【脱中国元年】英、独の中国擦り寄りと反日暴動の深い意味 複雑怪奇な世界情勢 (1)

2013-02-20 | 国際/中国/アジア

【脱中国元年】英、独の中国擦り寄りと反日暴動の深い意味 複雑怪奇な世界情勢 ★(1)
zakzak2013.02.19 宮崎正弘
 世界情勢は「複雑怪奇」に激変の最中である。日本人はとかく「西側同盟」と「日米同盟」が堅い絆で結ばれていると勘違いしている。国際政治の舞台裏では「昨日の敵は今日の友」「今日の友は明日の敵」である。
 NATO(北大西洋条約機構)で団結していたはずの欧米同盟とて、中国と対立する米国に意外な方向から敵対者が出現した。何と、英国とドイツが米国に敵対的態度を示すようになったのである。英、独は中国に異常接近し、特に、英国は金融市場で、ドイツは製造分野でこれまで以上の中国重視政策にかじ取りを変えた。
 メルケル独首相は昨年、二度も大型経済使節団を率いて訪中し、エアバス組立工場、ベンツ工場拡大などの契約をした。
 昨秋の反日暴動で、トヨタや日産の販売店も放火され破壊されたが、「日本はもう良いぜ、ドイツが来るから」という中国からのメッセージだったと受け止めることもできる。
 あれほど中国経済に献身したパナソニック工場が焼き打ちされたのも、「ドイツ勢が本格進出するから、日本企業は去れ」という暗黙の信号だった可能性は皆無とはいえないだろう。何しろ、大戦中のドイツは日独伊三国同盟の初期にさえ、中国軍にてこ入れしていたのだから。
 戦後ブレトンウッズ体制下、基軸通貨の米ドル優位に対抗したドイツが欧州統一通貨=ユーロをまとめ、露骨に米国に挑戦した。
 英国は金融市場の優位を維持・発展させるため、「ユーロ通貨圏」から離れてロンドンの金融センターを拡大する金融覇権を手放さず、シティ(ロンドン金融街)を中国人民元のオフショア市場に開放した。
 怒り心頭の米国は、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正問題を追及し、英国を代表する巨大銀行の拡大を阻止する挙に出た。
 レーダー照射事件など、沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中間の軍事的緊張は解けない。だが、尖閣問題をきっかけに、日本では政権交代が起こり、株高・円安にぶれてアベノミクスによる景気回復が見えてきた。
 筆者はこれら一連の奇跡的動きを、元寇における神風、あるいは弓削道鏡の野望を砕く神託を宇佐神宮からもたらした和気清麻呂の快挙と比喩してみたくなるのだ。非科学的かもしれないが明らかに天の声である。
 この円安に批判を開始した欧米も、内実はバラバラである。日本国内には依然として媚中派、親中派の跳梁跋扈があり、マスコミ論調は必ずしも国益で一本化していない。
 激動・激震が予測される今後、果たして日本人は経済成長回復という甘い期待だけではなく、どれほど不退転の決意を示せるのか?
