【脱中国元年】いびつな「国強民衰」の中国経済 反日暴動で目が覚めた日本企業★(2)
zakzak2013.02.20
中国が唱える「中国的社会主義市場経済」とは、自由競争の市場経済とは縁もゆかりもない。国有企業が大方の産業利権を独占し、中国共産党とその幹部だけが裨益(ひえき=利する)する、いびつな経済システムである。
鉄鋼、造船、兵器、通信から航空、アルミにいたるまで国有企業が寡占し、外国企業の参入には妨害がある。その傍らでハイテクが必要な部門はすべて外国との合弁企業とした。GDPの6割を寡占するマンモス集団が国有企業、つまり共産党幹部がトップにいて経営方針を左右しているため不合理、非効率な企業が大半である。しかもファイナンスは国有銀行が支援する。「親方五星紅旗」(=モラルハザードの元凶)。この態勢を「国強民衰」、あるいは「国進民退」と言う。
この中国の構造的欠陥と、欧州経済を同列に論じるのは危険である。ギリシャのデフォルトも懸念されているが、その総額は中国の浙江省ひとつの地方債権の発行額面より少ないのである。
中国は自由闊達なプライベート部門が希薄なのである。重要産業には自由競争が不在、つまり中国は資本主義でも市場経済でもなく国家統制国有企業優先メカニズムだけが機能する経済であり、筆者はこれを「共産党主義経済」と名付けている。
そうした特徴を百も承知で、日本企業は円高のために中国へ押し出された。
最初からリスクを背負って中国に生産拠点を移動させた。戦後長く国家安全保障とは何かを忘れた日本人は企業戦略立案にあたってもカントリー・リスクを軽視したのだ。
昨秋の反日暴動によって目が覚め、ようやく中国依存体質がいかに危険かを体得した日本企業は、かといって中国からの撤退もままならず、「チャイナ・プラス・ワン」(=中国とそれ以外にも拠点を)が合言葉となる。
中国の安い賃金の魅力も度重なるストや工場焼き打ちなどによって、ベトナム、インドネシア、タイへ移転させた方が安上がり。そのうえ腐敗と不正が横行する中国では外国企業の進出にあたっても賄賂が法外に必要であり、政治コストも含めると収支決算は黒字とはならない企業がおびただしくなった。現地に駐在する日本人からは反日、侮蔑、差別など悲鳴があがるようになった。
2013年2月、米国とタイ、日本、インドネシアなど7カ国が加わって、東南アジア最大級の合同軍事演習「コブラ・ゴールド」がタイ北部のチェンマイなどで実施された。直前にはカリフォルニアで日米合同の「離島奪回軍事訓練」が行われた。
ASEAN重視へ傾斜した日米という環境変化の下、日本経済は大きくかじ取りを変える。
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ)
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