法制審の離婚後の共同親権について、
中間試案が固まりました。
11月15日~19日ころまでに
Twitterに投稿したいくつかの文章をこちらにまとめておきます。
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ドイツは「共同親権は協力関係が前提」という建前だけど、州高裁がDV事案で共同親権を命じて、
憲法裁判所が取り消さざるを得なかった事例もあります。
単独親権でも当事者が自発的に協力することはできます。
裁判所が命じるより、当事者の自発的協力に委ねた方が適切では?
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報道の全体的な印象としては、共同親権に賛成する根拠として挙げられるのが、
「共同親権とすることによる法的効果」ではなく、
「親としての責任感」とか「共同への意思」といった精神論を
語るのみなのは相変わらず、といったところか。
「親権」と「養育」の混同も相変わらず。
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離婚後共同親権を巡る両論併記について疑問に思う点がもう一つ。
なぜ、「親権はないけど、好きな時に会えるし、特に困っていません」
という話は紹介されないのだろう?
「新しい家族のかたち」として、それをアピールしている人もたくさんいるのに。
困っている原因は本当に親権か?分析が甘くないか?
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「親権を共同行使する合意のない父母に、
裁判所が共同親権を命じるべき場合」として、
具体的にどのような場合が想定されるのか?
もしも想定できないなら、
合意なき裁判所による強制的共同親権(法制審中間試案甲案)の導入は不適切です。
不適切なケースに裁判所が共同を命じるリスクを作るだけ。
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意外と「離婚後、共同親権を求める人たちは、
親権を使って誰に何を請求する予定なのか」が取材・報道されていない。
面会強制請求?
学校での授業参観参加請求?
転居先の報告請求?
転居差止請求?
ワクチンなど医療行為差止?
主張の性質が明確になるので、ぜひ取材して報道してほしい。
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「海外では共同親権が主流です。日本では、、、」と報道するのと
「海外では別居親が子どもの転居・手術・進学などを拒否する権利を持つのが主流です。日本では、、、」
と報道するのではだいぶ印象が変わるのではないだろうか。
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離婚後共同親権が導入されると、
別居親の共同親権者から学校・病院などに「なぜ親権者たる自分の同意なしに……したのか?」
という要求や訴訟が多発するようになるので、
全国の学校関係者・病院関係者の皆様にはぜひ、この問題に強い関心を持ってほしい。
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「親権」は「子どもの利益」のために行使すべき権限だが、
「共同親権」は「父母の平等」のための制度。子どもの利益だけを考えるなら、
親権者は「合理的判断ができる人」が一人いれば十分。
「父母の平等」のために「子どものための重要な決定ができないリスク」を甘受すべき、とは私は思わない。
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個人の体験談として、「修学旅行に別居親が本当に同意しているのか」を確認するため、
弁護士立ち合いで署名する会があった、と私に教えてくれた人もいる。
不仲な夫婦の存在を思えば、今でもすでに生じている問題ではあるが、
「合意なき共同親権」が導入されれば、訴訟リスクが格段に上がるのは確実。
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「司法判断の対象」を決定する際には、「公的支援の徹底度」に応じて、
「経済的に相応の余裕のある人だけが、適切に権利を守られる社会」
になるという点を理解する必要がある。お金のない人は、「法による保護のない世界」に潜り込む。
規範に頼らない「現場の良識」が弱者を守る面も、時にはある。
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「離婚後共同親権」って「離婚しても、パパもママも子どもを愛してます!」
なんて情緒的なものではなく、法的効果が生じるんだよね。
「法的効果として何がなされるのか」を冷静に検討しない報道は、悪質なプロパガンダになる。
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もともと自分は海外の離婚事情について情報があるから、
あの手の報道を見ても「なにいっているんだ!?」
ぐらいにしか思わないんだけど、特に情報を持っていない人は流されるよね。
知らずに報道しているなら愚かだし、知って報道しているなら悪質だ。
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この問題については、
こちらで解説を書かせていただいておりますので、
ぜひご参照ください。