回遊魚の旅日記

時の流れる音をききながら歩いたり歌ったり
少しづつ昔の暮らしをとりもどしつつ。

東海道を歩く⑮二川~吉田~御油~赤坂

2011-05-05 13:29:07 | 東海道五十三次

5月2日(月) 晴れ、強風。

7時03分東京駅発新幹線のぞみ-----8時50分浜松発東海道線-----二川9時30分着

二川駅の改札を出ると赤や黄色や青の体育帽をかぶった子供たちの列に出くわす。近くの植物園への遠足だそうだ。先生たち、児童達があちらから「おはようございます!」と見ず知らずのわたしたちにあいさつしてくれる。

朝のはっきりしたあいさつは気持ちがそれだけでもしゃっきり。風は強いが良い旅の始まりを予感させてくれる。

飯村一里塚を過ぎ、11時頃に吉田宿に入る。

吉田は現在の豊橋市にあたる。遺構は殆ど残されていない。途中こんな看板を見かけるが、不動院さんの周りをぐるぐる回ってみても、それらしい入り口も見つからず、やり過ごす。

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東八丁のだだっ広い交差点に来ると市電の駅あり、赤い電車がやってくるのが見える。車社会の世の中で「まだまだ現役!」とでも主張しながら健気に走るこういう市電に乗りたくなる気持ちをぐっとこらえて、巨大な秋葉常夜灯や市役所を右に見て歩道橋を左に渡る。

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札木町交差点あたりはお店が立ち並び、いかにも昔の宿場の中心であったことを想起させる雰囲気。

まだ11時半だが、お昼を食べようということで、文政年間創業の「きく宗」に入る。いかにも古めかしい狭い間口だが、中はうなぎの寝床のように奥深く、小部屋がたくさん作られている。

ここの名物はなんといっても「菜飯田楽定食」!

固めに作った豆腐の上に甘い艶やかな八丁味噌がこってり。そこに黄色い辛子が一筋引かれ7本お行儀よくならんでいる。関東人はなかなかこの甘い八丁味噌に慣れないので馴染みがなく、「なんじゃこりゃ?」とびっくりするようだが、わたしは大いに気に入った。

普通のご飯茶わん3杯分くらい盛られた大根の葉っぱを刻んだ菜飯がまた絶妙の取り合わせ。

お値段1780円と高めだが、愛知に入っていかにも愛知の食べ物を味わったと云う満足感あり。ちなみに江戸時代の料理本「豆腐百珍」にもここの豆腐田楽は登場している。

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「きく宗」を出て、しばらく歩き豊川にかかる「豊橋」を渡る。川辺の水の際にいる人々は貝を探しているらしい。

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下地の一里塚を過ぎ、豊川放水路も越えると、豊橋と長野県辰野を結ぶJR飯田線の小坂井駅の踏み切りを渡る。う~ん、乗って信州伊那方面に旅したい!

旅は、予定した本筋を目的に向かって歩くことが主眼だけれど、その本筋から外れて各地方に遠ざかってゆく道や線路の行く先々に果てしない憧憬を抱いたり、または本当に外れてしまって風の吹くまま気の向くままに見知らぬ土地にさまよいこんでしまうのも、「いとをかし」なのだ。

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さて、吉田の次の宿場、御油(ごゆ)も近づいたかと思う頃、右側にすてきな喫茶店発見!

吸い込まれるように、緑に囲まれたその店の白いドアを開けると、ほのかなバラの香りの心落ち着く空間。

窓辺にリャドロの陶器のお人形、小さなランプとミニグリーンがテーブルに置かれた席に座り、500円のアイスコーヒーを注文。

アイスコーヒーひとつにしては時間がかかるなあ、と思いつつ待っていると、真っ赤なTシャツを着たマスターがシフォンケーキ、フルーツ、ゼリーの盛られたプレート、トマトジュースを一緒に持ってきた@@!

「あのう、頼んだのはアイスコーヒーだけなんですけど」と聞いてみると、「これはサービスなんですよ」とあっさり言う。↓ これで500円なり

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そうか、そういえば、名古屋に近づくと喫茶店のモーニングサービスではコーヒー一杯頼むと茹で卵やトーストはもちろん、デザートや他の飲み物まで出てくると聞いたことがあった。

う~ん、愛知県恐るべし!いいところだ

すっかり気をよくして足はずんずん進み、国府(こう)から御油の宿に入る。

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御油橋を渡ってちらほらと続く宿場の通りを歩くと、江戸時代からずっと変わらぬ有名な御油の松並木。

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約400年もの間、旅人に寄り沿って続いている松並木も、今では虫の被害や環境の影響で倒木したり、枯れたりしているが、後世の人々の努力で保存されているのはありがたいことである。

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地元の小学生たちによって植えられた松も育ち始めて、これも何十年後、何百年後の旅人が見上げるような大木の並木を作るのだろうと思うと、過去から未来への間に存在する「今」を本当にいとおしく感じる。

←広重の御油~赤坂松並木の絵

034 ← 松並木の赤ちゃん。

御油の次の宿、赤坂まではわずか1、7㎞と短い。

16時。赤坂宿到着。

街の中心に高札場跡も設置されている。GWだというのに人も通らず、本当に静かで夕暮れ時の海の「凪ぎ」のような空気が平らになったような赤坂の街並みである。

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本日の宿は、ここに1716年から続く建物、大橋屋さん→。040