 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に「習近平が仕掛ける尖閣戦争」(並木書房)、「現代中国『国盗り物語』 かくして『反日』は続く」(小学館101新書)。
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ドイツは中国の植民地になった/温家宝にすり寄りエアバス50機の契約書を持ち帰ったメルケル「朝貢外交」 2012-09-07 | 国際/中国/アジア 
 「ドイツは中国の植民地になった」。温家宝「皇帝」にすり寄り、エアバス50機の契約書を持って帰ったメルケル首相の「朝貢外交」
 現代ビジネス2012年09月07日(金)川口マーン惠美
 8月30日、メルケル訪中のニュースを見ていた私の目は、画面にくぎ付けになってしまった。
 温家宝首相が立っていて、メルケル首相がそこへ向かって歩いていく。場所は人民大会堂の玄関の広間。温家宝首相はにこやかにほほ笑んでいるが、銅像のように一歩も動かない。あたかもボンドで足が床にくっついてしまったかのようだ。そして、メルケルがようやくそこまで歩いて来たとき、おもむろに握手の手を差し出した。その光景は、私の目には、いかにも不自然に映った。
 外交上の迎賓には、ゲストとホストの格により、いくつかの段階がある。飛行場で出迎える、迎賓館の車寄せで出迎える、執務室の入口で出迎えるなどなど。
 数年前、ベルリンの首相官邸前を通ったとき、何十人ものカメラマンが待っていたので、私も野次馬根性を発揮して、誰がでてくるのか柵の外で待ったことがある。
 20分ほど経ったころ、官邸前がざわめいたと思ったら、中からメルケル首相が現れ、その1分後ぐらいに黒塗りの車が乗りつけた。降りてきたのはサルコジ大統領で、2人はいつもの抱擁を交わし、さっと官邸に消えた。メルケル首相は、サルコジ大統領を官邸の玄関で出迎えたのである。去年、ローマ法王がドイツを訪れたときは、ドイツの元首である大統領が、飛行場で迎えた。
 ちなみに、今回のシーンについて、ある元大使に尋ねてみたところ、「相手が歩み寄ってくるのを一歩も動かずに待つというのは、ちょっと不自然ですね」とのことだった。そこで、その後の各新聞の報道を気を付けてみていたが、しかし、これに触れたメディアはなかった。そうか、私の思い込みだったのか‥。
 ところが2日後、ドイツで人気のあるおふざけニュース番組を見ていたら、第一報として、アナウンサーが真面目な顔をして言った。「このたび、ドイツは中国の植民地になりました」。この番組は、報道内容がパロディーであるということを前提としているので、バカバカしいと言ってしまえば確かにバカバカしいが、かえって真実を穿っていることもあり、結構笑える。
■日独同盟なんて思っているのは日本人だけ
 2011年より、ドイツと中国のあいだには、2国間限定の政府サミットの協定が結ばれている。ドイツがこういう密接な関係を保持しているのは、現在8国。一番古いのはフランス(1963年より)、そして、イタリア、スペイン、ロシア、ポーランド、イスラエル、インド、一番新しいのが中国だ。政府サミットの目的は、2国間の特別な友好関係、および、密接な協力関係を強調するものである。
 いまだに日本人の中には、日独伊軍事同盟、あるいは日独防共協定などという埃を被った昔話を根拠に、日本とドイツの堅固な関係を語る人がいるが、ドイツ人の眼中にはいまや日本はない。古い話を持ち出すなら、日本の同盟国であったはずのそのドイツが、中国の軍事顧問として蒋介石軍を指導し、とくに上海戦で、日本軍に多大な損害を与えたことを思い出したほうがいい。
 1938年、ファルケンハウゼン将軍が日本の抗議でようやく中国を後にするというとき、彼は、「最後に中国が勝つと確信している。中国はどこまでも戦い続けられる。中国軍は素晴らしい」と言い残した(『日中戦争はドイツが仕組んだ』阿羅健一著・小学館)。
 その古くて深いドイツと中国の縁は、今まで綿々と繋がっていると私は思っている。今回も、最後の記者会見でメルケル首相は、「中国はドイツにとって、アジアで一番重要なパートナーです」とはっきり言った。
