール開放での児童差別は、 木村先生も解説を寄せられている、大塚玲子さんの 「PTAをけっこうラクに楽しくする本」 に載っている話です。(入退会自由化を実現した成功例として、このPTAが好意的に紹介される中で、プールの話も出てくる)

このPTAの会則が、どのように書かれているのか分かりませんが、現実として、すべての児童が対象の活動だけでなく、 会員(の子)限定サービスも行っており、それにも関わらず、【B】【C】 の特権を与えられているのでしょう。
校長先生は、プール開放のことを承知の上で、「児童差別といっても、夏休みのイベントだから、学校カリキュラムとは無関係だし、それにプール以外の面では学校運営に協力し、すべての児童を対象に活動してくれている団体なのだから、【B】【C】の特権を与えることに、何も問題は無い」、と考えておられるのでしょう。

木村先生は、「たとえ スポ少などと同じ手続きをしてプールの使用許可を取っているのだとしても、非会員の子を差別するPTAに対して、【B】【C】 を認めている岡山西小学校長の判断は間違っている。道徳論だけでなく、法的にも問題がある」、との御意見ですか?
法的に問題あるとすれば、その根拠は、「いじめ防止対策推進法」 ですか?
>非会員様 (kimkimlr)
2017-06-05 16:17:24
私が言っているのは、
「会員限定サービス」が違法だということではなく
「いじめ助長」(となる会員限定イベントやサービス)が、
いじめ対策法の適用対象だということです。

ですから、
「学校には、PTAによる会員(の子)限定サービスをやめさせる法的義務がある、というのが、すべての法律家に共通の認識である」といいたいのではなく、
「学校には、いじめを助長したり、いじめの原因になると認定されたPTAの会員限定サービスに対し指導をする義務がある」というのが、
法文上明らかだと言っているわけです。

もし、法律家の共有する認識になっていないかもとご不安があれば、
弁護士さんや学校長や教育委員会の方に、
「いじめを助長する」PTAの会員限定サービスは
いじめ対策推進法の指導対象ですか?
と聞いてみてはどうでしょうか。

もちろん「いじめを助長する」と認定できないものについては
「いじめを助長する」行為への対策法は適用できないと言われるはずですが、
「いじめを助長する」行為であれば、
当然
「いじめを助長する」行為への対策法の適用対象になります。

ということですが、どうですか?


Unknown (非会員です。)
2017-06-10 14:45:05
お返事、ありがとうございました。(御礼が遅くなってしまって、すみません。)

私の読解力が乏しく、先生の仰ることをよく理解できていなかったようで、申し訳ありませんでした。解説、本当にありがとうございます。

今後、メディア等で、「非会員の子を差別するPTA活動はダメ」ということをお話しされる際には、「その根拠は、学校教育法137条」というだけでは納得しない人達がいますので、
「他の団体(スポ少や子供会など)が 学校施設を借りて会員限定の活動をするのと、PTAとでは何が違うのか」、そういう人達にも分かるように解説していただけたら嬉しいです。

それから、可能でしたら、もう一つの記事へのサイトンさんのコメント(2017-06-03 12:09:30)にも、お返事してあげて下さい。
私が横入りコメントしたことで、木村先生とサイトンさんとの会話を邪魔してしまったようで、申し訳なく感じています。

お付き合い下さって、本当にありがとうございました。お忙しい先生を煩わせてしまったこと、お詫びします。
Unknown (ルックルック)
2017-06-14 01:10:18
「なお、会員限定サービスでAをする場合には、
その施設を学校教育で利用しない時間帯であることが絶対の条件になります。
(学校施設は学校教育目的の利用が最優先されるためです)」
上記のような解釈は条文からどのように読み取れば良いのでしょう。
学校教育法にはそこまで明記されていないように思うのですがいかがでしょうか。
共謀罪、本当に成立したといえるのでしょうか (haduki)
2017-06-16 23:16:58
法律には無知ですが質問です

 今回、国民に内容を知らされないまま、227?の項目も国民には不明なまま、特殊な状態・・一強多弱、強力な党議拘束のもと、与党議員だけで決められた。
 国会審議がほぼなされなかった。
 審議の進行が正常でなく、変則的だった。
 政府の、疑惑てんこ盛り状態で急ぎ成立させた
 国民世論を軽視している

法律は国の中心に正々堂々と立っているもの、こんな姑息な不誠実なやり方でも法律が成立したといえるのでしょうか
PTAはボランティアではないが (人間のすること)
2017-06-18 10:46:36
自治会なども特に報酬はなしに市の広報などを配っている。
しかし、元々地域に根差した人々の善意の団体であったことから、転勤族・母子家庭・核家族化等その団体の維持に不都合な現実に対応できていない。
そこで、すべて有料サービスにしたとして税金が上がることを良しとするのか、登下校の見守り旗振りをPTAがしているのを全て廃止し不幸な事故を増やすのがいいのか。
自治会でもカラスに荒らされたゴミ捨て場を無償で掃除している(非会員がごみを捨てている場合もある)。豪雪地帯では非会員でも除雪してもらえる。
心情的に会員非会員会費の負担等考慮してしまうのは罪でしょうか。
個人的にはPTAや自治会は社会的圧力で強制参加させられる(いじめ?)のようなもので、廃止の上、有料サービスとし税金を当てればいいと思っています。それだけの人員を確保できるかは不明ですが。
PTAをなくしイベントを排除し地域のつながりをなくしそれが逆にいじめを助長するかしないか社会的実験も行ってほしいですね。
前提条件として、PTA・自治会への加入について加入者には法的な権利や義務・法的根拠その他の重要事項説明が行われていません。参加不参加の自由やメリットデメリット等の説明もありません。引っ越してきたらいきなり自治会費の要求です。このような訴えの際の保険への加入もありません。加入者自身が加入している団体の意味や全体像を把握していない。
加入者はPTA非会員に対する扱いの規定も法的根拠もわからない。役員は1・2年で入れ替わる。
むしろPTAがボランティアでボランティア精神のある人のみで構成されていればよかったのかもしれません。日本人にボランティア精神があるかはわかりません。
結論として、法人化し非会員にもサービスすると規定すれば通常サービスをすると思いますよ。

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