赤坂は飯盛り女(当時の遊女)を提供する旅籠も多くあり大変な賑わいだったそうで、広重の東海道絵図、ほかさまざまな文献にも登場している。

大橋屋の創業はその頃からで、当時の旅籠が現在もそのまま旅館として使われているのは極めてまれである。

ガラガラと表の戸を開けると、黒光りした床に高い上がり框、壊れた時計に急な階段、少しカビ臭い匂い。

本当にタイムスリップ!ここはどこの時代じゃ?という感じ。

中には誰もいない。玄関のたたきに立って「こんにちは~」と呼ぶと薄暗い奥の厨房から名古屋弁こてこてのおばさんが出てきた。別にこの歴史的建造物を鼻にかけるわけでもなく、妙に愛想がよいわけでもなく、必要なことだけを喋って客間に通してくれた。

本日の泊り客は自転車で東海道を走破中の青年ひとりと、わたしたちのふた組だけ。

聞けば青年は4日前に品川を出発し、3日後に京都着の予定とのこと。途中の箱根越えや日坂前の小夜の中山越え、汐見峠の坂道の苦労話などで会話が盛り上がる。

夕飯前に山側に点在しているいくつかの寺社を散歩。

食事はしっかりした自然薯のとろろ汁、八丁味噌をかけたあたたかい山芋が美味しかった

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明日に備えて早くも9時に就寝。

5月にしては少し肌寒い「赤阪(坂)の夜は更けゆく~♪」のであった。

本日の歩行距離約18キロメートル。京都まで約192㎞。


4 コメント

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久しぶりにやまびこさんのところにお邪魔したら・... (ヒポポ)
2011-05-16 22:59:38
「菜飯田楽定食」私は食べないで過ぎました。残念[E:down]
大橋屋さんにも泊ったのですね。

私はGWは塩の道を歩きました[E:run]
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ヒポちゃん (やまびこ)
2011-05-17 20:59:47
お久しぶり!

菜飯田楽定食は、歩いていてお腹が空いてガイドブックを見て飛び込みました。
大橋屋さんには宿泊客の記録帳みたいのが置いてあったのでヒポちゃんももしかしたら?と思って探してみましたよ^^;

「塩の道」、たしかMalちゃんが歩いているときいたことがありますね。

東海道、再開したのはいいけれど帰宅したら、義母に「もう2泊はしないで~」と言われてしまったーー。
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こんばんは[E:rain] (東海道の風雲児)
2011-05-23 21:48:18
これから梅雨の季節に入るので、天気との勝負の旅になりそうですね。

>そうか、そういえば、名古屋に近づくと喫>茶店のモーニングサービスではコーヒー>一杯頼むと茹で卵やトーストはもちろ
>ん、デザートや他の飲み物まで出てくる>と聞いたことがあった。
なるほど、名古屋のモーニングねぇ。
コメダ珈琲店なんかは11時までドリンクの値段でトースト、ゆで卵が付いてきますね。店員が「モーニングはどうしますか?」と聞いてきますからね。
モーニングの+αの金額は別途、取られますが、俺がたまに行く喫茶店は+250円でデラックスモーニングが食べられます。トースト、ゆで卵、サラダ、デザート
(フルーツ、パンケーキ等)が付いてきますよ。行ったことのある国道1号線と名鉄の踏切の間の喫茶店ではモーニングに小鉢のうどんも付いてきますよ。
ドリンク料金で豪華なモーニングが食べられるというのは多分、名古屋市内のほうでしょうね。こちら三河地方では別途の料金を払ってモーニングを食べる、という店が多いですしね。

豊橋、きく宗での菜飯田楽定食、御油の松並木、旅籠・大家視野での宿泊…。三河地方の東海道散策の王道ですね。

>御油の次の宿、赤坂まではわずか1、7
㎞と短い。
そうなんですよ、東海道五十三次の宿場間では一番、短距離です。
実は、元々は、ここは豊川市御油町、宝飯郡音羽町赤坂に分かれていたんですが、2008(平成20)年1月15日で東海道の赤坂宿あたりの音羽町は豊川市に編入することになって豊川市赤坂町or赤坂台となって、この合併により宝飯郡は消滅しました。ですから以前は、宿場の境界線に豊川市or音羽町の市町境の看板が御油・赤坂間の松並木の道路に立っていましたが、もうなくなっているはずです。
あと、思い出してもらえますかね?あの松並木。道路脇に鶯色のポールが立っていますが、数年前まではなかったはずです。
きっと東海道の旅人が増えたから安全面を考えて設置されたんでしょう。

俺が大橋屋に宿泊することはあるんだろうか?日本橋から歩かない限りないだろうなああ(笑)
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風雲児さん (やまびこ)
2011-05-23 23:40:53
そうです!
あまりカンカンのいいお天気でもなく、土砂降り雨でもない薄曇りの日が最適なので、これからの季節が心配です(^^;)

御油橋を渡ったとたん、なんだかとても懐かしいような落ち着いた気分になりましたよ。

>あと、思い出してもらえますかね?あの松並木。道路脇に鶯色のポールが立っていますが、

立ってましたよ。かなり倒木の危険性があるのでしょうね。
地元の皆さんのご苦労がしのばれます。

大橋屋さんは、東海道歩きの人でなくても大丈夫jだと思いますよ。ただ従業員は
少ないようなので、宿泊は二組か三組限定のようです。
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