 ただ、強力な独中関係も、その中身は大きく様変わりして、現在、とりわけ重要な位置を占めているのが通商だ。ドイツの輸出の6%は中国向けで、中国はドイツにとって5大輸出先の1つとなっている。とくに自動車業界は、いまや中国なしには生きていけない。去年、メルセデスは、生産している車両の10%、BMWは16・8%、そして、フォルクスワーゲンは30%を、中国で売った。
■狙いはユーロ救済に必要な中国のカネ
 一方、中国の輸出も、その4分の1がドイツ向け。多くのドイツ企業が、中国との商売に目の色を変えるのは、無理もない話だ。
 今回は、メルケル首相と閣僚7人のほか、次官、そして、大勢の企業のトップが政府専用機3機で北京に赴いた。中国が受け入れた外交使節団では過去最大の規模だそうだ。絢爛豪華な人民大会堂に、ドイツ人が神妙な顔つきでずらりと勢ぞろいしているのを見ると、どうも私の目の前には、周辺の夷狄が中国皇帝の下へ貢物を運んでいる図がちらついて仕方がない。
 当時の習慣では、貢物を持って訪れた外国の使節には、その何倍、何十倍もの宝物が下賜された。従順の意を示す相手に対して、十分な恩寵を下すのが中国古来のやり方だった。いわゆる朝貢外交である。
 さて、メルケル氏ら南蛮人の一行が、遠い異国からいったいどんな貢物を運んだのかわからないが、従順の意を示したことは確かだろう。その証拠に、現代の皇帝とその家臣たちは、その日のうちにエアバスA320をポンと50機も買い、フォルクスワーゲンの3つ目の工場の建設を決め、世界一のヘリコプターメーカー、ユーロコプターの現地組み立て工場の設立、データ通信回線の拡張プロジェクトなど、あっという間に60億ドル(48億ユーロ)の買い物をした。凄い! これを現代の朝貢外交と言わずして、何と言おう。
 メルケル首相と温家宝が立って見守るその眼前で、担当の大臣や企業のボスたちが、立派な契約書に次々とサインをしていく。はるばる皆でやって来た甲斐があったというものだ。ただし、メルケル首相の狙っている獲物は、実はまだある。そう、ユーロ救済のために中国の援助を引き出すことである。
 メルケル首相の中国訪問は今回が6回目だ。その前のシュレーダー首相は中国とロシアが大好きだったので、7年の首相在任中にやはり6回中国を訪問した。しかし、メルケル首相は、シュレーダー氏と違い、別に中国が好きなわけではない。
 それどころか、07年にはダライラマを官邸に迎え、独中関係をひどくこじらせた。08年の北京オリンピックにも欠席。それどころか当時は、ダライラマとの再会を匂わせたり、人権問題に意見したり、反政府グループと会談したりと、中国をかなり怒らせていた。
 しかし、それらはすべて過去の話だ。現在のメルケル氏は、あたかも口輪をはめられたかのように、ダライラマの「ダ」も、人権の「じ」も言わない。産業界のボスたちに引導を渡されているのだろう。当時の駐独中国大使が、最近のインタビューで満足げに言っていた。「メルケル氏は自分の意見を変えたわけではない。しかし、我々の立場を理解してくれるようになった」と。
 そんなわけで、今回メルケル氏が口輪のすき間からかろうじて言ったのは、ただ一つ。中国にいるドイツ人特派員たちが、取材に際して、中国警察にあからさまな妨害を受けていることに対する抗議だ。気に入らない報道をする記者には滞在ビザを延長しないで追い出してしまうというのが中国のやり方だ。
 興味深かったのは、メルケル氏に対して温家宝首相が、「これからは、もしも不都合なことがあったら私に言ってください。すぐに対処することを約束します」と、心配そうに、まるで初めて知ったかのような面持ちで言ったことだ。あまりの空々しさ。これはすでに京劇の世界だ。
 しかも、メルケル氏が遠慮したのは人権問題だけではない。環境問題も、知的財産権の侵害も、シリア・イラン問題も話題にさえしなかった。それどころか、中国のソーラーパネルのダンピングでドイツ企業が軒並みつぶれている件は話し合いで解決しよう、他のEU諸国も訴訟に持ち込まないようドイツが説得する、とまで言ったのだ。
 共同記者会見で、EUの金融危機に対する対策の遅さを指摘する温家宝氏。ヨーロッパの経済ががたつくと中国の輸出が滞るので、他人ごとではないのはわかるが、彼の厳しい顔つきは深刻さの表現なのか、叱責なのか。それに対し、中国の協力の意に感謝するメルケル氏。彼女は温家宝氏ほど演技はうまくないが、それでも取るものはちゃんと取った。さすが!
■日本だっていっぱい「貢いだ」はずじゃないか
 この夜、メルケル首相を筆頭とした“ドイツ商業振興会"は、たくさんの契約書を土産に北京を発った。ユーロの行方は依然として不透明だが、中国は何らかの援助をするのだろう。一方、中国にとっても、対アメリカ、対ロシア、そして対日の手段として、ドイツ、およびヨーロッパとのパイプの強化は好ましい。独中関係は、今、商売に引きずられるようにして、一層の高みに上ろうとしている。
 いずれにしても、お金は人権を超える! それは独中間だけではない。たとえ米中関係がこじれても、中国がボーイングを100機買うと言えば、おそらくすべての問題は氷が解けるように消えるはず。札束を切れる中国への朝貢団はこれから引きも切らず、エジプト大統領、シンガポール首相、来週はヒラリー国務長官も訪れる予定だ。皆、賢く立ち回り、持ちつ持たれつで、持ってきた貢物よりずっとたわわなお返しを持ち帰るのだろう。
 ここまで書いて、ふと気づいたが、日本はこれまで中国に献上したものに対して、あまりにも貰いが少なすぎるのではないか。自慢ではないが、従順の意なら、我々は十分すぎるほど示している。
 歴史の解釈は相手に任せ、領土を蹂躙されても文句も言わず、賊が日の丸を盗んでも抵抗せず、犯罪者は丁重に扱った上ですぐにご帰国いただいているというのに、この不公平は腑に落ちない。厳重に抗議するべきではないか! 
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欧米と距離を置き、東へ軸足を移すドイツ / ドイツの国益と欧州の国益 2011-06-13 | 国際/中国 アジア
 欧米と距離を置き、東へ軸足を移すドイツ
JBpress 2011.06.13(Mon) Financial Times

 筆者の記憶では、国の地理によって、その国の外交政策を知ることができると言ったのは確かナポレオンだった。全般的に言って、このルールはまだ有効だ。
 アンゲラ・メルケル首相率いるドイツの場合、意地の悪い観測筋なら、それを少し修正し、地理と並んで輸出市場も重要だと言うだろう。
 先日ワシントンを訪問したメルケル首相はバラク・オバマ大統領から大いに敬意を表された。19発の礼砲に続いて大統領自由勲章が授与され、ホワイトハウスできらびやかな晩餐会が催された。
 オバマ大統領の在任中にこれほど厚遇された欧州の指導者はほかにいない。ニコラ・サルコジ大統領のエリゼ宮殿では、腹の虫が収まらなかったに違いない。
*オバマ大統領が失いたくない欧州の大国
 慣例では、こうした行事は信頼できる同盟国に対するご褒美ということになっている。メルケル首相の場合、これほど温かい歓迎は、感謝の印というよりは期待の表れと言った方がいい。オバマ大統領は、英国との特別な関係にはまだ敬意を表しているかもしれないが、オバマ大統領が失いたくない欧州の大国はドイツなのだ。
 ホワイトハウスとドイツ首相府との関係は最近、とても友好的と言えるものではなかった。米独間では、リビアを巡る公然とした小競合いや、経済政策に関する論争、日本の福島原子力発電所の惨事を契機とする原子力エネルギーの将来を巡る見解の相違が生じた。
 メルケル首相がリビアへの軍事介入を認める国連決議を支持するのを拒んだ時、米国は、英国やフランスとともに失望した。ドイツは、安保理の投票を棄権することで、中国やインド、ブラジル、ロシアの仲間になる道を選んだ。
 ホワイトハウスの共同記者会見では、オバマ大統領はこの件をうまく言い繕った。ロバート・ゲーツ国防長官は、オバマ大統領ほど外交辞令が得意ではなく、米国の政府高官らが内々にささやいていた話を半ば公然と口にした。
 北大西洋条約機構(NATO)の理事会で、ドイツは西側の軍事同盟で自らの役割を十分に果たしていないと述べたのである。
 経済問題に関しては、世界の貿易不均衡にどう対処するかという議論で、ドイツは米国よりも中国の肩を持っている。メルケル首相の考えでは、問題は、中国の為替政策というより、米国の借り入れと支出だ。
*ユーロ圏の債務危機への対応、フクシマ後の脱原発・・・
他のユーロ圏諸国に対するドイツの貿易黒字についても、メルケル首相はほとんど同じことを口にする。赤字国は、もっとドイツのようになるべきだというのだ。もちろん問題は、すべての国が黒字を計上するわけにはいかないということだ。
 米国政府は、ユーロ圏の債務危機に対するドイツの対応に苛立ってきた。ドイツは何とか仕事をしてきたが、辛うじてこなしているだけだ。
 オバマ大統領が2012年の大統領選の前に最も避けたいと思っているのは、ギリシャのデフォルト(債務不履行)に端を発する世界的な金融システムのメルトダウンだ。
 原発閉鎖に関しては、ドイツはもちろん自分なりの判断を下さなければならない。だが、メルケル首相のパニックは、異なる見方をしている国にとっては、状況を楽にするものではない。脱原発政策は、フランスの原子力業界が発電する電力に依存するドイツの現状と整合性を保つことも難しい。
 これらの小競合いは誇張されるきらいもある。米国とドイツは30年間にわたって、黒字国と赤字国のそれぞれの責任について議論してきている。そして確かに、米国の貿易赤字は、貯蓄よりも支出する傾向が強いことと関係がある。
*対外関係の力学に大きな変化
 ほかのところでは、ドイツは、リビアでの軍事行動を支持しない代わりに、アフガニスタンでの戦争には貢献している。ユーロ圏救済に対するためらいや、原子力産業の閉鎖に関する決定は、メルケル首相が直面する国内問題の大きさを示すものだ。
 だが、ドイツと他国との関係の力学は変化した。最近猛威を振るっている病原性大腸菌の大発生による近隣諸国の大騒ぎは、世論の風向きを示すものだ。
 スペインの農民に責任を負わせようとしたドイツ当局は間違っていた。だが、その後の反発にはそれ以上の感情が込められていた。ほかの欧州諸国の論評には、「聖人ぶった」ドイツは当然の報いを受けたのだ、という意識がうかがえた。
 以前より自己本位になっているドイツは、昔の同盟国との絆を緩めている。ドイツが戦後フランスと行った取引は、欧州統合に原動力を与えた。ドイツの本能的な汎大西洋主義は、米国の力に対するフランスの反感と釣り合いを保つ重りの役目を果たしていた。
 ドイツは今、欧州主義と汎大西洋主義という2つの錨を静かに上げているように見える。
 東西再統一から20年が経過し、メルケル首相率いるドイツは、自分なりの判断を下す傾向が強くなっている。世界的な勢力は東方にシフトしており、ドイツの名高い製造業にとっての機会も同じようにシフトした。
 中国は近い将来、フランスを抜いて、ドイツにとって最も利益の上がる輸出市場になる。インドやブラジル、ロシアもすぐ後に続いている。
 ドイツは、こうした流れに応じて地政学の羅針盤を設定し直している。そのため、ロシアの場合には、地理と輸出とを考え合わせ、ロシア政府の敏感な反応に合わせるよう計算された外交政策を定めている。
 リビアを巡る投票でドイツがBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国の側に立っているように見えた
のは恐らく偶然だろうが、それでもやはり象徴的なものに見えた。
*ドイツの国益と欧州の国益
 ドイツの外交政策がかつて利他主義によって動かされていたという考え方は、以前から虚構だった。罪の意識は一定の役割を果たしていたが、実利的な政治も働いた。欧州の統合によって、ドイツは自国の経済を建て直すことができたし、米国との同盟によって再統一の可能性を存続させることできた。
 メルケル首相の世代が過去に置き去りにしたのは、ドイツの国益が欧州と密接不可分に結び付いているという直感的な信念だ。
 先月、ヘルムート・コール元首相が珍しく公の場に姿を現した時、我々はその変化を垣間見た。ユーロ圏の危機は結束を固める機会だ、とコール氏は述べた。「たとえいくらかコストがかかるとしても、我々もギリシャと一緒に道を歩まなければならない」と。
 今のドイツは、自国の利益を欧州の利益から切り離している。それは、フランスや英国がやっていることではないのか、分別のあるドイツ人がなぜ無責任なギリシャ人を支援しなければならないのか――。今はこんな話が聞かれる。
*「身勝手な大国」
 それに対する1つの答えは、無謀なドイツの銀行は他のほとんどの銀行より失うものが大きい、というものだ。
 もっと重大な答えは、ドイツが「普通」の大国として行動することを決めれば、欧州はバラバラになる、というものだ。ドイツはとにかく独り善がりになるにはあまりにも大きく、戦略的な位置に置かれてすぎているのだ(ナポレオンが言う地理)。
 筆者のドイツ人の友人の何人かは、外国人は、ドイツが明確な国益をはっきりと口にすることに慣れていないのだと言う。そして、昔の同盟国から次第に距離を置いているのは、計算された戦略的な動きというより、メルケル首相の政治的な弱さを反映したものだと話している。
 そうかもしれない。だが、同盟国が張っているレッテルは、身勝手な大国というレッテルなのだ。
By Philip Stephens
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「BRICS」を政治利用する中国2011-04-23 | 国際
 米国への挑戦状:世界の盟主になりたい中国 BRICS首脳会議を主催して~中国株式会社の研究(107)
JB PRESS〔中国〕2011.04.22(Fri)宮家 邦彦

 日本中が放射線量の増減に一喜一憂していた4月13~14日、胡錦濤総書記は海南島で第3回BRICS首脳会議を主催していた。インド、ロシア、ブラジルに加え、今回から南アフリカも参加した。「BRICs」が「BRICS」に変わったことに気づいた日本人がどれだけいただろうか。
投資銀行が考えた「BRICs」  
 共同会見に臨む(左から)インドのマンモハン・シン首相、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領、中国の胡錦濤国家主席、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領〔AFPBB News〕
 「BRICs」という言葉が使われたのは2001年、米投資銀行大手ゴールドマン・サックスが投資家用に作成したニュースレターが最初だったと言われる。
 当時から、広大な領土と巨大な人口を持ち、急成長を続ける新興国家群の存在は関係者の間で注目されていた。
 あれから10年、今年から南アフリカが参加し、イラン高官もBRICs諸国との関係拡大を公言するようになった。
 当初は理念的に考えられ、半ば語呂合わせ的に命名されたBRICsだったが、今や国家グループとして自律的な進化を始めたかのようだ。
 ロシアとブラジルで開かれた過去2回のBRICs首脳会議のテーマは、基本的に経済問題だった。BRICs諸国が、G20と国連の役割を重視しつつ、より平等、多極的で民主的な国際社会・経済システムを目指して協力し合うという一般的な主張だったと記憶する。
 ところが、4月14日に発表された今年の首脳宣言には、微妙ながら重要な変化が見られた。昨年の共同コミュニケと読み比べれば、国連改革、リビア情勢、国際金融システム改革など、前回よりも政治的に踏み込んだ内容が随所に盛り込まれていることが分かる。
2011年BRICS首脳宣言
 今年の首脳宣言中、特に注目すべきは以下の諸点だ(括弧内の注は筆者のコメント)。
●安全保障理事会を含む国際連合の全面的改革が必要であり、中国とロシアは、インド、ブラジル、南アフリカの国際的地位・役割向上の重要性を再確認する
(注:欧米主導でつくられた現在の国連は不平等・不公平なシステムだと批判するが、インド、ブラジル、南アフリカの地位向上の重要性を唱える一方で、日本やドイツに言及しないことも同様に不平等、不公平ではないのか)
●中東・北アフリカ地域における混乱を深く憂慮し、武力行使は回避すべきである
(注:リビアなどで欧米諸国が安易に軍事介入を行っていることを批判しているようだが、BRICSとして軍事的手段に代わる解決策を提示しているわけではない)
●国際通貨基金(IMF)改革目標を早急に達成し、商品デリバティブ市場の規制を強化すべきである
(注:欧米主導の国際金融システムにおけるBRICS諸国の発言力・影響力を高めようとする主張であるが、ここでも具体的改善策は示されていない)
●安定性と確実性を伴う広範な国際準備通貨制度に基づく国際金融システムの改革・改善を支持する
(注:名指しは避けたものの、明らかに米ドル中心の現行国際通貨制度を強く批判するものだ、他方、中国の人民元の取り扱いなどの具体的解決策は提示していない)
●原子力エネルギーはBRICSにとって重要な要素であり、安全な原子力エネルギーの平和利用に関する国際協力を推進すべきである
(注:BRICSが経済成長を続けるため必要なエネルギーを確保しなければならないことは分かるが、このタイミングで敢えて原子力の重要性に言及することは実に興味深い)
「BRICS」を政治利用する中国
 以上のようなBRICS首脳会議の「政治化」を主導したのは、やはり中国であろう。中国は今回の首脳会議を大々的に宣伝しており、開催地である海南省三亜市のウェブサイトに今次首脳会議の公式サイトまで作っている。
 これに対し、欧米メディアの反応は総じて鈍いようだ。少なくとも、BRICS諸国が国際金融システムに対し挑戦し始めたといった警戒心は見られない。
 それどころか、BRICS経済が元気になることは米国にとっても有益であるといった楽観的な論調すら見られる。
 確かに中国などがこの種の主張をするのは初めてではない。その内容にも具体性がない。
 さらに、BRICS諸国と言っても一枚岩ではない。中印だけでも国境問題、貿易摩擦問題を抱えるなど、各国間の利益対立は決して小さくないからである。
 リーマン・ショック後の新たなパラダイムの中で、米国が相対的に弱体化することは避けられない。他方、BRICSを中心とする新興国側にも、米国に代わって新しい国際秩序をつくるだけの余力はなかろう。
 今のところ欧米諸国は、BRICSは「弱者同盟」に過ぎず、米国を中心とする欧米型システムを打ち破る力にはなり得ないと高を括っているのだろう。BRICS諸国側も当面は米国を中心とするグローバル経済の枠内で独自の主張を強めていくことになりそうだ。
BRICS=金磚国家
 ちなみに、第3回BRICS首脳会議は中国語で「金砖国家领导人第三次会晤」という。「金砖」とは「金磚(きんせん)」で金の延べ棒をも意味するようだ。「磚」とは煉瓦のこと、煉瓦は英語でBRICKだから、BRICS=金磚国家ということになるらしい。
 友人の中国語専門家に言わせると、これは一種の芸術なのだそうだ。未知の外来語に対し、漢字と英語の類推から、ぴったりの漢字新語を作る中国人の能力とセンスは誰も真似できないという。それはそうだろう。そんなことをするのは中国人だけなのだから。
 BRICSはBRICSなのだから、そのまま使えばいいではないか。中国語でDavidは大偉(ターウェイ)という。なぜわざわざ漢字化するのだろうか。
 趣味の問題かもしれないが、筆者には「金磚国家」など「洗練させたセンス」どころか、下手な「こじつけ」としか思えない。
 「金磚」は元々古代中国の珍しい武器の一種らしい。伝説によれば、金色をした円形敷石か瓦のようなもので、空に投げ上げると金光を発したという。
 つまり、BRICSとは、煉瓦は煉瓦でも、光り輝く煉瓦の国家群ということなのか。是非そうあってほしいものである。
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